特集:主要国・地域の越境EC インドネシアの越境EC

2017年12月20日

越境ECの特徴

2016年11月に発布された財務大臣令182号が、インドネシア消費者による国外ECモールを利用した「越境EC」に変化を与えているという(地場系大手クーリエJNEエクスプレス)。同令では、従来FOB価格で「50ドル以下」と規定していたクーリエ・郵便を利用する貨物の無税枠を「100ドル以下」に引き上げた。一方、輸入通関における検査方法については、貨物の運送状ベースの書類確認に加え、現物検査を行うと規定。これまで小口貨物については、税関はクーリエ業者からの輸入申告に対してランダムに現物検査をしていたが、当該大臣令により書類確認、現物検査の態勢を強化する傾向にある。これにより、クーリエ業者にとっては申告手続きが煩雑化し、輸入通関にかかる所要時間が長くなるなどの影響も出ているという。近年、越境ECの流行などで小口貨物が増加したことが背景にあると考えられる。

越境EC関連規制

また、船積み前検査や流通許可の取得の対象商品もある。例えば衣服や履物、電子製品などは、輸出国側で船積み前検査を受けないとインドネシアでの輸入通関ができない。一方、化粧品や食品・飲料については、事前に国家食品医薬品監督庁(BPOM)の流通許可を取得する必要があるが、取得には一般的に2年程度かかる。こうした製品については、腰を据えた準備を行わないとECビジネスを開始できないという。

越境ECの課題

B2C形式のECモールを運営するアリババ傘下のラザダ・インドネシアは、越境ECに際し輸入手続きが一番の課題という。インドネシアの輸入手続きは貨物によって追加的な検査や事前承認を取得する必要がある上、現場の担当官の判断が不透明な部分もあり、販売者はコンプライアンス上の課題に留意しなくてはならない。こうした難しさについては、ラザダ・インドネシアが紹介するEC専門の通関業者としてACOMMERCEやETAILWIND社などのサポートを受けることも可能。同社は越境ECによりインドネシア市場向け販売に取り組みたい日本企業を歓迎。なお、ラザダ・インドネシアは、ECモール経由の注文の決済を仲介するが、商品の配送・梱包(こんぽう)については事業者が手配する必要がある。

越境ECでは、注文ごとの国際発送が必要なため配送コストが課題になるという。無税枠であるFOB価格100ドルの製品に送料を加えても競争力のある製品であるかどうか見極めることが必要(日系EC事業者A社)。

個別発送方式の越境ECに課題が多い中、まとめて通関することでインドネシア市場を開拓する企業もある。テレビ通販などダイレクトマーケティングの支援を手掛けるトライステージ(東京都)は2016年2月、インドネシアでテレビ通販やECサイトへの卸販売を行うメルディス・インターナショナルに出資。ちなみに、メルディスのテレビ通販でも今後は日本製品の取り扱いを増やしたい考えで、特に美容機器や医薬・健康分野に期待。同社はインドネシア国内流通に必要な許認可や規格の取得、輸入通関手続きをサポートし、まとめて輸入して国内倉庫で保管する。

日本からの出品に際する留意点

同社によると、日本企業がインドネシア市場に取り組む上で、(1)まず消費者に受け入れられる価格帯、(2)次に電圧やバルブなど海外規格への対応、(3)適正製造規範(GMP)などの国際認証の取得、(4)プロモーション映像など販促素材の用意などが求められる。インドネシアのテレビ通販はもとよりEC市場は発展途上にあり、伸びしろは大きい。同社では、インドネシア市場に挑戦してみたい日本企業があれば、その商品に応じて買い取り方式や委託販売による協業が可能としている。

インドネシアにおける越境ECの市場動向と制度

インドネシアにおける越境EC市場動向
日本からの出品を可能にしている主なECサイト
  • ラザダ(中国系アリババ運営)
  • ブリブリ(BliBli)(PTグローバル・ディジタル・ニアガ[PT Global Digital Niagak運営)
  • エレヴェニア(Elevenia)(XLアクシアタ[XL Axiata]およびSKプラネット[SK Planet]運営)(注1)
  • ショッピー[Shopee](PTショッピー・インターナショナル・インドネシア[PT Shopee International Indonesia]運営)
  • 京東インドネシア(JD. ID)(中国系)
  • ビネカ(Bhinneka)(PTビネカ・メンタリ・ディメンシ[ Bhinneka Mentari Dimensi」運営)
(注1)当地報道によると現在他社への売却手続中(注2)なお、地場EC大手トコペディアに確認したところ、日本からの出店はできないとのこと。
主要ECサイトにおける販売上位品目(=売れ筋)
  • 電化製品(スマートフォン、タブレット)
  • 化粧品
  • ファッションアイテム
(出所)BliBliへのヒアリング
越境EC利用の際の主な決済システムの利用割合
  • 代金引換(現金)(40%)
  • 銀行振込(※まず銀行送金で支払い、その後商品が発送される)(30%)
  • クレジットカード(30%)
(出所)外資系EC企業へのヒアリング
※BliBliなど電子マネーを受け付けるECサイトもある。
インドネシアにおけるEC(越境EC含む)に関する制度
国内規制 (1)データ制約に関する規制の有無
  • 電子情報取引法(2008年第11号、改正2016年第16号)にて、個人情報の保護などの規定を制定。
「公共サービス提供のための電子システムオペレーター」に対し、データセンターと防災センターのインドネシア国内への設置を求めている。
(2)規制取扱商品
  • 化粧品、食品などは医薬食品監督局(BPOM)からの認可取得が必要。なお、認可取得には、製品1種類につき約2年間必要(地場クーリエ会社ヒアリング)。
  • 一部の電化製品(洗濯機、冷蔵庫、エアコン、アイロン、ケーブル、ファンなど)や玩具などはインドネシア国家規格(SNI)の取得義務がある。
(注)インドネシアの輸入通関手続きは貨物によって追加的な検査や事前承認を取得する必要がある上、現場の担当官の判断が不透明な部分もあり、販売者はコンプライアンス上の課題に留意しなくてはならない。
(3)その他のEC販売に関連する規制
  • 輸入に際して、製品ごとに事前の輸入許可や流通にあたる認証を必要とする製品がある。
小口配送に関する税制や輸入手続き関連制度(上のメリット)の有無と販売への影響
  • 小口貨物の通関について、税関は監視を強めており2016年11月29日付財務大臣令No.182/PMK.04/2016号を定めた。これにより、通関手続きには従来より時間を要するようになっている(地場クーリエ会社ヒアリング)。
  • 同大臣令によると、クーリエや郵便によってインドネシアに輸入されるFOB価格100ドル以下の個人貨物は、無税となる。
    100ドル超~1,500ドル以下の場合、7.5%の関税が課される。1,500ドル超は通常の通関となる。

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ジェトロ海外調査部