特集:主要国・地域の越境EC 香港の越境EC
2017年12月20日
EC市場規模
2016年の香港のECを通じた小売販売額は137億香港ドル(約1,986億円)で、過去5年間では年平均約15%の増加。しかしながら、2015年の香港の小売額全体に占めるECの割合は3.1%に過ぎず、中国(13.8%)を大きく下回る[「ユーロモニター」調査(2017年1月発表)]。換言すれば、香港での今後のEC発展に向けた潜在性は高いと考えられる。
香港では「HKTV MALL」がECのメインプレーヤー。現在の香港のEC市場はインフラの整備段階にあり、今後、香港での市場拡大が進むと予測(HKTV関係者)。
EC売れ筋商品
「HKTV MALL」は香港居住者向けのECサイトで、登録会員数は450万人超(2017年4月時点)。同サイトでの購買年齢層をみると25~44歳が全体の6割以上を占有。受注の多い商品カテゴリーをみると、スーパーマーケット取扱商品(食品、掃除用品、シャンプーなど)が全体の約8割。その他、Eクーポン、ファッション・美容関連商品および家具・電気製品がおのおの約1割を占有。
香港でのEC取引を通じた売れ筋商品をみると、アパレル・アクセサリー (41.7%)、スーパーマーケット取扱商品(37.5%)、航空券(36.7%)、旅行商品(36.2%)、ホテル(36.0%)、家庭電器・電子製品(30.2%)、オンラインゲーム(29.3%)の順(「マスターカード」の調査[2017年4月発表])。
HKTVによれば、「HKTV MALL」で取り扱っている商品アイテム数は15万点超(2017年8月時点)で、香港、日本、韓国などの約1,000社が出店登録もしくは同社と卸取引を行っている。
EC販路拡大に向けた工夫
HKTVはオンラインショップとの相乗効果を狙い、実店舗を香港島内に2店舗設置し、2017年末までには店舗数を20~30店まで拡大する計画(『THE DAILY NNA香港&華南版』2017年8月21日付)。実店舗はショールームとして流行の注目商品を展示するほか、店員がタブレットを用い顧客にオンラインショップを通じた商品購入方法やアプリの使い方を案内する。また、実店舗では食品の購入ができるほか、消費者がECサイトを通じて注文した商品の受取場所としての機能もあり。
同社はマーケティング戦略の一環として、毎週特定の曜日に商品販売キャンペーンを開催。また、お勧め商品のキーワードを、HKTV MALLのトップページやメルマガに掲載しているほか、購入金額に応じてポイントが貯(た)まるシステムも導入し、リピート購入を促している。
香港人消費者はセール・キャンペーンや「キーワード検索」に該当する商品に対する反応が良いほか、品目数の多い店舗のサイトに滞留する時間が長い。加えて、「お得感」にこだわるなどの消費行動パターンには特徴がある(HKTV関係者)。
日本からの出品に際する留意点
HKTV関係者は日本産商品の出品に対して、次の点に留意する必要があると指摘。
- “ブランドが既に香港市場に浸透しているかどうか”
香港の消費者の日常生活に直接登場したことがない商品および香港市場に初めて登場するブランドや商品について、まずは実店舗での販路を確保し時間をかけて商品のイメージやブランド名を浸透させた上で、ECを通じた販路を確立した方が良い。 - “香港市場での流行商品かどうか”
香港人は「トレンド」に相当敏感である。特にブームになっている商品への需要は急増する。例えば、韓国ブームに伴うファッションやコスメブランドや、特定の“ゆるキャラ”関連商品などへの需要。 - “季節商品かどうか”
季節により一定の需要サイクルがある商品もある。例えば、中秋節時期には月餅の販売の伸びが著しい(他にはクリスマスや旧正月の季節料理やギフトなど)。 - “品目数の多さ”
「販売商品がユーザーの購買目的にかなわない」あるいは「他社よりお得感が感じられない」と判断された場合は、ストアページがスキップされる可能性が高い。「HKTV MALL」のユーザーをみても、品目数の少ない店舗に滞留する時間が短い。そのため、取扱品目数が少ない店舗にはHKTV MALLの直接出店よりもスーパーマーケット部門への卸取引提案を推奨する。 - “市場参入前に香港の輸入制度や品物ごとの小売販売制度の確認が重要”
食品、化粧品の中には、日本では販売が認められているものが、コンタクトレンズなど香港では禁止あるいは規制対象になっているケースもある。また、香港地場アパレルECサイト「マイドレス」を展開するMY DRESS HOLDINGS LIMITED関係者は、日本企業が香港EC市場を通じ販路拡大に際し、次の点に注意する必要があると指摘。
- 専属の代理ECサイトを指定すること。こうした関係を構築することはECサイト側においても、一定の客層を確保することができるというメリットがある。
- 在庫を確保し、信頼できる経験豊富な物流業者とパートナーシップを構築すること。最短時間で日本から香港に商品を配送する。
香港における越境ECの市場動向と制度
日本からの出品を可能にしている主なECサイト |
(その他)
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主要ECサイトにおける販売上位品目(=売れ筋) |
1位:コンシューマー・エレクトロニクス(31.4%)
2位:メディア製品(18.4%) 3位:その他商品(15.5%) 4位:パーソナルアクセサリー・眼鏡(12.7%) 5位:アパレル・靴類(10.8%) 6位:食品・飲料(6.7%) 7位:健康関連商品(1.7%) 8位:玩具、ゲーム(0.7%) 9位:ビューティー・ケア(0.5%) 10位:家庭用品・家具(0.5%) 11位:ビデオゲームのハードウエア(0.3%) 12位:ペット用商品(0.3%) 13位:家電製品(0.2%) 14位:ホームケア(0.1%) (出所)ユーロモニター、2016年
1位:アパレル・アクセサリー(41.7%)
2位:生活用品・食品(スーパーマーケット取扱商品)(37.5%) 3位:航空券(36.7%) 4位:旅行商品(36.2%) 5位:ホテル(36.0%) 6位:家電製品・エレクトロニクス(30.2%) 7位:オンライン・ゲーム(29.3%) (出所)マスターカード、2017年4月発表 |
越境EC利用の際の主な決済システムの利用割合 |
(注2)オクトパスカードは外国人も利用可能。 (出所)香港貿易発展局へのヒアリング調査を基にジェトロ香港作成 |
国内規制 | (1)データ制約に関する規制の有無 |
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(2)規制取扱商品 |
(注2)在日越境EC事業者によれば、「特にB2Bの企業は留意が必要」としている。 |
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(3)その他のEC販売に関連する規制 |
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小口配送に関する税制や輸入手続き関連制度(上のメリット)の有無と販売への影響 |
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ジェトロ海外調査部