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特集:各国進出企業に聞く-RCEPへの期待と発効を見据えた事業戦略日韓間で初のFTA発効へ、中小企業の対日輸出拡大の機会となるか

2021年8月24日

韓国はこれまで、米国や中国、EU、ASEAN、インドなど主要な国・地域と自由貿易協定(FTA)を締結してきた。最近では英国、中米諸国などとの間でもFTAが発効したほか、インドネシアやイスラエルなど発効待ちのFTAもある。韓国は、輸出依存度(注)が高く、貿易の円滑化は経済を支える重要な要素となっている。

各国でRCEP協定の発効手続きが進められている中、日韓間では初の経済連携協定(EPA)として期待される。本稿では、特に対日ビジネス拡大に期待を示す韓国の中堅・中小企業にフォーカスし、その期待と可能性についてインタビューした。

日韓間初のFTAに期待、手続きの煩雑さ指摘する声も

【ラクトメイソン】(韓国資本、インタビュー実施:7月27日)

質問:
貴社の事業概要は。
答え:
プロバイオティクス原料と完成品の製造、販売を行っている。プロバイオティクスとは、体内環境に好影響をもたらす善玉菌を指す(製品の詳細は同社ウェブサイト外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを参照)。
輸出額は、2018年は60万7,117ドル、2019年は35万698ドル、2020年は34万6,700ドル。東南アジアをメインに、各国・地域のニーズに合わせた製品をOEMとODMで製造している。主に米国、タイ、ベトナム、中国、台湾、シンガポールに直接輸出、ミャンマー、ベトナム、フィリピン、マレーシアに間接輸出し、タイ、ベトナム、中国の3カ国との取引でFTAを利用している。

ラクトメイソンの製品(完成品)の一部(同社提供)
質問:
FTA/EPAを利用する上で何か困難と感じる点はあるか。
答え:
乳酸菌を糖とタンパク質、無機質を用いて生育し、その後、乳酸菌のみで培養する製法を採用している。自社で独自に乳酸菌を培養し製品化しているが、この工程で生産する乳酸菌が韓国国内で製造されていること、つまり原産性を証明する基準が多少曖昧だ。しかし、大きな困難とはなっていない。
質問:
RCEP協定への期待は。
答え:
日本への輸出額は多くないが、新型コロナウイルスの影響で対日輸出は大きく減少した。RCEP協定は日本との初めてのEPAとなるため、対日輸出の回復や拡大も期待される。日韓間の肯定的な貿易関係を新たに構築できると期待している。また、FTAを既に活用しているタイやベトナムへの輸出は、発効済みのFTA/EPA譲許税率を適用しているが、RCEP協定が発効した際は、さらに有利になる点があるか、社内でも確認したい。
質問:
日本企業にメッセージはあるか。
答え:
当社のプロバイオティクス製品と原料は関連する複数の特許を保有している。健康機能食品のGMP認証に加え、インドネシア・ウラマー評議会(MUI)のハラール(HALAL)認証、HACCP認証を取得し、米国FDA(食品医薬品局)のFacility Registrationも完了した。日本企業との新たな取引にも関心があり、機会を探っている。

【食品製造などの企業A社】(韓国資本、インタビュー実施:7月30日)

質問:
貴社の事業概要は。
答え:
食品製造と貿易、流通を行っている。日本とは、食品原料や食品、雑貨、機械などを輸出・輸入している。1回の輸出入金額は300万円から2,000万円程度で、日本との取引額は年間1,000万円から1億円。
日本への輸出は年間4~5件程度だが、近年は韓国と日本との関係悪化、新型コロナウイルスの影響などで減少傾向にある。日本以外では、中国や東南アジアとの取引も行なっており、アジアとの貿易が主となっている。
質問:
FTA/EPAは利用しているか。
答え:
現在、FTA/EPAは利用していない。これまで、FTA/EPA締結国との貿易は1回の取引額が小さく、利用にかかる手間(各種手続きなどの機会費用)を考え、特恵関税を積極的に利用してこなかった。日本との取引は他の国・地域と比較して多いが、日本とFTA/EPAが締結されていないため、利用する機会がなかった。
韓国政府などが積極的にFTAの利活用を推進しており、関係する情報へのアクセスは容易だ。しかし、中小企業が利用するには、手続きの複雑さなどに課題が残る。
また、FTA/EPAを利用した際のメリットがそれほど大きくないことも挙げられる。関税よりも、政治的な関係を起因とした貿易の縮小、為替など外部要因による価格変動のほうがビジネス展開ではより大きな課題となっている。
質問:
RCEP協定の発効により、貴社のビジネスに変化は生じるか。
答え:
日本との貿易に関税上のメリットが発生するのであれば、取引量は増加すると考える。RCEP協定が韓日ビジネスに大きく影響するのであれば、当社としても、利活用を検討してみたい。

日本企業の対韓市場アクセス改善も

日本から韓国への輸出拡大効果も期待される。韓国の通関統計によると、対日輸入の上位品目(HSK4桁)のうち、RCEP協定の発効により関税削減対象となる品目を例示した(表参照)。半導体製造装置(HSK8486)は金額ベースで日本からの輸入が最も多い品目だが、RCEP協定の発効に伴い、106品目中38品目で段階的に関税が引き下げられ、10年後には全ての品目で無税となる。プラスチックシート等(HSK3920)についても、22品目で4%または6.5%の関税率が適用されているが、1品目を除く21品目で段階的に関税が引き下げられ、10年後には無税となる。ベンゼン・トルエン類(HSK2707)は10品目で3%~8%の関税率が適用されているが、1品目を除く9品目で10年間の段階的引き下げの後、無税となる。

前述のように、日本から韓国への上位輸出品目の多くで段階的に関税が引き下げられ、10年後には無税となることから、昨今の低調な日韓貿易の起爆剤となることも期待される。

表:各品目の対日輸入額並びにRCEP協定のベースレートおよび特恵関税

半導体製造装置の輸入額品目:HSK 8486、国家:日本、当年度、単位:100万ドル、%
輸入 増減率 収支
(注1)
金額 増減率
2020年 4,216 46.6 △ 3,757
2019年 2,876 △ 50.6 △ 2,442
2018年 5,815 △ 18.4 △ 5,291
RCEP協定のベースレートおよび特恵関税
ベースレート RCEP特恵関税(注2)
無税、3%、5%、8%(106品目) 即時撤廃(68品目)
10年撤廃(38品目)
プラスチックシートなどの輸入額 品目:HSK 3920、国家:日本、当年度、単位:100万ドル、%
輸入 増減率 収支
(注1)
金額 増減率
2020年 1,369 2.7 △ 1,059
2019年 1,333 0.6 △ 1,007
2018年 1,324 △ 5.7 △ 1,019
RCEP協定のベースレートおよび特恵関税
ベースレート RCEP特恵関税(注3)
4%、6.5%(22品目) 10年撤廃(21品目)
除外(1品目)
半ベンゼン・トルエンなどの輸入額品目:HSK 2707、国家:日本、当年度、単位:100万ドル、%
輸入 増減率 収支
(注1)
金額 増減率
2020年 610 △ 42.8 △ 587
2019年 1,067 △ 11.3 △ 1,009
2018年 1,204 6.9 △ 1,143
RCEP協定のベースレートおよび特恵関税
ベースレート RCEP特恵関税(注4)
3%、5%、8%(10品目) 即時撤廃(2品目)
10年撤廃(6品目)
20年撤廃(1品目)
除外(1品目)

注1:品目ごとの日韓間の貿易収支(マイナスは韓国の入超)。
注2:即時撤廃には、ベースレートでの無税品目も含む。
注3:除外品目は、ポリイミドフィルム(3920.99.90.90、6.5%)。
注4:除外品目は、その他芳香族水素炭化化合物(2707.50.00.00、5%)。
出所:貿易統計情報システム(K-stat)、RCEP協定(日本外務省)


注:
GDPにおける輸出額の割合(輸出額/GDP)。韓国の2019年の輸出依存度は32.3%(韓国統計庁)。
執筆者紹介
ジェトロ・ソウル事務所 副所長
当間 正明(とうま まさあき)
2020年5月、経済産業省からジェトロに出向。同年6月からジェトロ・ソウル事務所勤務。

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