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特集:各国進出企業に聞く-RCEPへの期待と発効を見据えた事業戦略経済ルール共通化による法整備で、日系企業の投資・貿易拡大に期待(カンボジア)

2021年7月21日

地域的な包括的経済連携(RCEP)協定が、2020年11月15日に署名された。これに対応し、ジェトロは各国の産業界にインタビューを実施した。カンボジアでは、三菱商事プノンペン駐在事務所長でカンボジア日本人商工会(JBAC)会長の神田陽悟氏に聞いた(インタビュー実施日:6月17日)。


神田会長(カンボジア日本人商工会提供)
質問:
三菱商事のカンボジアにおける事業概要をうかがいたい。
答え:
主に、三菱電機製エレベーター・エスカレーターの販売・据え付け・保守、いすゞ製MU-X〔いすゞ自動車がタイで製造する乗用ピックアップ車(PPV)〕やピックアップトラックの販売などの事業を展開している。これらに加え、ODAを通じ、プノンペン都の公共バスや信号機・交通管制システムの納入や水事業にも参画している。
質問:
大局的な視点から、貴社のRCEP協定への評価とビジネスへの影響について。
答え:
RCEP協定は域内全体の共通理解の下、結ばれた協定だ。各種経済ルールが参加国内で共通化されている点が評価できる。企業にとっては、水平展開を含めた新たなビジネス構築の可能性が高まると期待している。
質問:
物品貿易の面で、貴社は現在、自由貿易協定(FTA)や経済連携協定(EPA)をどう活用しているか。とくに、RCEP協定活用の見通しや期待についてうかがいたい。
答え:
当社では、エレベーターや自動車をタイから完成品を輸入し、カンボジア国内で販売している。RCEP協定に限らず、既に二国間FTA/EPAを含む多種多様な貿易協定が存在するため、取引の内容に応じて最適な制度を活用することで、円滑な貿易取引を心がけている。
現時点で、当社のビジネスにRCEP協定をどう活用するのかについては見えていない部分が多い。具体的な活用方法についてはこれから検討していくところだ。一方でJBAC会長としての立場で言えば、海外からの原材料・部品調達についてハードルが下がることを期待する。JBACはカンボジアの投資環境改善に取り組んできた。当地で製造業誘致の最大の課題となっているのが「原材料・部品の現地調達の難しさ(注1)」によるコスト増だ。今後RCEP協定が発効されることにより、関税率が引き下げられ貿易円滑化などが推進されることで、改善が期待できる。
質問:
RCEP協定を活用する上で、現状の課題や今後の懸念点は。
答え:
原産地規則が複雑で、付加価値基準の計算が煩雑と感じている。 関税番号(HSコード)を入力すると自動的に税率や計算式を導いてくれるような仕組みがあれば、便利だ。また、それぞれのFTA/EPA、RCEP協定の違いが見やすく比較できると、活用する企業が増えるのではと考える。
また、RCEP協定により各種制度ができても、計画通り運用されるのか注視していく必要もある。
質問:
RCEP協定は日・カンボジア間の貿易および投資にどのような影響を及ぼすと思うか。
答え:
日本とカンボジアは、AJCEP協定の枠組みで既につながっている。その上でRCEP協定は、貿易・投資上のつながりを一層強固にすると考える。カンボジアは、ASEANの中でも今後の発展が期待される国だ。こうした経済的枠組みに加盟していることで、投資のルール、電子商取引のルール、貿易の円滑化ルールなどを含め一定程度の法制度を整備することが義務付けられる。新規投資を検討する際に投資環境を判断するうえでは、好材料の1つとなりえる。
質問:
その他、RCEP協定 発効に伴う、ビジネス上の関心があればうかがいたい。
答え:
日系企業の課題の1つに、煩雑な通関などの諸手続き(注2)がある。RCEP協定により、税関手続きおよび通関が円滑になることを期待している。現在、カンボジアは通関や税関手続きの電子化を進めている最中だ。日本初のブロックチェーン技術を活用した貿易手続きの完全電子化導入を推奨したいと考えている。物流が一層改善されることで、日系企業のビジネス活動の促進につながればと考えている。
質問:
貴社の現地ビジネス環境に関して、RCEP協定に加えて考慮すべき変化が生じているか。
答え:
カンボジアと中国は昨年、二国間FTAを締結した。このように、近年、両国間の結び付きはより強固になっていると感じている。RCEP協定により、競争力のある中国の製品やサービスがASEAN域内へ、より広まってくることが予想される。カンボジアでは、過度に中国化が進むと、進出をためらう日系企業が出てくる恐れもある。
もっとも、当地での「日本」に対する顧客の信頼度は高く、日系企業が進出することへの期待は大きい。タイプラスワン、ベトナムプラスワンなども念頭に、カンボジアへ進出しやすい環境づくりを目指していくべきと考える。
質問:
RCEP協定発効に伴う、ジェトロへの期待・要望などあればうかがいたい。
答え:
JBACは、在カンボジア日本国大使館、国際協力機構(JICA)、ジェトロと一緒にビジネス環境改善を目的に、年に1~2回カンボジア政府に対して政策提言(注3)をしている。今後は、RCEP協定の枠組みにもひも付けて提言することとで、早期解決を目指していきたい。
ジェトロには、これまで同様の連携に加え、新規投資のプロジェクトを増やすきっかけづくりとして、新規ビジネス機会を模索する日系企業への情報提供やネットワークを活用したビジネスマッチングなどの実施に期待する。これらはRCEP協定関連以外でもよく、また対象も進出日系企業だけに限らない。また、日本企業に向けて、さらなる投資誘致促進を進めてもらえることも期待する。

注1:
ジェトロ取りまとめた「2020年度 海外進出日系企業実態調査(アジア・オセアニア編)」(以下、「実態調査」)では、経営上の問題点として60.0%が「原材料・部品の現地調達の難しさ」と回答した。
注2:
「実態調査」によると、経営上の問題点として33.7%が「通関等諸手続きが煩雑」を挙げた。
注3:
日・カンボジア投資協定に基づき開催される日・カンボジア官民合同会議。直近では、2021年2月に開催された。
執筆者紹介
ジェトロ・プノンペン事務所
井上 良太(いのうえ りょうた)
人材コンサル会社での経験(2017年~2020年)を経て、2020年7月からジェトロ・プノンペン事務所勤務。

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