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特集:コロナ禍後の新時代、中国企業はどう動く新型コロナ感染拡大後も結びつき強めるカンボジア・中国

2021年3月25日

カンボジアは、ASEAN諸国の中でも中国と最も結びつきが強い国の1つだ。カンボジアのフン・セン首相は2019年1月、中国を公式訪問した。続いて同年4月にも、北京で開催された「一帯一路」国際協力ハイレベルフォーラムに参加。「中国・カンボジアの運命共同体構築に向けた行動計画:2019-2023」に合意・署名した。

2020年2月、中国で新型コロナウイルス感染が拡大し、米国が中国からの退避勧告を出すなど世界に動揺が広がる中、フン・セン首相は中国を訪問、習国家主席との会談で「中国が困難なときにともに克服するのが真の友達」と述べ、中国との蜜月ぶりをアピールした。

本レポートでは、コロナ感染拡大後も結びつきを強めるカンボジアと中国との二国間関係を貿易と投資の両面から俯瞰(ふかん)する。あわせて、カンボジアで存在感を増す中国企業の動きについて考察したい。

輸入で圧倒的な存在感を示す中国

カンボジアの対外貿易を見ると、2019年の輸出では米国、日本、ドイツ、中国などの順だ(表1参照)。米国は全体の29.8%を占め、2010年から10年間、1位をキープし続けている。一方、中国向けは、2019年に10億1,200万ドルで第4位だが、9年前の2010年と比較すると、約15.6倍と急激に拡大していることが分かる。

カンボジアの対中輸出を品目別に見ると、2010年には「木材およびその製品ならびに木炭」が1位だった。2019年には「毛皮および人造毛皮ならびにこれらの製品」が1位となっている(表2参照)。その他の品目では、衣類や履物、革製品などの縫製・アパレル関連製品などが中心で、2010年と2019年とも上位10品目の大半を占める。

表1:カンボジアの国別輸出額(上位5カ国、単位:100万USドル)
国名 2010年 2011年 2012年 2013年 2014年 2015年 2016年 2017年 2018年 2019年 2010年からの伸び率(倍)
米国 1,906 2,107 1,898 2,088 2,000 2,137 2,147 2,408 3,044 4,414 2.3
日本 90 153 184 314 345 572 827 850 1,076 1,140 12.7
ドイツ 112 324 427 576 579 748 904 1,005 1,098 1,082 9.6
中国 65 155 178 267 357 406 609 753 859 1,012 15.6
英国 235 391 482 686 752 869 953 1,014 1,016 980 4.2
総計 5,590 6,704 5,796 6,666 6,846 8,542 10,069 11,278 12,700 14,825 2.7

出所:Global Trade Atlasからジェトロ作成

表2:カンボジアの対中輸出品目(上位10品目、単位:100万USドル)

2010年
順位 品目 金額
1 木材およびその製品ならびに木炭 33
2 衣類および衣類付属品
(メリヤス編みまたはクロセ編みのものに限る。)
16
3 ゴムおよびその製品 7
4 紡織用繊維のその他の製品、セット、中古の衣類、紡織用繊維の中古の物品およびぼろ 2
5 衣類および衣類付属品
(メリヤス編みまたはクロセ編みのものを除く。)
1
6 人造繊維の短繊維およびその織物 0.9
7 履物およびゲートルその他これに類する物品ならびにこれらの部分品 0.9
8 メリヤス編物およびクロセ編物 0.7
9 原子炉、ボイラーおよび機械類ならびにこれらの部分品 0.7
10 魚ならびに甲殻類、軟体動物およびその他の水生無脊椎動物 0.5
総計 65
2019年
順位 品目 金額
1 毛皮および人造毛皮ならびにこれらの製品 253
2 衣類および衣類付属品
(メリヤス編みまたはクロセ編みのものに限る。)
197
3 穀物 156
4 電気機器およびその部分品ならびに録音機、音声再生機など 75
5 衣類および衣類付属品
(メリヤス編みまたはクロセ編みのものを除く。)
66
6 履物およびゲートルその他これに類する物品ならびにこれらの部分品 51
7 銅およびその製品 33
8 革製品および動物用装着具ならびに旅行用具、ハンドバッグその他これらに類する容器ならびに腸の製品 29
9 ゴムおよびその製品 25
10 穀粉、加工穀物、麦芽、でんぷん、イヌリンおよび小麦グルテン 20
総計 1,012

注:HSコード2桁で2010年と2019年の金額上位10品目を抽出。太字は衣類など縫製・アパレル関連の品目。
出所:Global Trade Atlasからジェトロ作成

輸入についてみると、2019年は75億8,600万ドルと中国が1位だ(表3参照)。輸出での米国と同様、輸入では中国が2010年から10年間1位を維持。2019年実績では2位以下を大きく引き離している。2019年の輸入全体に占める割合は37.4%を占め、2010年と2019年を比較した場合、中国は約6.4倍、2位のタイは約4.7倍とり、中国の圧倒的な存在感がうかがえる。

カンボジアの対中輸入を品目別に見ると、上位10品目は全て工業製品だ(表4参照)。2010年、2019年ともに「メリヤス編物およびクロセ編物」が1位で、輸入額は約4倍と急増している。また「人造繊維の短繊維およびその織物」や「綿および綿織物」など、輸入でも輸出と同じく縫製・アパレル関連の品目が目立つ。

表3:カンボジアの国別輸入額(上位5カ国、単位:100万USドル)
国名 2010年 2011年 2012年 2013年 2014年 2015年 2016年 2017年 2018年 2019年 2010年からの伸び率(倍)
中国 1,186 1,739 2,228 2,992 3,710 3,926 4,551 5,287 6,140 7,586 6.4
タイ 691 726 1,001 1,086 1,047 1,561 1,910 2,354 3,222 3,234 4.7
ベトナム 487 883 1,055 982 870 927 1,416 1,682 2,221 2,725 5.6
日本 157 248 240 175 264 423 528 584 736 888 5.7
インドネシア 175 169 216 246 281 336 426 537 606 772 4.4
総計 4,903 6,143 7,467 8,232 9,702 10,669 12,371 14,283 17,489 20,279 4.1

出所:Global Trade Atlasからジェトロ作成

表4:カンボジアの対中輸入品目(上位10品目、単位:100万USドル)

2010年
順位 品目 金額
1 メリヤス編物およびクロセ編物 407
2 人造繊維の短繊維およびその織物 226
3 電気機器およびその部分品ならびに録音機、音声再生機など 115
4 原子炉、ボイラーおよび機械類ならびにこれらの部分品 86
5 綿および綿織物 54
6 鉄鋼製品 38
7 鉄道用および軌道用以外の車両ならびにその部分品および付属品 26
8 陶磁製品 25
9 人造繊維の長繊維ならびに人造繊維の織物およびストリップその他これに類する人造繊維製品 25
10 鉄鋼 15
総計 1,186
2019年
順位 品目 金額
1 メリヤス編物およびクロセ編物 1,553
2 人造繊維の短繊維およびその織物 777
3 原子炉、ボイラーおよび機械類ならびにこれらの部分品 758
4 電気機器およびその部分品ならびに録音機、音声再生機など 613
5 綿および綿織物 512
6 鉄鋼製品 361
7 プラスチックおよびその製品 337
8 鉄鋼 245
9 紙および板紙ならびに製紙用パルプ、紙または板紙の製品 173
10 鉄道用および軌道用以外の車両ならびにその部分品および付属品 171
総計 7,586

注:HSコード2桁で2010年と2019年の金額上位10品目を抽出。太字は衣類など縫製・アパレル関連の品目。
出所:Global Trade Atlasからジェトロ作成

前述のとおり、カンボジアの対中貿易は輸出、輸入ともに増加傾向にある。一方で、カンボジアの貿易赤字幅も拡大傾向だ。カンボジアの貿易構造は、アパレル・縫製業を中心に、中国などからその原材料を輸入し、カンボジアで加工・製造した製品を米国や日本、ドイツなどに輸出していることが分かる。

新型コロナ禍の中で締結されたカンボジア・中国FTA

2020年10月、カンボジアと中国の間で自由貿易協定(FTA)が締結された。2020年初めの交渉開始から1年未満という異例のスピードで締結になった。今回のFTAには、物品貿易や原産地規則、税関手続き、貿易円滑化、貿易の技術的障壁、衛生植物検疫措置、サービス貿易、投資協力、経済技術協力、電子商取引など幅広い領域が含まれる。

カンボジア側はアパレル素材・製品、機械電器製品、雑貨、金属製品などの中国製品、中国側はアパレル・靴、皮革ゴム製品、機械電器製品部品、農産品などカンボジア製品の輸入関税をゼロとし、カンボジア製品の97.53%、中国製品の90%の関税がゼロとなる。

この協定はカンボジアにとって初の二国間FTAだ。カンボジア商業省は、さらなる関係発展のためのマイルストーンと評価し、締結を契機に2023年までに両国間の貿易額を100億ドルまで拡大する目標を掲げる。

また、同省は「中国とのFTAは、農業および農産物加工分野への投資を促進し、カンボジアの就業機会と税収の増加、農産物のサプライチェーンの最適化と高度化が期待できる。中国からの輸入品の多くが生産材料などカンボジアに不足している品目で、(輸入の増加は)カンボジアの中小企業の発展に影響を及ぼさない」と述べている。

一方、中国商務部の報道官は、中国とカンボジアのFTAは高水準の開放性と広い範囲を兼ね備えた双方にメリットのある協定とした上で、FTAの意義について以下の3点を強調している。

  1. 中国が初めて後発開発途上国の間で署名したFTAで、中国の自由貿易の実践を豊かにするだけでなく、経済規模に大きな差がある国家間で相互に有益な協力モデルを確立した。
  2. 新型コロナウイルスが発生した後、中国が初めて締結したFTAで、中国が自由貿易区戦略を推進し、より高いレベルの開放経済のための新しいシステムを積極的に構築する意思を反映している。
  3. 「一帯一路」イニシアチブの下で協力のための章を盛込んだ最初のFTAで、中国とカンボジア間の友好関係に沿うとともに、「一帯一路」イニシアチブの大きな活力を示している。

前述のとおり、両国は互いに今回のFTAの成果を強調している。特に、カンボジア側には、「一帯一路」を活用してカンボジアのインフラ整備に必要な資金や技術を調達しようとするニーズがあるとみられる。

今回のFTA締結がカンボジアと中国間の貿易のさらなる活発化とともに、投資面でも両国が思惑どおりに期待した効果を得ることができるのか、注目される。

執筆者紹介
ジェトロ海外調査部 中国北アジア課
友田 大介(ともだ だいすけ)
2001年4月ジェトロ入構。貿易開発部産業振興課、青森貿易情報センター、海外調査部調査企画課、ビジネス情報サービス部人材開発支援課、ジェトロ・ソウル事務所などを経て2018年9月より現職。

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