特集:アフリカ・スタートアップ:成長スタートアップに聞くオンラインプラットフォームで、中古車売買に透明性を(ナイジェリア)

2020年1月24日

ナイジェリアの自動車市場は、多くを中古車が占めているが、個人間の取引も多く、買主が重大な欠陥のある車を購入させられるリスクも避けられない。cars45は、中古車市場に安心と信頼を提供することを目的に創業したスタートアップで、誰でも車体の状況を詳細にオンライン上で確認できる。2019年12月にはガーナとケニアに事業を拡大することも発表した。同社の創業者の1人であるエトップ・イクペ(Etop Ikpe)最高経営責任者(CEO)に話を聞いた(2020年1月7日)。


エトップ・イクペCEO(cars45提供)
質問:
設立の背景は。
答え:
ナイジェリアなどアフリカの人々にとって、自動車は高い買い物であると同時に、購入にはリスクを伴うことが多い。メンテナンスの不足・欠如による車両本体の品質の欠陥を知らず、高い値段で購入してしまうことなどだ。私自身も中古車の売買で苦労した経験があることから、誰でも安心して中古車を購入できる、信頼性と透明性の高い中古車売買のプラットフォームを提供したいと考え、2016年に4人で創業した。現在では、ナイジェリア、ガーナ、ケニアの3カ国で、400人の従業員を抱えるまでに成長した。
質問:
ビジネスモデルは。
答え:
中古車を売買できるオンライン上のプラットフォームを提供している。自動車を売却したい顧客は、ナイジェリア国内に約50カ所ある査定センターに車両を持ち込む。検査員が車両のコンディションを確認し、45分で価格査定が完了する。顧客が査定価格を応諾した場合、45分以内に査定額を顧客に振り込むことにしており、これが社名の由来だ。買い取った中古車は、われわれの運営するオークションに出品し、ディーラーなどに落札された中古車が、当社のウェブサイト上で顧客に販売される。また査定センターは、中古車の基本構造からインテリア、外装、アクセサリーにいたるまで、詳細なレポートを作成し、中古車の写真とともに、オンライン上に掲載している。まだ利用者は少数だが、自動車購入のためのローンによる資金提供も行っている。

査定センターの様子(cars45提供)

同社ウェブサイト(cars45提供)
質問:
事業規模は。
答え:
ウェブサイトには、1日当たり数万件のアクセスがある。2019年は、約4万台の自動車を査定、販売し、約80%は米国から輸入された。ブランドとしては、約65%がトヨタ、約15%がホンダ、メルセデス・ベンツが約5%だった。ナイジェリアの自動車販売台数のうち、新車は1%程度と見られ、中古車市場がとてつもなく大きい。当社が事業を拡大することで、中古車市場の不透明性を取り除くことができればと考えている。
質問:
今後の展望は。
答え:
当社が顧客に提供するのは、単なる中古車売買の場だけでなく、適正な価格を決定するためのプロセスがいかに重要であるかを理解してもらう経験だ。このサービスが人々の間に広く浸透するには、まだ時間を要すると考えている。当社が査定・販売しているのは年間4万台だが、ナイジェリア国内では年間150万台の中古車が売買されていると見られ、不透明な中古車売買を減らすためにも、当社が果たす役割は大きいと考えている。また、新しい市場として、2019年12月にケニアおよびガーナでの事業も開始した。この2カ国は、大きな中古車市場を持つため、事業拡大のベンチマークとして最適だと考えた。さらに、今後は自動車保険やメンテナンスの分野で他社と連携することで、対顧客サービスを拡充していきたい。
執筆者紹介
ジェトロ・ラゴス事務所
谷波 拓真(たになみ たくま)
2013年、ジェトロ入構。知的財産課、ジェトロ金沢、ジェトロ・アジア経済研究所を経て、2019年12月から現職。