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特集:アフリカ・スタートアップ:成長スタートアップに聞く世界レベルのAIシステムを開発、アフリカ人材の育成にも情熱(チュニジア)

2020年1月24日

2019年5月に700万ドルの資金調達に成功し、話題となったチュニジア発多国籍スタートアップのインスタディープ(InstaDeep外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。同社は人工知能(AI)の基礎研究開発と、欧米大手企業向けのAIアプリケーション提供を手掛ける。アフリカにおけるAIの普及を使命と捉え、革新的なパン(汎)アフリカ国際企業を志向する。同社の共同創業者兼最高経営責任者(CEO)のカリム・ベギール氏にインタビューした(2019年12月13日)。


共同創業者でCEOのカリム・ベギール氏(インスタディープ提供)
質問:
インスタディープ(Instadeep)設立の経緯は。
答え:
チュニジア南部の出身で、パリとニューヨークで応用数学を学び、ニューヨークとロンドンで10年ほど数学者として勤めた。2011年のジャスミン革命の激動を経て、新しく生まれ変わったチュニジアが、私の中で長年育まれてきた起業精神を奮い立たせた。2012年に一念発起し、すべてを投げ打って、チュニジアに帰国した。2013年、首都チュニスで共同創業者となるゾハラ・スリムと出会い、当時のチュニジアではSFの世界と捉えられていたAIに着目した。AIで世界を変える企業をつくろうと、2014年に2人で始めたのがインスタディープだ。現在は5都市に事務所を構え、従業員85人を抱える企業に成長した。研究開発(R&D)拠点として、チュニスに最多の45人の従業員を配置し、本社機能はロンドンに置く。パリはチュニスと同様に重要な研究開発拠点で、ほかにケニア・ナイロビとナイジェリア・ラゴスにも事務所を持つ。2020年1月には6カ所目となる事務所を南アフリカ共和国・ケープタウンに開設の予定だ。
質問:
インスタディープの強みは。
答え:
高度AI開発会社として、企業の管理工程で複雑な意思決定を手助けするAIシステムを構築する。顧客は、主に欧米の大手企業だ。例えば2019年は、ドイツ鉄道(Deutsche Bahn AG)が鉄道の配車計画・配車管理自動化のためのAIシステム導入に向けた研究開発計画を入札にかけ、これを10月に当社が落札した。複雑なサプライチェーンの管理システム構築のほか、効率的な輸送システム構築が得意分野で、高い評価を得ている。さらに11月には、世界初の完全AI駆動のプリント回路板(PCB)ルーター「ディープPCB(DeepPCB)」を発表した。これは、チュニジアのAI技術者によって開発された画期的AIソリューションで、アフリカの人材が世界に通用することを証明した例だ。当社の強みは、チュニジアを中心とするアフリカの研究開発者による基礎研究力と、それを具体的なソリューションにつなげる応用力にある。
質問:
研究開発分野の高度人材を発掘するカギは。
答え:
AI製品の開発には、好奇心に富み、努力を惜しまない人材が必須だ。スタートアップである当社が、世界中から引く手あまたの優秀な人材を、いかに取り込むかが成功へのカギとなる。私はAIと機械学習の専門技術者になろうと、独学を重ねた結果、両分野でグーグルの認定技術者になった。それを聞きつけ、当社とともに新プロジェクトに挑戦したい、という優秀な人材が集まってきた。優秀な人材がさらに優れた人材を呼ぶ、という好循環が生まれた。アフリカには素晴らしい人材が埋もれているとよく言われるが、当社はその人材が花開く場を提供している。
質問:
アフリカにおけるAI人材の育成のための活動は。
答え:
2019年9月20~22日の3日間、グーグルとチュニジア政府の後援を得て、中東・アフリカ地域で最大級のAI関連イベント「AIハッカソン・チュニジア2019」を主催した。20カ国以上からAI技術者1,000人が参加し、6つの課題に挑戦した。2020年にも、アフリカにおけるAIと機械学習の開発と普及を目的としたイベントを、チュニジアで開催する予定だ。また、インスタディープは、雇用する人材の多様性も重んじている。当社が雇用する高度な技術者は、半分近くが女性で、また多国籍であることが特徴だ。
質問:
日本企業との提携可能性は。また、資金調達面の現状は。
答え:
当社が提供するサービスの特徴から、パートナー企業は大企業が中心だ。これまでの顧客は欧米企業が主だが、輸出型の日本企業とロジスティックスの効率化などの分野で協力したいと考えている。また、当社は、急成長段階に入っている。新製品「ディープPCB」開発のために、700万ドルの資金調達を1年弱で実現した。アフリカのAI分野のスタートアップが獲得した資金調達の最高額だ。同製品の評価は非常に高く、現在の当社の規模では追いつけない状況が生まれており、スケールアップの必要がある。ディープテック分野の投資先を探す企業は大歓迎だ。

インスタディープの従業員一同(インスタディープ提供)

執筆者紹介
ジェトロ ・パリ事務所
渡辺レスパード智子(わたなべ・レスパード・ともこ)
ジェトロ・パリ事務所に2000年から勤務。アフリカデスク調査担当としてフランス及びフランス語圏アフリカ・マグレブ諸国に関する各種調査・情報発信を行う。

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