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特集:アフリカ・スタートアップ:成長スタートアップに聞く薬局と患者をつなぐプラットフォームで医薬品へのアクセス改善(エジプト)

2020年1月24日

人口約1億人のエジプトでは、スマートフォンの普及が進み、モバイル・インターネットの契約数は約3,000万件に上る。ライドシェアのスマートフォンアプリのウーバー(Uber)や、エジプト発スエフル(Swvl)なども普及している。医療分野でも、医薬品へのアクセス改善を目的とするシェファア(Chefaa)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますがサービスを拡大している。GPSを用いて顧客の近くの薬局で在庫を検索できるほか、処方箋の送付や注文、決済、配達まで手配するアプリを提供する。シェファアの共同創設者であるドア・アレフ(Doaa Aref)氏とラシャ・ラディ(Dr. Rasha Rady)氏に、同社の取り組みについて話を聞いた(2019年12月7日)。


ドア・アレフ氏(左)とラシャ・ラディ氏(右)(シェファア提供)
質問:
設立の背景について。
答え:
エジプトでは、薬局によって取り扱いがなかったり在庫切れしたりしている医薬品があり、患者が身近な場所で薬を即座に入手するのが困難な場合がある。オンラインショッピングはエジプトでも普及しているが、医薬品に特化したものはなかった。また、電話の注文で商品を配達する薬局もあるが、処方箋を提示する必要がある薬は配達していなかった。医療知識がない人も多く、服薬回数や用量、適切な薬の選び方がわからない状況だ。
質問:
会社を始めた経緯は。
答え:
私(ドア氏)自身ががんを患ったことがあり、患者が定期的に薬局に通って治療薬を探すのは、患者の身体的な負担になると実感した。症状によっては外出が不可能な人もいるため、医薬品のオンライン購入・配達が必要だと考え、2017年に担当医師だったラシャ氏とシェファアを立ち上げた。(会社名のChefaaはアラビア語の「治療」に由来)。中東の有力アクセラレーターFlat6Labsによるスタートアップ支援プログラムに採択され、支援を受けつつビジネスを始めた(注)。
質問:
ビジネスモデルは。
答え:
スマートフォンアプリを提供し、薬を必要とする顧客がGPSで配達30分圏内の薬局を検索できる。薬の在庫も確認できる。処方箋の提示が必要な薬でも、処方箋の写真をアプリで送付し自宅まで配送してもらうことが可能だ。支払い方法は、キャッシュオンデリバリー、またはオンライン決済。自社で薬を扱うことはなく、薬局と顧客の薬の売買を仲介し、配達員が注文を受けて薬局から顧客まで配達するのを手配して手数料を得る。定期的に薬が必要な慢性疾患の患者のために、定期的な配達と薬購入時期の通知や1日の服薬回数、用量の通知機能を持つ定期購入サポートサービスも提供している。また、(エジプトでは常備薬を置く家庭は多くないこともあり)一般的な常備薬などをまとめたキットを家庭に普及させることを目指して、大手ヘルスケア企業などと提携して常備薬セットの販売の仲介をしている。

シェファアのアプリケーションの使い方(シェファア提供)
質問:
事業と会社の規模は。
答え:
エジプト9都市の薬局約800店舗でサービスを展開し、今後は国内のみならず、湾岸やアフリカ諸国にもサービスを拡大する予定だ。2018年4月のサービス開始から2019年9月までのオーダーは約15万件、仲介した売り上げは約225万ドルだ。2018年に初期投資として数万ドル調達し、2019年に約50万ドルのシーズ資金を調達した。2020年にも国内普及と海外拡大のため、シリーズAラウンドの資金調達を目指す。サービス普及と拡大に向けライズアップ・サミット(RiseUp Summit、2020年1月6日付ビジネス短信参照)などのスタートアップイベントにブース出展して広報を行っている。従業員は約30人で継続的に増員しているため、大きいオフィスに移転する予定だ。また、2019年8月に横浜で開催された第7回アフリカ開発会議(TICAD 7)の公式サイドイベント「アフリカ・日本スタートアップピッチ」〔ジェトロ、国際協力機構(JICA)、国連工業開発機関(UNIDO)共催、2019年9月6日付ビジネス短信参照〕で受賞した。
質問:
今後のビジネス展開は。
答え:
まずはサービス提供地域を拡大したい。エジプト国内で月に200万件の処方箋が発行されると言われており、人口増加、経済成長傾向にあることから、各都市や地方で普及、拡大できると考えている。加えて、中東諸国でも人口増がみられ、慢性疾患も増えていることから、サウジアラビアなどアラビア語圏をはじめ、アフリカ最大の人口を抱えるナイジェリアなど海外への拡大を考えている。
業務内容の拡大も考えている。現在、患者の医薬服用の種類や期間、購入履歴や回復傾向、副作用などの情報を蓄積しており、近い将来、患者と医薬品や医療情報を結び付けるビッグデータの活用が可能になる。さらに、エジプト企業と取り組んでいる企業の社会的責任(CSR)活動についても拡大を目指しているほか、スマートフォンを用いた遠隔治療などの実現可能性も検討している。自社のアプリを通じて医薬品へのアクセス向上、医療や投薬に関する知識の普及、医療機関が未整備な地域での患者へのケアについて、改善に取り組みたい。

注:
Flat6Labsは半年に1回、エジプト国内の数百社の申し込みから10社程度を選出して支援プログラムを実施。
執筆者紹介
ジェトロ・カイロ事務所
井澤 壌士(いざわ じょうじ)
2010年、ジェトロ入構。農林水産・食品部農林水産企画課(2010年~2013年)、ジェトロ北海道(2013~2017年)を経て現職。貿易投資促進事業、調査・情報提供を担当。

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