特集:アフリカ・スタートアップ:成長スタートアップに聞く少額手数料での海外送金を可能に(南アフリカ共和国)

2020年1月24日

アフリカ2位の経済規模を誇る南アフリカ共和国(南ア)には、域内での相対的な給与水準の高さや英語圏であることなどを背景に、アフリカのみならず南アジアからも数多くの出稼ぎ労働者が集まっている。彼らが南アで得た所得の多くは本国に住む家族や親戚の生計を支えるために海外送金されるのが一般的だ。アフリカではこの送金手数料が高額という課題に着目し、南アに居住する外国人が低額の手数料で海外送金を行えるサービスを構築したのがママ・マネー(Mama Money)だ。ジェトロは、同社の共同創設者であるマテュー・コキリオン氏とラファエル・グロジュノスキー氏にインタビューした(2019年12月17日)。


共同創設者のマテュー・コキリオン氏(左)とラファエル・グロジュノスキー氏(ママ・マネー提供)
質問:
起業の経緯と事業概要は。
答え:
ママ・マネー設立前、ラファエルは国連世界食糧計画(WFP)で食糧援助業務に携わっていた。国際援助活動家として働くうちに、社会課題をビジネスの側面から解決しようとするソーシャル・ビジネスに刺激を受けた。特に、世界で最も高額と言われるアフリカからの海外送金のコストの高さに問題意識を持った。他方で、マテューはダイレクトマーケティングや採用などの経営実務経験がある。2人は長期休暇中にモザンビークで出会い、2013年に同社を共同で設立するに至った。
外国人労働者や居住者が母国に送る資金は、主に食料品や医薬品、住居費、子女の教育費として使用される。従って、送金の際に発生する手数料が少ないほど、その資金を必要としている人たちがより多くの資金を得られることになる。言い換えれば、低額の送金サービスは、より良い栄養、医療保険、教育、そして未来をもたらすことになる。
ママ・マネーの名前の由来は、南ア国内にいる多くの外国人居住者は母国に暮らす「ママ」にお金を送っていること、ひいては、彼女達「ママ」がアフリカの経済を支えているとも言えると思ったことにある。そこで、小額の手数料で早く、シンプルかつ安全に海外送金ができるように開発したモバイル・アプリケーションがママ・マネーだ。現在約100人を正規雇用し、南ア国内に約50万人の顧客(外国人居住者)と送金窓口となる2,000の提携店舗を有している。ファンドのフェーズに関してはシリーズAの第1段階が終わったところだ。
質問:
ビジネスの概要は。
答え:
多くのアフリカの市中銀行は送金額の20%前後の手数料を課すのに対し、ママ・マネーは3%まで引き下げることに成功した。利用者は専用アプリケーション上やUSSD(注)で、南ア国外に住む受益者の登録と送金注文を簡単に行うことができる。利用者が大手小売企業のショップライト、ピック・アンド・ペイ、PEPなどの店頭で現金を入金すると、送金処理が行われ、海外にいる受益者の携帯端末に着金を知らせるショート・メッセージが届く仕組みだ。利用者は入金に当たって電子資金振替(EFT)も利用できるが、外国人居住者の多くは南アの銀行口座を有していない事情もあり、もっぱら現金が用いられている。ママ・マネーが送金先の銀行や、モバイルマネーサービスを取り扱う現地企業と連携することで、受益者が送金された資金を受け取れる仕組みを作っている。
現在までに南ア周辺国のみならず、西アフリカのガーナや東アフリカのケニアを含む17カ国への送金が可能で、ほかにも、インドやバングラデシュといったアジア諸国にも拡大中だ。同様のサービスを行うムクル(Mukulu)やハロー・ペイサ(Hello Peisa)といった競合が国内にも存在するが、ママ・マネーはそれら競合よりも低価格の手数料と優れたカスタマー・ケアで差別化を図っている。

ロゴ(ママ・マネー提供)
質問:
今後の展望、日本企業との協業の可能性は。
答え:
現在、当社は「成長」を実現するグロース段階にあるため、優秀な人材を確保することが課題だ。また、南ア国内からの海外送金はできるものの、南ア以外の国でママ・マネーのアプリケーションを使用して送金することはできない点にも改善の余地がある。とはいえ、アフリカやアジアの国々への参入・拡大に強い意欲を持っている。日本への送金システムはまだ構築できないが、新しい市場には常に関心を持っている。

注:
Unstructured Supplementary Service Dataの略。GSM (Global System for Mobile)で利用可能なメッセージ交換技術のことを指す。
執筆者紹介
ジェトロ・ヨハネスブルク事務所
髙橋 史(たかはし ふみと)
2008年、ジェトロ入構後、インフラビジネスの海外展開支援に従事。2012年に実務研修生としてジェトロ・ヤンゴン事務所に赴任し、主にミャンマー・ティラワ経済特別区の開発・入居支援を担当。2015年12月より現職。南アフリカ、モザンビークをはじめとする南部アフリカのビジネス環境全般の調査・情報提供および日系企業の進出支援に従事。
執筆者紹介
ジェトロ・ヨハネスブルク事務所
カイラ・オニール
ダーバン市出身。2015年から、ジェトロ・ヨハネスブルク事務所勤務。主に南部アフリカの経済・産業調査、訪日招聘プロジェクトに従事している。

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