インフレ緩和で2025年に成長回帰
アフリカ経済を俯瞰する(1)
2026年3月24日
世界経済の予見性が低下し、国際貿易を巡る緊張が続く。その中で、アフリカ経済は2024年の低成長から脱し、2025年は堅調な成長へと回帰したとみられる。
本稿では2回に分けて、2024年以降のアフリカ経済動向を振り返る。あわせて、2026年以降の経済展望と成長を左右する域内外の注目点を紹介する。初回は直近2年間の域内経済について解説する。
高インフレが2024年の内需を抑制
2025年11月から2026年1月にかけて、国際機関は相次いで世界各国・地域の最新経済データを発表した。2024年のアフリカ経済は、前年からは若干改善したものの3%前後の成長に終わったという推計になっている。成長が伸び悩んだ要因としては、域内の内需が力強さを欠いたことが大きい。域内最大のGDP規模(構成比13.9%、IMF)を持つ南アフリカ共和国(南ア)経済の不振(実質値で0.5%)も、影響した(南アの貿易投資年報参照)。
| 公表機関(出所) | 対象地域 | 2023年(注2) | 2024年(注2) | 2025年(注2) | 公表時期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 国連(World Economic Situation and Prospects 2026) | アフリカ | 2.7 | 2.8 | 4.0 | 2026年1月 |
| 世界銀行(World Economic Situation and Prospects 2026) | サブサハラアフリカ(注1) | 3.0 | 3.7 | 4.0 | 2026年1月 |
| 中東・北アフリカ | 2.3 | 2.5 | 3.0 | 2026年1月 | |
| IMF(World Economic Situation and Prospects 2026) | サブサハラアフリカ(注1) | 3.7 | 4.1 | 4.4 | 2026年1月 |
| 中東・北アフリカ | 2.5 | 2.2 | 3.4 | 2026年1月 | |
| アフリカ開発銀行(Africa's Macroeconomic Performance and Outlook Update) | アフリカ | 3.0 | 3.3 | 4.2 | 2025年11月 |
| (参考1)国連(World Economic Situation and Prospects 2026) | 世界 | 2.8 | 2.9 | 2.8 | 2026年1月 |
| (参考2)世界銀行(GEP 2026) | 世界 | 2.8 | 2.8 | 2.7 | 2026年1月 |
| (参考3)IMF(WEO Update 2026) | 世界 | 3.5 | 3.3 | 3.3 | 2026年1月 |
注1:サブサハラアフリカはサハラ砂漠以南のアフリカ諸国。
注2:2025年は推計値。ただし、アフリカ開発銀行の示す2025年値は予測で、2023年と2024年は2025年11月改訂前のもの。IMFの2023年数値は、2026年1月改訂前のもの。
出所:国連、世界銀行、IMF、アフリカ開発銀行(表内に記載)
アフリカ開発銀行(AfDB)は、「Economic Outlook Database」を発表している。そのデータ(2024年、推計値)によると、アフリカ地域の需要項目別GDPでは民間最終消費が最大(65.2%)。これに、総固定資本形成(24.6%)、政府最終消費(12.3%)が続く。世界銀行の「Global Economic Prospects 2026」(以下、世銀またはGEP)では、2024年の域内民間最終消費の伸び(実質値)がサブサハラで3.1%、中東・北アフリカ(注1)で4.0%。それぞれ前年を0.4%ポイント(pp)、0.6pp下回ったとした。特にサブサハラでは、内需動向を見る上での指標となる輸入の伸びも低下した(前年比マイナス4.7pp、2.1%)。
消費減退の最大要因は、インフレの高進だ。新型コロナ禍を機に世界を高インフレが覆った。それも、高金利政策などインフレ抑制措置により、先進国、途上国ともに2022年をピークに低下基調にある。しかしアフリカ地域では2020年以降、平均2桁の物価上昇が続く。国連の「World Economic Situation and Prospects 2026」(以下、WESP)によると、2024年の域内消費者物価上昇率は年率16.9%まで上昇した(スーダンを除いて計上)。
そのため各国政府は2023年以降、政策金利を引き上げ。この政策を中心に、基本生活物資の価格上限設定、補助金支出など国情に合わせた物価対策を組み合わせて実行。こうした取り組みもあり、物価上昇は2024年末までにピークアウト局面に入った。
注:2025年は推計値、2026年は予測値。
出所 国連・World Economic Situation and Prospects 2026
一方で、高金利政策は市中貸出金利の上昇を誘引する。世銀・GEPでアフリカ域内の2024年の総固定資本形成の実質伸び率を見ると、サブサハラでは6.0%と比較的高率ながら前年を3.5pp下回った。中東・北アフリカでも同様に0.5pp減の2.5%に留まっている。主に民間部門で、住宅・設備投資にブレーキがかかったと推測できる。
政情不安や広域的な天候不順が経済活動を阻害
内需の伸び悩みには、内政不安を抱える国の増加や気候変動も複合的に作用した。
世銀の「Worldwide Governance Indicators」には、アフリカ各国の政治的安定性スコアについて掲載がある。2024年は、対象54カ国中33カ国でこのスコアが前年を下回った。スコア悪化国は、過去5年間で初めて6割を超えた(61%)。物価高による生活窮乏や国政選挙を巡る混乱、権威主義的統治や国民に負担を強いる経済政策への不満などで、2024年は少なからぬ国で反政府デモなどが顕在化。経済活動や物流、人流を阻害した。
2024年はまた、天候不順がアフリカ諸国の農業生産・所得に少なからぬ影響を及ぼす年にもなった。南北アフリカ(モロッコや南ア、ザンビア、ジンバブエなど)では、少雨が続いた。東西アフリカ〔ケニアやナイジェリア、サヘル(サハラ砂漠南縁)地域など〕で、広域にわたって多雨が発生。これらが、穀物を中心に農業生産やインフラに打撃を与えた。これに伴って、農村部で所得減を招き、都市部で食料品価格が上昇した。これらもまた、消費の下押し要因になった。
海外労働者送金など域外資金流入が景気を下支え
既述のように、2024年はアフリカが経済成長する上でマイナス要素が目立った。それでも前年を上回る3%前後の成長率を維持した背景には、外部資金の流入がある。
ここで、OECD開発援助委員会(DAC)の統計資料を基に、2024年にアフリカ域内に流入した公的・民間資金額(注2)を試算してみる。その結果は、991億ドルだった(前年比6%減)。前年からやや減ったとはいえ、アフリカ全体の2024年のGDPの3%強に相当する。一方で、コロナ禍の収束を受けて、海外労働者からのアフリカ向け送金額は1,046億ドルに上った(前年比14%増)。前述の資金流入の減少を補ったかたちだ。合計して2,000億ドルを超える流入資金が、2024年のアフリカの内需を下支えした。
注:公的・民間資金流入はフロー。ODA、その他の公的資金フロー(OOF)、民間非金融部門と金融部門の二国間長期資産の変動(輸出信用保証、民間直接投資、ポートフォリオ投資、民間銀行による貸付など)が含まれる。
出所:公的民間資金流入はOECD・DAC公表データ、海外送金受取額はThe International Organization for Migration (IOM)公表データを基にジェトロ作成
インフレ緩和で、2025年は低成長から脱する
2025年に入ると、アフリカの実質経済成長は回復。国際機関は軒並み、地域の成長率が世界平均を上回った(3%台後半から4%程度/表1参照)と推計した。2024年来の物価抑制策が奏功して、国連「World Economic Situation and Prospects 2026」(以下、WESP)に掲載の53カ国中38カ国で、インフレ率が低下。各国の政府・中央銀行は景気対策を念頭に、政策金利の段階的引き下げなど金融緩和に動いた。
一方で域内では、サヘル地域やコンゴ民主共和国周辺、スーダンなどで依然として政情不安が続いた。また、マダガスカルでは2025年10月(2025年10月20日付ビジネス短信参照)、ギニアビサウでは翌11月(2025年11月28日付ビジネス短信参照)、国軍が介入して政権が交代した。とはいえ地域全体では、前年と比較して相対的に安定を維持。同じく、前年のような大規模かつ広域にわたる天候不順が生じなかったことから、穀物を中心に農業生産も回復した。
経済環境の改善を受けて、特にサブサハラ諸国で経済が成長。域内GDPの約3分の2を占める民間消費の実質伸び率が2025年は前年比1.5pp上昇して4.6%(世銀・GEP、推計値)に達した結果だ。消費拡大を反映し、輸入が2.7pp増の5.2%と、2年ぶりに5%超の伸びに回帰したことにも注目したい。
なお、経済構造改革を条件としながらも、サブサハラ地域では2025年末時点で10カ国以上がIMFの中期与信プログラム(注3)を実行中だ。これとは別に、ベナンやコートジボワール、ケニアなど、対外起債に取り組む政府もある。これらも原資に、同地域では2025年、政府消費が4.3%(推計)の伸びを示した。
トランプ関税の大波がアフリカにも到来
一方で、2025年1月に発足した米国・トランプ政権が通商・外交政策を大幅に転換。アフリカを取り巻く通商環境が変化する要因にもなった。経済への影響を最小限にするべく、域内各国は対応に追われる1年になった。
米国政府は2025年4月2日、貿易の非互恵性の是正と国家安全保障の確保を理由に、世界の全ての国に10%のベースライン関税、57の国・地域に異なる相互関税を課す大統領令を発表した(2025年4月3日付ビジネス短信参照)。最貧国のレソト(50%)やマダガスカル(47%)にも高関税を課す内容で、域内諸国に衝撃が走った。
その後、後者の適用には中国を除いて90日間の猶予を設定。アフリカ域内各国への課税率は、最終的に、相互関税とベースライン関税を含めて10~30%のレンジで国別に設定。その上で、8月7日から適用を始めた(2025年8月8日付ビジネス短信参照)。これとは別に、(1)鉄鋼・アルミ・派生品および銅製品(50%)、(2)乗用車・トラック・部品(25%)、(3)木材・製材・木材製品(10~25%)には、通商拡大法232条に基づいて追加関税を課税した(「特集:米国関税措置への対応」内の「米国トランプ政権の関税政策の要旨」参照)。
特恵失効が関税引き上げに追い打ち
他方で米国の特恵関税制度は、いずれも失効状態になった。特恵制度は、関税課税強化がもたらすインパクトの緩衝材になり得ただけに、その影響も大きかった。
まず、一般特恵関税制度は既に2020年内に失効。更新のめどはたっていない(2023年5月22日付地域・分析レポート参照)。
また、アフリカ成長機会法(AGOA)に基づく特恵も2025年9月で、いったん失効(注4)した(2025年10月9日付ビジネス短信参照)。ちなみに当該制度の狙いは、米国とサブサハラ地域の通商関係拡大や、サブサハラの持続的成長への貢献だった。従前は、一定の受益要件をクリアしたサブサハラ32カ国に適用していた。
米国との貿易では、相互・追加関税というハードルが生じた上に、AGOAなど特恵が軒並み失効したことになる。この状況を受け、アフリカ連合(AU)、国連、AfDBは2025年12月、新たな局面に警鐘を鳴らす報告書「米国の輸入関税引き上げのインパクト
」を共同発表。米国が相互関税を全面適用した場合、アフリカの対米輸出は21.5%減少、域内GDP成長率も0.21%低下すると予測した。アフリカ地域には国数が多く、各国で米国の関税引き上げの度合いや影響を被る産業が異なる。このため共同報告書では、(二国間でなく)地域一体で対米関税交渉に当たることを提言している。
もっとも、例外もある。例えば南アだ。同国は、米国が30%もの高率の相互関税を課し、従前は金額ベースでAGOA最大の受益国だった。そのため南ア政府は先行して、米国との関税交渉を開始した(2025年9月17日付ビジネス短信参照)。
米国政府は2025年11月に入り、特定の農産物を相互関税の対象から除外すると発表した(2025年11月17日付ビジネス短信参照)。鉱物資源やエネルギー資源は、既に除外品目になっていた。これらに加え、コーヒーや茶、スパイス、ココア、果実・加工品などアフリカの主要輸出品目が関税対象外になった。これで、地域経済への負の影響を一定程度回避できることになった。実際、米国が2025年1~11月、アフリカから輸入した金額は、401億3,800万ドル。前年同期比11.4%増だった(注5)。
半面、工業製品の輸出比率が高い国で、対米輸出が減るなどの影響も生じている〔自動車(南ア)、鉄鋼(南アや北アフリカ諸国)、一部衣料品(マダガスカル、モーリシャス、レソト)など〕。米国の措置は総じて、回復基調にあった2025年の地域経済に影を落とした。
- 執筆者紹介
-
ジェトロ調査部上席主任調査研究員
兒玉 高太朗(こだま こうたろう) - 1990年、ジェトロ入構。ドバイ事務所次長、パリ事務所次長、中東アフリカ課長、お客様サポート部長、市場開拓・展示事業部長、海外展開支援部長、関東・甲信越地域統括センター長兼東京貿易情報センター所長を経て、2025年5月から現職。






閉じる




