マダガスカル軍による「暫定政権」が発足

(マダガスカル)

ヨハネスブルク発

2025年10月20日

マダガスカル軍は10月14日、憲法の停止などを宣言し、「暫定政権」の発足を発表した。アフリカ連合(AU)は翌15日、同国に対して、AUの資格停止を発表したが、今回の軍の指導者ミシェル・ランドリアニリナ大佐は17日に暫定政権の大統領に就任した。

同国では9月後半から、継続的な停電や断水への不満が引き金となって、若者(Z世代)中心による抗議活動が続いており、政府の解体を含む広範な反政府運動へと拡大した。反政府デモの要求を受け、アンジ・ニリナ・ラジョリナ大統領は9月29日に内閣を解散し、最終的には軍が反政府デモを支援するかたちで、軍による「暫定政権」が発足した。

情勢が大きく変化したのは10月11日で、軍精鋭部隊(CAPSAT)が軍・警察関係者に対して、反政府デモ隊への支持を呼び掛けた。CAPSATの支援を受け、反政府デモ隊は独立広場として知られる象徴的な場所の「5月13日」広場を占拠した。

ラジョリナ大統領は12日、クーデターの試みを非難する声明を発表したが、CAPSATは陸軍参謀総長を任命し、軍全部門の調整を行うとした。ラジョリナ大統領は13日、事前収録による演説で「安全な場所に避難し、海外で公務を継続している」と述べ、現地時間14日早朝には国民議会(下院)の解散を宣言した。しかし、国民議会は解散宣言を無効とし、ラジョリナ大統領に対する弾劾投票を決行して可決した。その後、CAPSATは首都の大統領宮殿に侵入し、「権力を掌握した」と発表した。

軍は「国家移行政防衛評議会」の設置、上院と最高裁判所の解散、憲法の停止を宣言し、暫定政権を設置すると発表した。なお、弾劾投票を行った下院は活動を継続し、2年間の移行期間で新憲法制定のための国民投票を行う見込みだ。

AUは10月15日、マダガスカルの資格停止を発表し、速やかに民政を回復し、新たな選挙を緊急に実施するよう要請するとともに、違憲的な権力掌握に関与した全ての個人に対して制裁を科す可能性があると警告した。

今回の動きを指導した軍のランドリアニリナ大佐は17日、暫定政権の大統領として就任した。同氏はクーデターを否定し、憲法にのっとった措置と強調した上で、2年以内の新たな選挙と民政回復を表明した。

反政府抗議活動は17日時点で沈静化の兆しを見せているが、政治・治安情勢は依然として流動的で、当面は注視が必要だ。

(橋本泰宏)

(マダガスカル)

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