UNCTAD、米国のアフリカ特恵制度「AGOA」失効の影響について言及
(アフリカ、米国)
調査部中東アフリカ課
2025年10月09日
国連貿易開発会議(UNCTAD)は9月29日、米国のサブサハラ・アフリカ諸国に対する特恵関税制度「アフリカ成長機会法(AGOA)」失効の影響に関する記事を掲載した。UNCTADによれば、AGOAの失効は米国市場におけるアフリカ各国の輸出競争力を大きく低下させる可能性がある。
AGOAの有効期限は2025年9月30日に設定されており、10月7日時点で米国から正式な延長の発表は行われていない。2025年9月時点で、市場経済、法の支配、人権擁護などの受益要件を満たす32カ国がAGOAに基づく特恵待遇を享受している。既に2025年4月以降、米国が課した追加関税によって、アフリカ各国が米国に輸出する幅広い製品に対する関税が上昇している。AGOAの失効後はWTO協定に基づく一般関税率(MFN税率)に加えて既存の各国別の追加関税などが課されることから、さらに関税率が上昇することとなる(2025年9月24日記事参照)。
例えば、ケニアからの輸出品に対する米国の加重平均関税率(注)は10%から28%と約3倍に跳ね上がる。UNCTADは、AGOAの失効に伴う関税率の急激な上昇は、特に繊維・衣料品分野におけるアフリカの輸出業者に対し深刻な影響を与える可能性があるとしている。
特にレソト、ケニア、カーボベルデ、マダガスカル、タンザニア、モーリシャスなどは、繊維・衣料品輸出により、AGOAの恩恵を受けてきたが、失効により関税が高くなった。AGOAの失効後、アフリカ各国から米国への輸出品に適用される加重平均関税率は次のとおり(かっこ内はAGOA失効前の2025年9月末における加重平均関税率)。
- レソト32%(15%)
- ケニア28%(10%)
- カーボベルデ26%(10%)
- マダガスカル23%(12%)
- タンザニア20%(9%)
- モーリシャス19%(15%)
- 南アフリカ共和国15%(14%)
- サントメプリンシペ14%(13%)
- ギニアビサウ14%(13%)
- モーリタニア12%(12%)
- ガンビア11%(10%)
- コモロ10%(10%)
なお、UNCTADは、アフリカ大陸自由貿易圏(AfCFTA)の実施の加速がAGOA失効の影響を緩和するのに役立つ可能性があるものの、調整には相当の困難が伴い、多くの時間を要するだろうと指摘している。
(注)単純な税率の平均値ではなく、2024年における米国の各製品の輸入量を考慮して計算された平均値。そのため、米国から課される相互関税率が30%の南アは、加重平均税率でみると15%となる。
(坂根咲花、波多野瞭平)
(アフリカ、米国)
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