選挙情勢に注意、環境産業の勃興にも注目(ケニア)
2022年の注目点(3)

2022年4月5日

2021年ケニア経済は順調に回復も、悪天候で農業は停滞

2021年のケニア経済は順調に回復した。第1~3四半期までのGDP成長率は、前年同期のマイナス0.8%より8.6ポイント高い7.8%だった。2021年を四半期ごとにみると、第1四半期は2.0%のプラス成長。第2四半期は前年同期から16.6ポイント増となる11.9%、第3四半期は12ポイント増となる9.9%の成長を記録した。

セクター別にみると、2021年第2,3四半期に飛躍した産業は前年同期比で、教育業(第2四半期67.6%増、第3四半期64.7%増)、ホテル・レストラン業(9.4%増、24.8%増)、そして鉱業・採石業(17.7%増、25.1%増)だった。運輸・倉庫業も第2四半期は17.4%増、第3四半期は13.0%増と2桁成長だった。唯一のマイナス成長は農林水産業で、2021年に入って以来3期連続の減少となった。雨期開始のタイミングが遅れ、干ばつと洪水を繰り返していることが要因とされ、この傾向は2022年の年頭も続いている。また、製造業は原材料調達の遅れなどにより、第1四半期は前年同期比1.6%増と不調だったが、第2四半期、第3四半期はそれぞれ9.4%増、9.5%増と好調に推移した。

公的債務への対応が課題

経済活動が活発化する中、公的債務の拡大は2022年に向けた懸念材料だ。ケニヤッタ大統領は、インフラへの投資を自身のレガシーと位置づけ、主要な道路建設を急ピッチで進めた。ナイロビ市内を縦断する空港高速道路の建設は目覚ましいスピードで進み、ワイヤキウェイ、ウフルロード、モンバサロードは2階建てに生まれ変わった。これらの道路は、2022年内に開通の見込みとなっている。一方で、公的債務残高は2021年9月末には約8兆ケニア・シリング(約8兆円、Ksh、1Ksh=約1.0円)となり、GDPの69.0%に増大した。対外債務がGDPに占める割合は35.0%に増大している。特に対中国債務は、2020年末時点でGDP比6.9%、公的債務に占める割合は10.5%となっていて、存在感を増している。日本を含むパリクラブ参加国の債務合計残高はGDP比4.1%、公的債務に占める割合も6.2%となっている。

ケニア政府は税収を向上させるため、あらゆる可能性を模索している。例えば、ケニア政府は2021年1月1日から、ミニマム税を導入した。ミニマム税は、損金を控除した課税所得(利益)に対してではなく、売上額に1%課されるものだ。しかし、新型ウイルスの拡大で打撃を受けた納税者からは反発が生じ、同年9月20日に最高裁判所がミニマム税の導入は違憲という判決を下した。ただし、ケニア歳入庁は現在も、ミニマム税は違憲ではないという立場を表明して係争中だ。2022年も税制の改正には留意したい。

公的債務への対応に加え、世界的な燃油価格と物流コストが膨れ上がったことで、輸入コストが上昇し、現地通貨のケニア・シリング(Ksh)安が進行している。2021年5月に1ドルあたり106Kshだったところ、年末には113Kshとなり、7カ月で6.6%下落した。

通貨安と農林水産業の不振は、物価上昇を引き起こしている。特に2021年9月の物価上昇率は前年同月比6.91%にのぼり、2020年2月(7.17%)以来の水準だった。2022年1月において引き続き物価上昇が顕著なのは、食費・清涼飲料(8.89%)や交通費(6.84%)となっている。

大統領選挙をとりまく情勢と経済への影響

ケニアでは2022年8月9日に、大統領選挙を含む総選挙が実施される見込みだ(2022年2月2日付ビジネス短信参照)。ケニアの選挙をめぐっては、過去に暴動で多くの死傷者を出しており、GDP成長率に1ポイント以上の影響を及ぼしてきた。ビジネス界からは、暴力のない選挙を求める声が上がっている。

候補者として有力視されているは、前回の大統領選で現職の対抗馬となった野党・オレンジ党党首で元首相のライラ・オディンガ氏だ。現職副大統領であるウィリアム・ルト氏との一騎打ちの構図となっている。

現職のウフル・ケニヤッタ大統領は、憲法で3選が禁じられているため立候補できない。ただし、副大統領になることを規制する法律はない。現在、ケニヤッタ大統領とルト副大統領との間の溝が連日報じられており、ケニヤッタ大統領は、かつて対立していた77歳のオディンガ氏を支持する可能性も高いとみられている。一方、55歳のルト副大統領は政治家の家系出身ではなく、汚職のイメージからも遠い。同副大統領は、雇用創出を重視するケインズ主義的な経済政策を明らかにしており、若年層からの支持は厚い。選挙の行方は不透明な状況となっている。

国際機関などは、こうした政治の混乱が経済に与える影響は限定的、との見方を示している。2022年のGDP成長率見通しを、ケニア中央銀行(CBK)は5.9%、世界銀行は4.7%、IMFは6.0%とした。ただし、IMFは、適切な予算執行や税制の改正への影響は否めないと指摘している。

グリーン産業の勃興

2022年は民需による経済成長が期待され、特にケニアで顕著なグリーン産業の勃興は、国際社会の注目に値するだろう。ケニアはもとより、再生可能エネルギーの導入に積極的で、2020年は総発電量のうち92.3%にあたる1万712.5ギガワット時(GWh)が再生可能エネルギーによる発電だった。うち、地熱発電が占める割合は43.6%となっている。民間企業による環境関連事業へのファイナンスに関しては、欧米資本のインパクト投資家によるエクイティ投資に加え、ケニア国内でもグリーン・ボンド(注)プログラムが展開されている。

具体的な事業としては、モビリティ関連の話題が多い。例えば、ケニアを拠点に2017年から二輪車と四輪車向けの電気モジュールを開発している、スウェーデン系のオピバス(Opibus)は、2021年に750万ドルを調達した。2022年1月には、アフリカで初となるアフリカ開発の電気駆動バスの運用を開始した。また、英国でバッテリーの再利用事業を進めていたアクセロン(Aceleron)は、2021年にケニアに進出。同年12月には、豊田通商と関連会社CFAOが共同出資して設立したモビリティ54から、第三者割当による増資を受けた。今後は独自の特許技術を生かし、ソーラーホームシステムの廃棄電池から電動自動車向けのバッテリーなどを製造していく意向だ。電気自動車の普及に関しては、国内インフラ整備が追い付いていないという指摘もあるが、民間企業の動きを具体的にみれば、クリーンエネルギーへの移行は着実に進んでいるといえる。


ケニア市内で運用が始まった、ライドシェア専用の電気自動車(ジェトロ撮影)

注:
グリーン・ボンド:温室効果ガス排出量の削減や再生可能エネルギー事業など、環境事業に使途を限定して調達する債券。
執筆者紹介
ジェトロ・ナイロビ事務所 調査・事業担当ディレクター
久保 唯香(くぼ ゆいか)
2014年4月、ジェトロ入構。進出企業支援課、ビジネス展開支援課、ジェトロ福井を経て現職。2017年通関士資格取得。

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