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2018年の中国の対台湾投資額は3年ぶりに減少
米中貿易摩擦の情勢下に見る中国企業の対外直接投資動向

2020年1月14日

台湾の統計によると、2018年の中国の対台湾直接投資額(認可ベース)は、前年比13.0%減の2億3,124万ドルと、2015年以来3年ぶりに減少した。2019年1~9月の累計では、前年同期比54.6%減の8,730万ドルと、減少幅は拡大している。

件数は微増、金額は減少

台湾経済部投資審議委員会(以下、投資審議委員会)によると、2018年の中国企業の対台湾直接投資(認可ベース、注1)の件数は141件で、前年(140件)比0.7%増と前年並みだったものの、金額は前年比13.0%減の2億3,124万ドルで、前年の7.3%増からマイナスに転じた(図参照)。直近でみると、2019年1~9月累計では、件数107件、投資金額は前年同期比54.6%減の8,730万ドルと大幅に減少している。

図:中国の対台湾直接投資の推移
中国の対台湾直接投資の金額は2009年3,749万ドル、2010年9,435万ドル、2011年5,163万ドル、2012年3億3,158万ドル、2013年3億4,948万ドル、2014年3億3,463万ドル、2015年2億4,407万ドル、2016年2億4,763万ドル、2017年2億6,571万ドル、2018年2億3,124万ドル、2019年1-9月累計8,730万ドル。 件数は2009年23件、2010年79件、2011年105件、2012年138件、2013年138件、2014年136件、2015年170件、2016年158件、2017年140件、2018年141年、2019年1-9月累計は107件。

注:中国の対台投資が開放されたのは2009年6月30日。
出所:台湾経済部投資審議委員会発表資料を基にジェトロ作成

台湾では、2009年に中国企業による対台湾直接投資を解禁した。2012年から2014年までは投資件数が130件台、金額は3億ドル台で推移したが、2015~2018年は2億ドル台と伸び悩んでいる。台湾の対内直接投資総額に占める中国の構成比は、2015年は4.8%、2016年は2.2%、2017年は3.4%、2018年は2016年の水準をさらに下回り、2.0%となった。2018年の減少は2016年と同様に、中国を除く外国企業の対内直接投資が大型投資案件の増加で急増したことにより、中国の割合が相対的に低下したためだ。

中国企業による対台湾直接投資の解禁から2019年で10年を迎えた。最近の国際情勢や中国の国内要因が中国企業の対台湾直接投資にも一定の影響を与えているとみられる。投資審議委員会の張銘斌執行秘書によると、「10年間は記念すべき期間だった。しかし、今まさに中国企業による対台湾投資は前例のない試練に直面している。それは、世界中が中国からの投資に対して非常に高いハードルを設けているからだ。例えば、中国の台頭や、世界をリードする華為技術(ファーウェイ)の5G(第5世代移動通信システム)技術、米中貿易摩擦などの影響を受け、西側諸国が中国の対外進出を制限する措置を実施している」と述べた(「経済日報」2019年6月27日付)。

大型案件は2018年が電気・電子などの製造業、2019年は卸・小売りが中心

2018年の主な投資案件を金額順にみると、1位は富士康工業互聯網による5,445万ドルの投資案件だった(表1参照)。2位は開曼英利工業による投資案件(2,301万ドル)、3位は上海復宏漢霖生物技術による漢霖生技の株式取得(2,100万ドル)、4位の富士康工業互聯網によるシンガポールの鴻運科および同社台湾子会社の全株式取得(1,998万ドル)となった。なお、4位のシンガポールの鴻運科は今回の株式保有構造の変動により、投資企業の身分が外国資本から中国資本へと変更している。

2019年1~9月の投資案件をみると(注2)、立訊精密科技による台湾立訊精密への増資(1,401万ドル)、蒙發利(香港)による棨泰健康科技への増資(1,160万ドル)などをはじめとする卸・小売り分野の投資が金額上位10件のうち7件を占めた。

表1:2018年の中国から台湾への主な投資案件(単位:万ドル)
企業名 投資額 概要 事業内容
富士康工業互聯網 5,445 INGRASYS(シンガポール)への投資、鴻佰科技の全株式取得 データストレージメディアの製造および複製業など
開曼英利工業 2,301 宏利汽車部件の株式を長春英利汽車工業に譲渡 自動車およびその部品の製造など
上海復宏漢霖生物技術 2,100 漢霖生技の株式取得 バイオテクノロジーサービスなど
富士康工業互聯網 1,998 シンガポールの鴻運科および台湾子会社の全株式取得 電子部品の製造など
天津医薬集団(シンガポール)国際投資 1,188 微邦科技への投資 医療器材の製造など
揚昕科技(蘇州) 990 台湾揚昕の設立 工業用プラスチック製品の製造など
華友国際循環資源 673 華友新能源材料への投資 その他の化学製品の製造など
傑士德精密工業 594 村田精密の株式取得 機械の製造など
昆山新萊潔浄応用材料 491 新萊應材科への増資 ガス・液体輸送用部品の販売・製造など
寧波左巻商貿 477 史泰博台湾子会社の全株式取得 文具用品の小売りなど

注1:1台湾元=0.033ドルで台湾元からドルに換算。投資額順。
注2:シンガポールの鴻運科は株式保有構造の変更により、外国資本から中国資本に変更となった。
出所:台湾経済部投資審議委員会発表資料を基にジェトロ作成

累計では卸・小売業が引き続き最大

投資審議委員会が2009年7月から2018年12月末までに許可した累計1,228件を業種別にみると、卸・小売業が814件で、投資額5億9,635万ドルと最大だった(表2参照)。2位の電子部品製造業は58件で、投資額2億8,305万ドルだった。3位の銀行業は前年末と同額で、中国銀行による台湾支店への増資があった2014年以降は新規案件はない。前年末からの変化としては、2位と3位が入れ替わったことが挙げられる。なお、2019年9月までの累計でみても、その上位に並ぶ業種は変わらない。

表2:中国企業の業種別投資案件(累計)(単位:件、万ドル、%)
順位 業種 件数 金額 構成比
1 卸・小売業 814 59,635 27.3
2 電子部品製造業 58 28,305 12.9
3 銀行業 3 20,144 9.2
4 港湾業 1 13,911 6.4
5 機械設備製造業 31 11,404 5.2
6 研究発展サービス業 9 11,214 5.1
7 コンピュータ・電子産品・光学製品製造業 33 11,079 5.1
8 電力設備製造業 8 10,938 5.0
9 金属製品製造業 10 10,309 4.7
10 ITソフトウェアサービス業 79 9,791 4.5
11 宿泊サービス業 4 8,972 4.1
12 化学製品製造業 5 6,724 3.1
13 レストラン業 54 3,008 1.4
14 廃棄物除去・処理・資源回収業 7 2,132 1.0
15 紡織業 2 1,811 0.8
合計(その他含む) 1,228 218,779 100.0

注:2009年7月から2018年12月までに認可された案件。増資も1件と数えている。投資額順に上位15位を抽出。
出所:台湾経済部投資審議委員会発表資料を基にジェトロ作成

域内の投資障壁を緩和、台湾回帰も続伸

中国から台湾への投資が低調となる中で、当局はかねて、外資(中国を除く)の投資審査手続きの簡略化などを進める考えを示していた。台湾経済部は2019年7月29日、華僑や外国人による域内投資拡大を目指し、華僑・外国人の投資障壁の撤廃、投資者や域内事業者の資金運用の柔軟性向上、手続きの簡略化などを目的とし、「華僑及外国人投資額審定弁法」を改正の上で施行した。

他方で、米中貿易摩擦などの影響を受け、中国進出台湾企業の台湾回帰の動きが引き続き進んでいる。台湾当局は2019年1月から「歓迎台商回台投資行動方案」(支援期間は2021年末まで)を実施し、中国進出台湾企業の台湾回帰投資を支援している(2019年4月19日付ビジネス短信2019年06月26日付ビジネス短信参照)。条件を満たした回帰投資案件は、申請・認可手続きにより、台湾の事業で必要とする土地や水、電力の供給、労働力確保面で各種支援や優遇措置などを享受できる。1月から11月14日までに台湾回帰の支援対象として認可された投資案件は153件で、投資予定額は6,971億台湾元(約2兆5,096億円、1台湾元=約3.6円)となっている。

同方案の実施に関連して財政部は8月15日、企業や個人が海外に留保している資金を域内に戻す際の税制優遇条例「境外資金匯回管理運用及課税条例」を施行した。この条例の実施期間は2年(2021年8月14日まで)で、企業と個人を対象としている。海外資金を域内へ戻す際の適用税率は、2019年8月15日から2020年8月14日までに申請し、且つ、戻し入れが完了した資金が8%、2020年8月15日から2021年8月14日までに申請し、且つ、戻し入れが完了した資金が10%となる。また、資金還流後に一定の条件を満たせば、50%の税額還付を申請できる。

財政部によると、11月1日時点で47件(企業30件、個人17件)の申請があり、申請総額は213億8,000万台湾元(企業185億5,000万台湾元、個人28億3,000万台湾元)だった。実際に域内に戻った資金は41億4,000万台湾元で、このうち7割近くを企業による海外の投資収益の還流が占める(「中央通訊社」2019年11月4日付)。


注1:
中国からの投資案件には、香港や英領バージン諸島などのタックスヘイブンを経由した間接投資も含む。
注2:
2019年9月までの投資案件については、投資審議委員会が公表した「陸資来台投資事業名録(10月21日更新)」を参考にした。
執筆者紹介
ジェトロ海外調査部中国北アジア課 アドバイザー
嶋 亜弥子(しま あやこ)
2017年4月より現職。

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