特集:進む北米のEV化、各地域の市場と政策を探る米加州、2022年ZEV販売台数32万台見込むも、EV充電器の約3割に不具合

2022年11月22日

米国カリフォルニア州では、「2035年までにガソリン車の新車販売を廃止する」という目標を達成するため、具体的な目標値を含む新たな規制が2022年8月に承認された(2022年9月1日付ビジネス短信参照)。電気自動車(EV)普及の先進州の同州では、EV用充電器のニーズが高まる一方、既存の充電設備に課題が見えてきた。最新データを基に、同州のEVと充電器を取り巻く現状と課題、米国内でEV用バッテリー材料の開発に取り組むスタートアップの動向について報告する。

ZEV販売台数、過去最多を見込む2022年

カリフォルニア州では、1950年代から自動車の排出ガスと大気汚染の関係について研究が行われてきた。同州は米国の温室効果ガス(GHG)の排出規制を牽引している。大気浄化法209条(注1)の下、GHG排出規制とゼロエミッション車(ZEV)の販売規制を独自に制定することが認められている同州は、EVの普及率で全米一を誇る。2021年末時点の全米のバッテリー式EV(BEV)登録台数(約145万4,400台)のうち、カリフォルニア州は38.7%(56万3,100台)を占めた。これは、2位のフロリダ州(6.6%)や3位のテキサス州(5.6%)と比べても突出している(表1参照)。プラグインハイブリッド車(PHEV)や燃料電池車(FCV)を含む同州の2021年のZEV販売台数は、これまで過去最多だった2018年から約6割増の25万279台だった(2022年2月7日付ビジネス短信参照)。さらに、2022年第2四半期(4~6月)のZEV販売台数は16万421台で、同州エネルギー委員会(CEC)は2022年を通して32万台超の販売を予測している。2022年第2四半期のZEV販売台数をメーカー・モデル別に見ると、テスラが上位5モデルのうち4モデルを占めている(表2参照)。

表1:バッテリー式電気自動車州別登録台数上位10州(2021年末時点)(-は値なし)
順位 台数 全米に占める
割合(%)
1 カリフォルニア 563,100 38.7
2 フロリダ 95,600 6.6
3 テキサス 80,900 5.6
4 ワシントン 66,800 4.6
5 ニューヨーク 51,900 3.6
6 ニュージャージー 47,800 3.3
7 アリゾナ 40,700 2.8
8 コロラド 37,000 2.5
9 イリノイ 36,500 2.5
10 ジョージア 34,000 2.3
全米合計 1,454,400

注:100の位で四捨五入。
出所:エネルギー省のデータを基にジェトロ作成

表2:カリフォルニア州ZEV販売台数上位10メーカー・モデル (2022年1~6月)
順位 メーカー モデル 販売台数
1 テスラ モデルY 44,080
2 テスラ モデル3 43,692
3 テスラ モデルS 5,922
4 フォード マスタング・マッハE 4,495
5 テスラ モデルX 4,328
6 ヒュンダイ アイオニック5 4,080
7 トヨタ プリウス・プライム 3,162
8 ジープ ラングラー・アンリミテッド 3,150
9 キア EV6 2,708
10 トヨタ RAV4プライム 2,607

出所:CECデータを基にジェトロ作成

充電施設数も全米一、州の目標達成を急ぐ

米国エネルギー省によると、全米のEV充電施設数(公共・私有)は2022年8月30日時点で5万4,202カ所となっている(表3参照)。カリフォルニア州は、州別トップで全体の3割近くを占めるが、州の目標を達成するにはさらなる取り組みが必要だ。CECによると、カリフォルニア州内の利用可能な充電器(注2)の数は7万9,023台となっている(2022年3月末時点データ)。一方、2018年にジェリー・ブラウン知事(当時)が発した知事令(B-48-18)では、2025年までに充電器25万台の設置を目標にしており、今後3年で17万台以上の増設が必要だ。さらに、カリフォルニア州大気資源委員会(CARB)は2030年までに乗用車向けに120万台、中・大型トラック向けに15万7,000万台の充電器が必要になると推計している。

表3:充電施設数(公共・私有)上位10州(-は値なし)
順位 充電施設数
(カ所)
全米に占める
割合(%)
1 カリフォルニア 15,469 28.5
2 ニューヨーク 3,368 6.2
3 フロリダ 2,916 5.4
4 テキサス 2,520 4.6
5 マサチューセッツ 2,396 4.4
6 ワシントン 1,836 3.4
7 コロラド 1,783 3.3
8 ジョージア 1,629 3.0
9 メリーランド 1,385 2.6
10 ペンシルベニア 1,315 2.4
全米合計 54,202

注:レベル1、レベル2、直流急速、非接触充電の合計。
出所:エネルギー省のデータ(2022年8月30日時点)を基にジェトロ作成

公共充電器の約3割が使用不可

カリフォルニア大学バークレー校が2022年2~3月に公共EV充電器の作動を確認する調査を実施したところ、サンフランシスコ・ベイエリア9郡に設置された公共の直流急速充電器(DCFC)181台に付属する複合充電システム(CCS)コネクター657口のうち、27.6%が使用できない状態であることがわかった。「充電ケーブルが短か過ぎて車の差し込み口に届かない」「スクリーンが作動しない」「支払いシステムに不具合がある」ことが主な理由だ。CARBが2022年2月に発表した同州のEV所有者を対象としたアンケート調査でも、公共のEV充電施設でカスタマーサービスに連絡した理由の上位3つが充電器の不具合に関するものだった。他方、これらEV充電施設の運営企業は、全国の稼働率は95~98%と回答しており、実態と運営側の認識にズレがあることが分かる(注3)。

投資は増加、電池材の米国内生産拡大に期待

投資関連のデータベースを提供しているピッチブックによると、ベンチャーキャピタル(VC)などが投資、合併、買収などによって米国のバッテリー関連企業(注4)に投入した資金の総額は過去10年間で約350億ドル、取引件数は約1,800件に上る。取引件数は毎年右肩上がりで伸びており、2017年時点で100件に満たなかったが、2021年には200件超になった。2022年も8月末時点で150件を超えている。

カリフォルニア州には、2022年10月現在、ZEV関連の製造業者が43社所在している。そのうち、テスラやクオンタム・スケープを含む7社がZEV用のバッテリーを製造している。バッテリー材料を開発するスタートアップも近年、カリフォルニア州を含む西海岸で活発に事業を展開しており、EV用バッテリーの米国内生産の拡大が期待される。シーラ・ナノテクノロジーズやレッドウッド・マテリアルズは2025年ごろにはバッテリー材料を本格的に生産する予定だ。レッドウッド・マテリアルズは、北米トヨタとフォルクスワーゲンの米国法人とそれぞれ、リチウムイオン電池のリサイクル事業で協業すると発表している(2022年5月13日付2022年8月2日付ビジネス短信参照)。また、スタンフォード大学のスピンオフ企業として設立され、シリコンナノワイヤを用いてアノード(陽極)材を開発するアンプリウス・テクノロジーズは、2022年後半に上場する見通しだ(2022年5月20日付ビジネス短信参照)。


注1:
大気浄化法は、1970年制定のGHG排出基準の根拠法で、州や自治体が独自に自動車の排出ガス規制を制定することを禁じている。しかし、同法 209条は、州の規制が連邦基準よりも厳しく、かつ必要不可欠で特別な事情がある場合、連邦基準の適用除外を認めている。
注2:
CECが「充電器」として数えているのは、エネルギー省が示す充電ポスト(EVSE)にある電源、「充電ポート」(EVSE port)。1台の充電ポストに充電ポートが2つ以上設置されている場合もある。
注3:
EV充電施設を運営する11社のうち4社が回答。
注4:
2000年以降に設立された未上場企業を対象としたデータ。
執筆者紹介
ジェトロ・サンフランシスコ事務所 調査部
田中 三保子(たなか みほこ)
2015年、ジェトロ入構。外資系消費財企業を経て2012年渡米、サンフランシスコ・ベイエリアでは日系食品メーカー勤務ののち、2015年2月から現職。

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