電池素材開発の米シーラ、2024年にワシントン州でEV向け負極材の製造開始

(米国)

サンフランシスコ発

2022年05月13日

リチウムイオン電池素材を開発する米国のシーラ・ナノテクノロジーズ(本社:カリフォルニア州アラメダ)は5月3日、電気自動車(EV)用リチウムイオン電池のアノード(負極)材を製造するため、ワシントン州モーゼスレイクにある延べ面積60万平方フィート(約5万6,000平方メートル)超の施設を購入したと発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。同施設は水力発電を電源として運営される。

同社が新施設で製造するアノード材は、グラファイト(黒鉛)ではなくシリコンを用いる(注)。同社によれば、シリコンを用いることによって、より高密度で安価な電池を製造できるという。同社の技術を活用し、グラファイトをシリコンに完全に置き換えた場合10ギガワット時(GWh)、部分的に置き換えた場合50GWhの出力を持つ。これは1年間に高級EVを10万~50万台および携帯電話5億台を動かすのに十分な出力量であるという。同施設の稼働は2024年後半、本格的な製造は2025年前半に開始される予定だ。

シーラは2019年にダイムラーと長期的なパートナーシップを締結したほか、2021年にはウープのフィットネス・ウェアラブル機器「ウープ4.0」の電池にシリコンベースのアノード材を提供している。同社がEV向けにアノード材の量産を開始するのは、モーゼスレイクの施設が初となる。

バイデン政権は2022年5月2日、EV用バッテリーのサプライチェーンの米国内での構築に向けて31億ドルの助成金プログラムを発表しており(2022年5月10日記事参照)、シーラも同プログラムへの応募を検討している(テッククランチ5月3日)。

(注)グラファイトの調査・生産を手掛けるセイロン・グラファイトのドン・バクスター最高経営責任者(CEO)によると、現在EV用リチウムイオン電池の95%がアノード材にグラファイトを使っている(エレクトレック2021年12月20日)。

(田中三保子)

(米国)

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