特集:新型コロナ禍における北米地域の新たな消費トレンドコロナ禍で成長が加速する米国の衣料品リセール市場
成長見通しはファストファッションの2倍へ

2022年2月2日

米国のファッション業界では近年、リセール(再販)市場の成長が加速している。ファストファッションブランドの台頭により、おしゃれな洋服を低価格で手軽に購入できるようになった一方、ファッション業界は以前にも増して大量生産・大量消費の傾向が高まっている。こうした生産・消費スタイルが大量の廃棄を生み、環境汚染を進める一因として問題視される中で、これを見直し、廃棄問題を削減するための試みとしてリセール市場への関心が高まっている。本稿では、米国における衣料品のリセール市場の現状や今後の見通し、米国ニューヨークを中心とした現地企業の取り組みなどを紹介する。

ファッション業界の環境汚染問題から、衣料品のリセール市場に注目集まる

世界経済フォーラム(WEF)によると、ファッション産業は全人類の二酸化炭素(CO2)排出量の10%を排出し、世界の水資源の消費量は2番目に多いとしている。2000年代半ばから、最新の流行を取り入れた商品を低価格で販売するファストファッションが注目されるようになり、気軽に楽しむことができるファッションとして急成長し、1人当たりの衣料品の平均購入量は2000年から2014年までに60%増加した。また、WEFによると、その消費量は増える一方、購入後の所有期間は半減したという。衣料品の85%はごみとして廃棄されており、1秒ごとにごみ収集車約1台分の衣料品が世界で焼却あるいは埋め立て処分されている。消費者による衣料品の購買行動が大きく変化したことで、大量生産と大量消費が加速し、生産から消費、廃棄までの間に生じる炭素排出量の増加や生産の過程で生じる化学物質排出による水質汚染により、環境への負荷は大きくなっている。このような状況の下、米国では衣料品のリセール市場への関心が高まっている。

中古衣料市場はコロナ収束後もさらに拡大する見通し

リセール品のオンラインEC(電子商取引)サイトを運営する米国スレッドアップが2021年6月に公開した中古衣料市場に関する調査「Thredup Resale and Impact Report 2021」外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますによると、米国における中古衣料品(リサイクルショップおよび寄付を含む)の2021年の市場規模は約360億ドルであり、2025年には2.1倍の770億ドルに拡大すると推定されている。同市場は、従来から存在していたリサイクルショップと、オンラインを中心に厳選された中古衣料を扱うリセール・プラットフォームの2カテゴリーに分けられているが、特に後者が市場の成長を後押しすると予想されている(図1参照)。

図1:米国における中古衣料市場の推移(2012~2025年)
同市場は、従来型のリサイクルショップ及び寄付と、オンラインを中心に厳選された中古衣料を扱うリセール・プラットフォームと主に2つのカテゴリーに区分されるが、この中でも後者が市場全体の成長を後押しする見通し。従来型のリサイクルショップ及び寄付の売上高は、2012年に110億ドル、2013:120億ドル、2014:130億ドル、2015:140億ドル、2016:160億ドル、2017:170億ドル、2018:190億ドル、2019:210億ドル、2020:180億ドル、2021:210億ドル見込み、2022:230億ドル見込み、2023:260億ドル見込み、2024:280億ドル見込み、2025:300億ドル見込み。また、リセール・プラットフォームの売上高は2014年に10億ドル、2015:10億ドル、2016:20億ドル、2016:20億ドル、2017:30億ドル、2018:50億ドル、2019:70億ドル、2020:90億ドル、2021:150億ドル見込み、2022:200億ドル見込み、2023:270億ドル見込み、2024:360億ドル見込み、2025:470億ドル見込み。

注:2021年~2025年は見込み。
出所:「Thredup Resale and Impact Report 2021」のデータを基にジェトロ作成

同社は、オンラインで衣類を売ることがより手軽になるにつれて、より多くの消費者が出品する商品を増やし、リセール・プラットフォームが成長すると予想している。また、新型コロナウイルス感染拡大の影響によって自宅で過ごす時間が増え、クローゼット内の衣類の整理が進められている点も、成長を後押ししているとみている。同社によると、パンデミック期間中に消費者の衣類の購入は全体的に減少した一方、3,620万人が初めて中古衣料をオンラインで販売した。スレッドアップは、新型コロナの感染が収束してもこの消費習慣は定着し、中古衣料の個人売り主の数は今後1億1,880万人まで拡大すると予想する。

2030年までにファストファッションの2倍規模に成長する見通し

これまでは、短期間のサイクルで大量に生産・販売するファストファッションが若年層を中心に支持されてきたが、前述のレポートでは、米国のリセール市場は2030年までにファストファッションの約2倍の規模に成長すると予想している。この予想の根拠として、ミレニアル世代(25~40歳)やその後続世代であるZ世代(9~24歳)の53%が、今後5年間でより多くの中古衣料を消費すると回答していることを挙げている。また、同社が2021年3~4月に全米の成人3,500人を対象に行ったアンケート調査によると、5人に2人の消費者がファストファッションの購入からリセール品の購入に置き換えていると回答している。また、これらの世代の45%が、持続可能でないブランドや小売店からの購入を避けており、パンデミック以前よりもサステナブルなファッションへの関心が高まっているという。このような背景から、個人のクローゼットに占めるリセール品の割合は2020年から2030年までの10年間で9%から18%へと倍増する見通しとなっている(図2参照)。

図2:消費者が所有するクローゼット内の衣類の内訳
衣類の内訳は、リセール品、百貨店、ファストファッション、中価格帯ブランド、バリューチェーン、D2Cブランド、オフプライス、アマゾン・ファッション、その他小売店のカテゴリーに区分されている。2010年の衣類の内訳は中価格帯ブランドが25%、その他小売店21%、百貨店15%、バリューチェーン12%、オフプライス11%、ファストファッション7%、D2Cブランド4%、リセール品4%。2020年の内訳はオフプライスが17%、中価格帯ブランド16%、百貨店11%、D2Cブランド11%、その他小売店10%、リセール品9%、ファストファッション8%、アマゾンファッション4%。2030年の見通しは、オフプライスが19%、リセール品18%、中価格帯ブランド13%、D2Cブランド12%、バリューチェーン10%、ファストファッション9%、百貨店7%、その他小売店6%、アマゾンファッション5%。

注:2030年は見込み。
出所:「Thredup Resale and Impact Report 2021」のデータを基にジェトロ作成

環境問題に対する意識の高まりに加え、消費者の価値観の変化などが寄与

リセール需要が拡大している背景には、環境問題に対する消費者の意識の高まりのほかにも、複数の要因が挙げられる(「リテール・タッチポイント」2021年4月8日)。第1に、中古衣料品に対する消費者のイメージの変化である。これまでは、中古衣料品の購入は衣類を低価格で買う手段であり、新品を購入する場合と比べて品質は低いというイメージが持たれていた。しかし、中古品を売買できるプラットフォームが普及し、その利用者も増加したことにより、買い手と売り手を結びつけることがこれまで以上に容易になり、品ぞろえもより豊富になった。これにより、高品質の商品を低価格で購入できる手段として認知されるようになった。

第2に、中古衣料を購入することが、若年層にとって「環境に責任を持っている」「ユニーク」といった新たな社会的影響力をもたらす資質があるという考えが広まっていることが挙げられる。大手ブランド品のリセールを手がける「トローブ(Trove)」のアンディー・ルーベン最高経営責任者(CEO)は「(金銭的事情など)必要に迫られるために中古品を購入するという世代と、(社会的責任を果たすといった)中古品の魅力に引かれて購入する新しい世代の消費者もいる」と指摘している。

第3に、中古品が持つ独特の魅力やその魅力を他者と共有する喜びの発見が挙げられる。全米に150店舗以上の拠点を持つ米国最大のスリフトショップ「グッドウィル」は寄付された商品を取り扱っており、かつては倹約家が訪れる場所だった。しかし、豊富な品ぞろえに加えて、一点物の商品を数多く扱っていることから、最近は「宝探し」のような購買体験が得られる場所として若者も訪れているという。大量の商品の中から、ユニークな商品を探し出すという購買体験が消費者の購買意欲を高めており、好みの商品が見つかった際に、ソーシャルメディアで共有することにも喜びを感じている。同年齢層の多くはSNSで日常的に写真を投稿しており、中古衣料を購入することは、新しいスタイルの衣服を手軽に購入できるとともに、それを周りとも共有することがより容易になったことも追い風となっている。こうした流れもあって、米国のトレイジー(Tradesy)やザ・リアルリアル(The RealReal)、英国のディポップ(Depop)などのファッション関連のリセールサイトは既に定着しており、いずれも数億ドル規模の資金を調達している。

ファッションブランドのレンタルサービスもリセール市場に参入

このような消費動向の変化がみられる中で、ファッションが主要産業の1つであるニューヨークでも、リセールビジネスに取り組む企業が多数存在する。例えば、デザイナーズブランドのファッションアイテムのリセールを手掛けるマテリアル・ワールド(Material World、本社:ニューヨーク)は、同社のスタイリストによる商品提案型のパーソナル・スタイリング・サービス「スタイル・アラート」を提供している。同サービスでは、ファッションの趣向に関する質問に消費者が回答することで、その好みに合わせてカスタマイズされたリセール品の衣服や小物類に関する情報が提供される。好みの商品が見つかった場合は、購入することができる。

また、最近は、衣料品のレンタルサービスを展開してきた企業もリセールビジネスに参入する動きがみられる。デザイナーズブランドの衣類などを低価格で貸し出すニューヨーク発のレント・ザ・ランウェイ(Rent the Runway)は、結婚式やパーティーなどのイベントに出席する女性向けに、ドレスなどを「買う」のではなく、「借りる」という選択肢を提供し、ファッションレンタルサービスの先駆者としてユニコーン企業に成長した。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大によりイベントが減少し、レンタルサービスへの需要も減少したことを受け、既存のレンタルサービスに加えて、今後の成長が期待されるリセール市場に乗り出した。同社のレンタルサービスは会員のみに限定されていたが、ウェブサイトで再販している商品は全ての消費者が購入できるようにし、より幅広い顧客層へのアプローチを図っている(CNBC2021年6月2日)。

このほか、ファッションブランドのエムエム・ラフルール(M.M.LaFleur、本社:ニューヨーク)も2021年3月、消費者が自社の中古品を売買できるマーケットプレイス「セカンド・アクト(Second Act)」を開設した。同サービスは、消費者から買い取った商品をオンラインで再販しており、買い取った際には、同社で利用可能な買い取り価格分のクレジットまたは買い取り価格の70%に相当する現金に交換することが可能で、消費者が利用しやすいサービスを提供する。

大手小売り各社もリセール市場に参入、スタートアップとの連携も目立つ

これらスタートアップ企業に限らず、ナイキをはじめ、アディダスやギャップなど、大手小売り各社もリセール市場に参入する動きが相次いでいる(表参照)。消費者の環境意識が高まり、その価値観を共有する企業やビジネスに引き寄せられるようになっていることから、企業は新品を販売するだけでなく、今後は消費者にサステナブルな選択肢を提供できるリセール事業への取り組みが強まるとみられる。

表:2020年以降にリセールビジネスに参入した大手小売り各社
企業名 概要
ナイキ
(Nike)
2021年4月、自社製品のリセールサービス「Nike Refurbished」を開始。買い物客が靴を返品した際に廃棄せず、割引価格で新たな顧客に販売する。各商品は手作業で検査と修理が行われ、可能な限り新品の状態に戻した上で、靴の種類や状態に応じた価格が設定される。顧客は靴箱にあるQRコードをスキャンすることでナイキの気候変動への取り組み「Nike Move to Zero」に関する情報が得られる。2022年1月現在、米国内の25店舗で同サービスを展開中。
アディダス
(Adidas)
2021年10月、中古衣類を売買できるリセールサービス「Choose to Give Back」を開始。顧客はアディダスのモバイルアプリに登録し、不要になった衣類をアディダスに郵送できる。自社製品以外でも回収を受け付けているため、売りたい中古衣類をまとめて梱包することが可能。届けられた商品は再販または再利用される。利用者は同社の会員ポイント200ポイントを獲得するとともに、郵送した衣服の点数と状態に応じて、同社商品を購入するための割引券を最大40ドル分が得られる。
ギャップ
(GAP)
2020年2月、米スレッドアップとの提携を発表。利用者は同社傘下ブランドの一部店舗で、スレッドアップに中古衣類を送付するためのキットを受け取ることができる。郵送した衣類と引き換えに、現金または同社店舗で使用できるクレジットが得られる。
リーバイス
(Levi's)
2020年10月、自社の中古衣類を売買する新たなプラットフォーム「Levi's SecondHand」を開設。利用者はリーバイスの中古品をブランドから直接購入することができる。消費者は中古衣類をメーカーに販売することで、最大25ドル分のギフトカードが得られる。
アーバン・アウトフィッターズ
(Urban Outfitters)
2021年10月、中古衣類を再販できるマーケットプレイス「Nuuly Thrift」を開設。自社製品以外の衣類も売買できる。同社のマーケットプレイスで商品が販売された場合、利用者は銀行口座への振り込みまたは同社傘下のブランドで使用可能なクレジットの獲得が得られる。
メイドウェル
(Madewell)
2021年7月、米スレッドアップと提携し、同ブランドが提供するジーンズの下取りやリサイクルを行う循環型再販売プログラム「Madewell Forever」を開始。利用者は中古品のジーンズを店舗に持参すると、20ドルの割引でメイドウェルのジーンズを購入できる。スレッドアップは商品の品質評価を支援し、一定の品質基準を満たすメイドウェル製ジーンズは「Madewell Forever」を通じて、そのほかのブランドの商品はスレッドアップを通じて再版される。
ファブレティックス
(Fabletics)
2021年7月、米スレッドアップとの提携を発表。利用者は同社の店舗で、スレッドアップに中古服を送付するためのキットを受け取ることができる。自社製品以外の衣類も受け付けており、再販可能と判断された場合、店舗で利用できるクレジットまたは現金が得られる。

出所:各社のウェブサイトや報道資料からジェトロ作成

しかし、リセールビジネスには、理想的な再販価格の予測や、ユニークで予測不可能な在庫の受け入れの自動化、そして多くの商品から個人に最適化した推奨品の提案などが技術的な課題となる。そのため、スレッドアップの新規株式上場(IPO)の引受先である、英国の金融機関バークレーズのマネージング・ディレクターを務めるアンスリー・ウィジー氏は「低価格帯でユニット・エコノミクスを実現しつつ、大規模なリセールを可能にすることは困難だ」と述べる(ヴォーグ・ビジネス2021年3月26日)。スレッドアップは中古品売買のオンライン事業を手掛けているが、現在は同社が開発したプラットフォームを通じて、消費者から送られてくる中古衣料の査定や出品、発送を代行する「リセール・アズ・ア・サービス(RAAS)」を強化している。RAASでは、同社の倉庫に到着した中古衣料について、視覚認識技術を活用してそれぞれの識別や検査を行い、販売可能な状態であるかを判断する。また、それぞれの需要や価格、提供した消費者への支払額はアルゴリズムを用いて算出される。同社によると、これまでに消費者から提供された商品のデータの蓄積により、何百万ものデータポイントにアクセスできる。また、再販時の価格設定をより適切なものにするために、一般的なブランドで人気のある商品の価格設定を調査している。さらに、全ての商品をできるだけ迅速に処理できるよう、数カ月以内に販売されないものは、寄付やリサイクルをすることで、倉庫内のスペースも効率的に活用しているという(ファスト・カンパニー2021年3月29日)。

ウォルマートやギャップ、メイドウェルなど、スレッドアップと提携して自社のプラットフォーム立ち上げ、リセールビジネスに参入する大手小売りも次々と出現している。例えば、米国のデニムブランドのメイドウェルは2021年7月、同社のジーンズの下取りやリサイクルを行う循環型再販売プログラム「Madewell Forever」を開始した。消費者は、中古のジーンズを店舗に持参することで20ドル分のクレジットを入手できる。回収された同社の女性用ジーンズのうち、スレッドアップの定めた一定の品質基準を満たすものは、メイドウェルのウェブサイトや店舗で販売される。同サービスでは、2023年までに100万本のジーンズを回収し、再利用される衣服の寿命を2倍にすることを目標に掲げている。

両社の提携は、オンラインにとどまらない。2021年9月には「サーキュラー・ストア(循環型店舗)」と名付けられたポップアップストア(注)が、10月末までの期間限定でニューヨークのブルックリンにオープンした。同店舗は、これまでに消費者から回収した同社商品のみを取り扱うほか、不要になった衣類を再販するための「クリーンアウト・キット」を来店客に提供するなど、衣料品の廃棄削減につながる取り組みも促進している。また店内には、ファッション産業が地球に及ぼしている影響や、環境への負担を軽減するために消費者が貢献できる方法など、消費者に循環型社会への参加を促す呼びかけを発信している。また、店舗で販売されている製品のタグにはQRコードが表示されており、スマートフォンで読み取ることで、衣類の手入れなど長持ちさせる方法や、その商品を購入することでどれだけ環境負荷に貢献できるかなどの情報を測定する、カーボンフットプリントの計算が表示される。また、地元のデザイナーやサステナビリティ先進企業として知られる米国大手アウトドアブランドのパタゴニアなどと連携し、衣類の正しい修理方法を学べるワークショップなども開催しており、環境負荷の軽減に向けて消費者がどのように貢献できるか発信するためにさまざまな活動を行っている(リテール・ワイヤ誌2021年9月27日)。

これまでみてきたように、ファッション産業が与える環境負荷が世界的に深刻な問題となっている現在、過剰な消費を抑制し、環境への負担をできる限り軽減する社会を目指す取り組みが活発になりつつある。このような変化から新たな商機を見いだす企業が、今後のファッション産業にどのような改革を起こすことができるか期待される。


注:
空き店舗などを利用して、短期的に出店する形態。
執筆者紹介
ジェトロ・ニューヨーク事務所 調査部
樫葉 さくら(かしば さくら)
2014年、英翻訳会社勤務を経てジェトロ入構。現在はニューヨークでのスタートアップ動向や米国の小売市場などをウォッチ。

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