特集:アフリカにおける医療機器ビジネスの可能性医療機器の国産化に期待(ガーナ)

2021年9月9日

ガーナにおける医療機器ビジネスの可能性について、英国の医療機器販売会社HCEメディカルグループの出資を受けて設立されたHCEガーナのCEO(最高経営責任者)ダニエル・アサブテ氏と営業部長のポール・クワオ氏に話を聞いた(2021年7月29日)。同社は2021年6月に行われたジェトロ医療機器商談会に参加した。


CEOのダニエル・アサブテ氏(左)と営業部長のポール・クワオ氏(右)(本人提供)
質問:
ビジネスの概況(主な取扱製品、取引相手など)は。
答え:
救急用・診断検査用の医療機器、医療用ユニフォームやベッドや消費財など、高品質のヘルスケア製品とサービスを、ガーナを中心に、リベリア、トーゴなどの周辺国に提供している。民間病院、国立病院、NGOの順に顧客を有しており、ECサイトでも販売している。

HCE外観(同社提供)
質問:
新型コロナウイルス禍における医療機器のニーズは。
答え:
感染者の治療に使われる人工呼吸器、酸素濃縮器、ICU(集中治療室)ベッドなどのニーズが高まり、感染予防関連製品(PPE)のニーズも高い。もっとも、ワクチン保管用の冷蔵庫は他国でも同様に需要が高いものの、海外からの輸入となるため、生産から販売まで輸送を含め6カ月以上かかり、商機を逸することが多い。

救急用器具 AED、人工呼吸器、吸引装置等
(同社提供)

医療用衣服、ネブライザー吸入器、
衛生製品病院ベッド(同社提供)
質問:
取扱製品を検討する際に重視するポイントは。
答え:
ガーナや西アフリカで市場性がある商品であること、独占販売権を結べるかどうかだ。また、製品が日本や海外で医療機器として承認されていることも重要である(FDA、CE、薬事法など)。さらに、ガーナでの登録・承認手続きのために、製品や取扱説明書なども英語であることが望ましい。
質問:
関心のある、あるいは日本から調達したい製品は。
答え:
人口増加と経済発展に伴い市場が拡大している、ベビー・ウォーマーやインキュベーターなどを取り扱いたい。モニタリング機器やX線装置などにも関心があり、保証、メンテナンスや設置のためのノウハウを有するメーカーとの取引を希望する。
質問:
ガーナにおける日本製医療機器の普及状況、今後の可能性は。
答え:
ドイツや米国の医療機器が多いが、ガーナにはすでにシスメックスやオムロンといった日本企業も進出しており、日本の高品質な技術や機器の需要は高い。日本製品が浸透するまでに時間を少し要するが、ガーナは西アフリカの玄関口として最適国だといえる。
質問:
商談会での主な成果は。
答え:
商談会では1社との話が進んでおり、認証と登録手続きを今後進めていく予定だ。その他、モバイルX線や超音波機器など、英仏日などからの助成・援助関連の請負契約も行っており、日本とは2018年に初めて実施し、それ以降も継続している。
質問:
ビジネス上の課題は。
答え:
ファイナンスが最大の問題である。ガーナではローン金利が高く、返済期間も短いため在庫保有や新規投資が難しい。また、政府関係の国立病院取引の場合、支払いの遅延が多く発生している。民間の病院との取引の方はその点問題はない。
輸入・通関に関しては、機器にもよるが6~8カ月程度で機器の認証と登録ができる。輸入品は基本的には前払い決済となる。
質問:
今後の展開は。
答え:
:医療機器は100%海外からの輸入に依存しているのが現状であるものの、アフリカの今後の可能性を見据えたガーナでの医療機器のアセンブリーなどに期待したい。また今後、当社としては簡易な医療器具の製造を行う考えでいるが、日本企業のノウハウを基に協力いただけるところを探したい。
執筆者紹介
ジェトロ・アクラ事務所長
関根 広亮(せきね ひろあき)
2003年、ジェトロ入構。ものづくり産業課、ジェトロ・ニューデリー事務所、ジェトロ地方事務所などを経て、2020年3月から現職。