特集:ロシアでの日本食ビジネスの新たな潮流長野発祥たこ焼・たい焼店ロシア初進出-屋台テーマに日本B級グルメを

2021年11月30日

長野県発祥の「かめや」がロシアのサンクトペテルブルクに、たこ焼・たい焼店の「縁日」を2021年10月からグランドオープンした。かめやは、たこ焼・たい焼の専門店「焼きたて屋」と、たこ焼酒場「タコとハイボール」を日本国内に約100店舗出し、米国ニューヨークでは「DOKODEMO」を出店している。ロシアへの初出店に当たって、経緯や今後の展望を亀原和成代表取締役に聞いた(10月20日)。


看板メニューのたい焼、たこ焼(かめや提供)
質問:
ロシアに関心を持ったきっかけは。
答え:
農林水産省が主催したロシア市場の視察団に参加し、2019年10月にモスクワとサンクトペテルブルクを訪問した。実際にロシアを見てみると、統計上の経済成長と比べて、外食産業の実態がついてきていないように感じた。外食産業はまだ成熟しきっておらず、イメージで言えば、30~40年前の日本のような印象を受けた。仕事後に同僚や友人と少し飲んで帰るような、ちょっとした外食というイメージがなく、外食はハレの日に行う特別なものという話を聞き、外食文化や外食産業に関しては成長途中だと感じた。すしロールはロシア国内でブームを巻き起こし、既に定着した感がある。一方、北米や欧州に比べれば日本食が流行する余地はまだあり、海外展開先として難しさはあるものの、ブルーオーシャンだと思った。たこ焼、たい焼は寒い方がおいしく感じるので、寒いロシアの地であれば流行する要素も多いのではと可能性を見た。
質問:
進出の経緯は。
答え:
視察中に知り合った現パートナーのフードパークというロシア企業から2020年9月にサンクトペテルブルクへの出店の打診があり、本格的に検討を始めた。農水省の実施する外食産業の海外展開支援事業に採択され、補助金を受給できることになったため、(新型)コロナ(ウイルス)禍ではあったが、出資と出店を決意した。
質問:
コロナ禍での進出だが、どのように進めたのか。
答え:
パートナー企業からの打診後、2021年3月にプレオープンすることとなった。コロナ禍の影響で事前の現地への出張は難しく、基本的にオンラインミーティングで現地パートナーと話を詰め、店舗の確認にはZoomを活用して出店を決めた。プレオープンの1週間前には日本からスタッフを派遣し、たこ焼、たい焼の焼き方の指導を行った。
日本でのフランチャイズ展開の経験は今回の進出に役立った。例えば、昨今はグーグルマップなどを駆使して新店舗の立地の初期検討を行う場合もある。今回のロシア進出は信頼できる現地パートナーとの協業に加え、日本での経験も合わせることで現地に出張ができない中でもしっかりと準備ができた。

調理風景(かめや提供)
質問:
ロシア進出に当たっての難しさは。
答え:
飲食産業への参入のタイミングとしては、ロシアは日本食市場も発展途上にあり、少し早いと思った。また、ロシアに限った話ではないが、日本食を海外展開する上で、どの程度までローカライズするのかを考える必要もあった。まず、たこ焼とたい焼は現地にないので、初めての味や食感の食べ物となる。例えば、たこ焼は「外はカリっと中はトロっと」という食感が特徴のため、最初はロシアでは受け入れられないと考え、ローカライズが必要だと考えていた。しかし、現地スタッフの間で試食を重ねてもらうと、新しい食感として受け入れられてきたので、結局はローカライズせずに日本の味のまま販売することになった。
質問:
気を付けている点は。
答え:
ロシアであっても日本の味をなるべくそのまま届けるようにしている。たこ焼、たい焼はともに味のカギとなる生地、材料となるミックス粉、ソースを日本から仕入れている。ロシアでは粉の材料の調達や調合が難しいことから、現地調達ではなく輸入となった。米国でも店舗運営をしているが、米国では現地調達はできるが、材料の輸入ハードルが高い。ロシアでは、食材を輸入するハードルは米国と比較して高くないと感じている。国ごとに特徴や障壁が異なるので、それぞれの国に合ったかたちで乗り越えることが必要だ。
質問:
店のコンセプトは。
答え:
店舗のコンセプトを「屋台」とし、店名も屋台から連想される「縁日」とした。屋台という古き良き日本のイメージの中で、昔ながらの日本のB級グルメをロシアの方々に味わってもらうことで、より深く日本の食文化の豊かさを伝えていきたい。営業開始時点では日本に関心がある方々が主なターゲットだが、今後はより広いターゲットに刺さればと考えている。

店舗内風景(かめや提供)
質問:
客単価、開店後の売り上げは。
答え:
客単価は当初1,000ルーブル(約1,600円、1ルーブル=約1.6円)程度を想定していたが、10月のオープン後、結果的に1,200ルーブル程度に落ち着いている。昼はたい焼やたこ焼がメインだが、夜はこれに加えてアルコールやその他のメニューも出す居酒屋形式だ。売り上げは、まだ開店してあまり時間が経っていないが、現状としては想定の120%で推移している。
質問:
現地の運営形態は。
答え:
現地パートナーと共同出資で店舗を運営している。役割分担としては、かめやがたこ焼、たい焼のミックス粉とソースの仕入れ、技術指導を行い、パートナーが現地店舗の運営、人材育成などを担当している。
質問:
今後の見通しは。
答え:
今後はロシア国内でモスクワなどの主要都市に店舗を増やしていきたい。また、ロシアだけでなく欧州もターゲットに考えていく。その際には、パリなど既に日本食が浸透している場所だけでなく、コストや条件が合って信頼できる現地パートナーが見つかれば、ロシアと地理的に近い中・東欧なども検討していきたい。今後、海外展開を推し進めていくためにマネジメントができる人材を駐在員として送ることも検討している。
日本の人口減少に伴い、外食市場の拡大が見込めない中で、業態を変えて国内で勝負するだけでなく、これまで国内で経験を積んできた飲食店のノウハウを生かして海外ビジネスを進めていきたい。日本の外食産業は「はやり廃り」が早すぎることもあり、トレンドを追うのが難しい。海外で「日本食」はそれ自体が1つのジャンル、ブランディングとなるため、腰を据えて息の長い経営をしていきたい。今後もチャンスがあれば、積極的な海外進出を通じて日本の食文化を世界に広げていきたいと考えている。
執筆者紹介
ジェトロ長野諏訪支所長
大野 晃三(おおの こうぞう)
2016年、ジェトロ入構。ものづくり産業部環境・インフラ課、企画部企画課海外地域戦略班(中東担当)、ジェトロ・ラバト事務所を経て、2020年7月から現職。

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