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特集:ロシアでの日本食ビジネスの新たな潮流「新しいものを探す」人たちに日本の味覚を融合させたメニューを(ロシア)

2020年8月21日

ロシアでも、ラーメンなどカジュアル日本食市場が徐々に浸透しつつある。しかし、使われる食材は日本産よりも地元のものが多い。モスクワで10年以上腕を振るう「コーナー・カフェ&キッチン」(以下、コーナー・カフェ)の小林克彦オーナーシェフに、自身の経営するカフェ、モスクワの最近の外食トレンド、日本食材の販路拡大の見通しについて聞いた(インタビュー実施は2019年11月28日)。

質問:
店舗の概要について。
答え:
「コーナー・カフェ」は現在2店舗ある。市内中心部(コンポジトルスカヤ通り)の1号店と、やや中心から離れたノボドミトロフスカヤ通りの2号店。第1号店はロシア人2人との共同出資で、自分自身が最大の出資者だ。2号店はマイナー出資にとどめている。座席数は1号店40、2号店25だ。1号店があるのは市内中心部だが、大通りに面していないため、家賃が安い。
1号店では、自分の作りたい味で出している。対して2号店では、ロシア人向けに味を調整している。2号店のある地域は、客層として日本食に親しんでいる人が少ない。また所得水準も異なるので、嗜好(しこう)が中心部と違う。メニューの種類を変える、濃い味付けにしたり価格を低めにしたりするなど、立地に合わせた工夫をしている。

「コーナー・カフェ」の小林克彦オーナーシェフ(ジェトロ撮影)
質問:
客層について。
答え:
1号店は最初、日本人の利用が多かったが、最近は平日も週末もロシア人がメインとなっている。リピーターも多い。 旅行口コミサイト「トリップアドバイザー」を見て来訪する外国人もいる。大通りに面しているわけではないので、リピーターを獲得することが重要。口コミでゆっくり広がった形だ。 客単価は1,500ルーブル(約2,250円、1ルーブル=約1.5円)程度。アルコール飲料を注文する人が少ないので、この程度の金額にとどまる。ギョーザと前菜、お茶とメインでこの程度の値段になる。
来訪客の年齢層は、ランチの時を中心に(モスクワで新しくできたカジュアル系日本食レストランの客層に比べ)割と高めだ。平日は、周辺のオフィスに勤めている人が多く来るためだ。週末は若者から熟年層まで幅広い。

ロシア人客老若男女でにぎわう店内(ジェトロ撮影)
質問:
日本食材の取り扱い状況、将来的な展望や課題は。
答え:
高級店でないので、日本から輸入している食材は少ない。日本酒、ゆずジュース、かつお節、七味などごく一部に過ぎない。日本製品の調達の判断基準は、当地では手に入らないもの、あるいは手に入るが質に問題があるもの(例えば、かつお節)などだ。今後使いたい日本の食材は、あんこ(白あんを含む)をはじめ、たくさんある。生鮮では大葉、シシトウなども扱いたい。ただし、価格、流通(入手の容易さと安定度)、味などを総合的に考えると、なかなか取り扱えないのが現状だ。
質問:
他の日本食レストランとの差別化をいかに図るか。
答え:
日本人として自分の感覚でやる、流されずに進める、の2点を心がけている。自分は、「コーナー・カフェ」を日本食とカテゴライズしていない。日本をベースに、ロシアの味覚をミックスしていろいろ試している。1号店を開店する際にも、すし(ロール)がないと人気が出ないと言われた。スシ・ロールはこれまで、伝統的にロシアで日本食の王道として捉えられてきたものだからだ。しかし、市内中心部の顧客は常に新しいもの探している。そのため、ロールがなくても大丈夫だった。
しかし、中心部から離れた2号店の周辺ではまだそういった感じになっていない。このため、ロールをメニューに加えている。

和食のイメージを残しつつもロシアの感覚をミックス:
タイガープラウンのスイートソース(ジェトロ撮影)
質問:
今後の店舗展開、モスクワおよびロシア、その他のCIS圏での日本食市場をどうみるか。
答え:
2019年1月に、ウサチョフスキー市場(モスクワ市ハモブニキ地区)でラーメン店「コジロー」を始めた。路面店とは違う形態で事業を広げたい。
地方への本格展開はまだ難しいと考えている。どれだけ地方の店舗の指導に手をかけられるかが課題であるためだ。とはいえ、全く考えていないわけではない。候補はエカテリンブルグだ。小型の独自アイディアの店がはやってきている。カザフスタンでも、新しい形の日本食が広まりつつある。1年前までは、ラーメンを扱う店はほとんどなかった。
ロシアの日本食市場は、浮き沈みはあるだろうが、拡大すると思う。フードコートへの出店ブームは過ぎつつある(2018年7月7日付地域・分析レポート「進化するロシア外食産業、市場は豊か」参照)。フードコートができ始めて5年ほどがたち、少し飽きられてきたのかもしれない。フードコートが飽きられ始めた理由は、居心地が悪いため。ロシア人は本来、ゆったりと落ち着いて食べたいと考える人たちだ。
執筆者紹介
ジェトロ・モスクワ事務所長
梅津 哲也(うめつ てつや)
1991年、ジェトロ入構。本部、ジェトロ・モスクワ事務所、サンクトペテルブルク事務所などに勤務。主な著書に「ロシア 工場設立の手引き」「新市場ロシア-その現状とリスクマネジメント」(いずれもジェトロ)。

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