特集:欧州が歩む循環型経済への道循環経済法が2月に施行、循環経済型社会へ大きな一歩(フランス)

2020年6月4日

フランスで、循環経済法外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます が2月12日に施行された。同法は、(1)使い捨てプラスチックからの脱却、(2)消費者への情報提供、(3)廃棄物の対策および連帯再利用(社会への還元)、(4)(製品の)陳腐化への計画的な対応(長寿化)、(5)より良い(環境負荷を抑えた)生産推進、を柱とする。大量生産・大量消費・大量廃棄型の経済社会から再利用やリサイクルの促進により廃棄物の削減、資源の循環を目指す同法の制定により、フランスは循環経済型の社会を構築するための大きな一歩を踏み出した。

使い捨てプラスチックからの脱却

同法は、フランスが2025年1月1日までにプラスチックのリサイクル率100%を目標とすることを規定している(第5条)。さらに、2040年までに使い捨てのプラスチック包装の市場投入(上市)を禁止する目標を設定した(第7条)。政府はその目標を達成するため、企業、地方自治体、消費者団体など利害関係者と協議し、2021年以降5年ごとに現実的な目標を設定。政令として発布する。これまでさまざまな法律で規定されているが、5カ年計画を立てることで一貫した戦略を打ち出す。

フランスで循環経済法などに基づき禁止される使い捨てプラスチックの具体例は、以下のとおり。

  • 2020年から:コップ、グラス、皿(循環経済法第77条)、軸がプラスチックの家庭用綿棒(環境法L541-15-10)
  • 2021年から:ストロー、カトラリー(ナイフ・フォークなど)、持ち帰り用グラスのふた、発泡ポリスチレンの容器(店内飲食用もしくは持ち帰り用)およびボトル、ステーキ用ピック、風船棒、プラスチック紙吹雪(循環経済法第77条)
  • 2022年から:非生分解性プラスチックのティーバッグ、小売店での1.5キログラム未満の未加工の野菜・果物のプラスチック包装、ファストフード店のおまけで無料提供されるプラスチックおもちゃ(循環経済法第77条)、新聞・雑誌・広告のプラスチック包装(循環経済法第78条)

使い捨てプラスチックのレジ袋は2016年から、レジ袋以外の果物や野菜用の(量り売り用などの)プラスチック袋は2017年から禁止されている。循環経済法では、これらの禁止措置の徹底化を図るため、以下のように規定している。

  • 2021年から、使い捨てプラスチック袋の製造および輸入を禁止する。違反の場合、自然人は3,000ユーロ、法人1万5,000ユーロまでの罰金を科す(第77条)。
  • 食品や大量消費財を提供する400平方メートル以上の小売店は、2021年から、レジを出たところに消費者が余分と思った包装を捨てるための分別回収箱を設置する(第72条)。

同法はさらに、ファストフードなど飲食店に対し、2023年から店内飲食用に再使用できるカップ、グラス、カトラリーの使用を義務付ける(第77条)。海洋プラスチック問題の解決策として、2025年から新品の洗濯機にはマイクロファイバー用のフィルターの備え付けを義務付ける。このほか、不適当な製品に「生分解性(biodégradable)」と記載すること(第79条)や、工場でしか堆肥化できないプラスチック製の商品および包装に「堆肥化可能(compostable)」と記載すること(第13条)について、消費者に誤解を与えるため禁止する。

同法ではまた、2030年までにフランスで上市される使い捨てプラスチック製飲料用ボトルの50%削減を目標とし(第66条)、2022年から公共施設に冷水機の設置を義務付けている(第77条)。EUが加盟国に義務付けているプラスチックボトルのリサイクル率の目標(2025年に77%、2029年に90%)について、目標に達しそうにないと政府が2023年に判断した場合、デポジット制度を導入する(第66条)。なお、非営利団体エコ・オーガニズム(注)の一つで容器包装のリサイクルを管理しているシテオ(CITEO)が2019年6月に公表したデータ外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます によると、フランスにおけるプラスチックボトルのリサイクル率は2018年時点で58%となっている。

消費者への情報提供

循環経済法には、消費者が環境に考慮した行動を取るために必要な情報を与える施策も盛り込まれた。企業に対し製品に対する環境や持続可能な側面に責任を持たせる。そのために、拡大生産者責任による回収・リサイクルの対象となる製品への添付が2015年から義務付けられている「トリマン・マーク」(2019年7月19日付ビジネス短信参照)に加え、2022年からは複数の素材でできている場合は素材ごとにごみ分別に関する情報の表示を義務付ける(第17条、第130条)。同年から内分泌かく乱物質を含む製品を市場投入する企業は申告し、その情報をインターネット上で公開しなければならない(第13条)。同法は、製品の環境負荷、社会的課題を評価するためのマークやラベルなどの自発的な表示システムも制定している(第15条)。衣料品、食品への強制表示を前提に、まずは任意参加の企業を対象に試験的な表示を同法の公布(2月20日)から18カ月間実施する。フランスは、EUに先駆けて環境負荷表示に取り組むことでEUにおける環境負荷のラベル化をリードしていきたい意向だ。

廃棄物の社会への還元

無駄な廃棄物の削減を図るため、循環経済法は、拡大生産者責任によりリサイクルのルートが確立している繊維製品や電気製品などは2022年1月1日までに、その他ルートが確立されていない食品以外の製品は2023年末までに、売れ残り商品の廃棄を禁止、再利用、リサイクルや寄付を義務付ける(第35条)。食品については、2016年2月13日施行の「食品廃棄物対策に関する法律」で、すでに流通業者に対し消費可能な売れ残り商品を消費に適さないような状態にすることを禁じている(2019年10月には、規制と罰金の対象を外食産業と農業食品部門の全事業者へ拡大)。あわせて、この規定に違反する場合は3,750ユーロの罰金を科すことを定めていた。循環経済法ではその罰金額を最大で前年の売り上げの0.1%とし、罰則を強化した(第30条)。

製品の長寿化

廃棄物の処理について生産者は、自社でリサイクルのルートを構築するか、非営利団体エコ・オーガニズム(注)に拠出金を支払って委託する。エコ・オーガニズムは、国から認可を取得するにあたり廃棄物処理の手段と目標を規定され、その履行を義務付けられる。なお、政府は企業に対しては、廃棄物削減の目標に到達するためのインセンティブ制度を設けている。 循環経済法は、製品の長寿化を後押しするため修理部門を強化する。そのために、エコ・オーガニズムに修理促進のための基金の立ち上げを義務付ける(第62条)。資金は、企業がエコ・オーガニズムに支払うリサイクルのための拠出金を充当、年間約5,000万ユーロで運営していく。同基金はエコ・オーガニズムが認定する修理業者による修理への資金援助を行い、消費者が認定の修理業者に支払う修理の費用を抑えるシステムを構築する。故障した電気・電子機器で修理率は40%に過ぎないが、政府は、5年後までに修理率を60%まで引き上げることを目標とする。 同法は電気・電子機器には、2021年から販売時に修理の可能性の指標(0~10まで)の表示、2024年からは耐用性の指標の表示を義務付ける。家具と電気・電子機器には、2022年から修理用部品の在庫の状況に関する情報の表示を義務付ける(第16条、第130条)。家電やコンピュータ機器の修理用部品の在庫が切れてはいけない期間を政令で規定するとし、製造業者または輸入業者に対し15営業日以内の修理用部品の供給を義務付ける。修理業者は中古の部品による修理も提案する。市場に部品がなく3Dプリンターによる部品の製造が可能な場合、知的財産の所有者の同意を条件として、製造業者に3Dプリンター製造を可能とする図面や技術的情報の提供を義務付ける(第19条)。 さらに、携帯電話やタブレットなどデジタル機器の販売時に、オペレーションシステムのサポート期間を消費者に知らせることも義務付ける(第27条)。また、同法の制定(2020年2月10日)から6カ月以内に、デジタル機器およびソフトウエアの製造業者にアップデートの可能な最低限の期間を義務付ける法改正の妥当性を検討する目的で、デジタル機器の寿命を延ばすためのオプションなどに関するレポートを政府から議会に提出するものとした。

環境負荷を抑えた生産推進

循環経済法では、生産者の責任で回収、リサイクルを義務付けている製品群を拡大した。すでに義務付けられている電気・電子機器、容器包装、医薬品、靴、家具などに、新たに商用包装材、建材、玩具、スポーツ・レジャー用品、日曜大工用品、ガーデニング用品、エンジンオイル、たばこの吸い殻、衛生布(ウェットティッシュ、ペーパータオル、コットン、おむつなど)、釣り用具などを加えた。


菓子の包装箱に表示されている、素材別表示(ジェトロ撮影)
パリ市内に設置されている
ガラス瓶回収ボックス(ジェトロ撮影)
パリ市内に設置されている衣類・リネン・
靴・バッグ回収ボックス(ジェトロ撮影)

同法はまた、企業が環境負荷の低減に取り組むよう、エコ・オーガニズムが次のようなインセンティブ制度を設けることを定めた(第62条)。再生材料や再生可能な資源の使用、耐用性、修理、再使用の可能性、危険物質の有無などを基準に、基準を満たしている製品については生産者がエコ・オーガニズムへ支払う拠出金が割り引かれ、満たしていない場合は拠出金が割り増しになる。エコ・オーガニズムの拠出金割引・割増率は、製品の税抜き販売価格の20%を上・下限とする。

各エコ・オーガニズムは、生産者、地方自治体代表、環境・消費者団体、リサイクル業者をメンバーとする利害関係者委員会を設置する(第62条)。同委員会は使命を達成するため、エコ・オーガニズムが保持する情報にアクセスすることができ、エコ・オーガニズムに対しエコデザイン(環境に配慮した商品設計)を奨励することもできる。

生産者は、自社または他社と共同で、再生材料の使用増加を目指す5カ年行動計画を策定し、エコ・オーガニズムに提出する必要がある(第72条)。エコ・オーガニズムもまた、全加盟企業の共通の5カ年行動計画を策定可能だ。生産者はこれらの計画を利害関係者委員会に提出後、その要約を公開する。

循環経済法により、エコ・オーガニズムの役割は拡大されたが、同時に結果に対する責任も求められる。政府からの認可は、6年ごとに更新される。政府はエコ・オーガニズムに対し、2021年から、再利用、修理、エコデザインなどの数値目標を設けた。その目標に達しない場合は、罰金や認可の一時停止、取り消しを含めた制裁措置の対象となり得る(第61条)。

同法には、政府が特定の製品や資材投入の条件に再生材料の最低含有率を規定することができる措置も盛られた(第61条)。

企業の取り組み

企業の循環経済への取り組みの1つに、官民の間で2019年2月に締結された「プラスチック包装に関する国家協定PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(1.35MB)」がある。ダノン、ロレアル、カルフールなどの製造・流通業者13社、2つの環境関連非営利団体、このほかフランス政府が協定を締結した企業は、次に示す1~4に取り組むこととされた。

  1. 削減対策を講じる必要がある、問題があるまたは不要な包装をリスト化する。
  2. プラスチック包装のリサイクル率60%を、企業全体として2022年までに達成する。
  3. 100%再使用、リサイクルまたは堆肥化可能な包装のエコデザイン(環境に配慮した設計)を2025年までに導入する。
  4. プラスチック汚染の課題について市民のための啓発や教育活動を実施する。
    再生プラスチックの含有率を含めた取り組みの進捗状況は、毎年公開する。

協定に署名した企業はまた、(1)2022年までに家庭用、商業用、工業用の包装について、2022年までにポリ塩化ビニル(PVC)、2025年までに発泡ポリスチレンの使用を停止する、(2)2025年までに、新たな商業モデル(これらの影響を受けない製品群の再使用や包装なしでの販売など)を試験する、加えて可能な場合はその開発を進める、(3)2025年までに平均30%の再生プラスチックを包装に使用する、(4)1年あたり3つの革新的な解決策を見いだし、試験し、可能であれば工業化する、ことを誓約した。

「プラスチック包装の国家協定」に署名したダノンは、循環経済に積極的に取り組んでいる企業だ。ダノンの包装でリサイクル・再使用・堆肥化が可能なのは、2017年時点で86%(プラスチック包装の77%)だが、2025年までに100%に引き上げる意向を示す。そのためにダノンは、ネスレウォーターズ(Nestlé Waters)、米国のスタートアップ企業オリジン・マテリアルズ(Origine Materials)と提携して、100%持続可能なバイオベースのペットボトルを開発するプロジェクトを2017年に立ち上げた。飲料用ペットボトルのバイオベース原材料(使用済みの段ボールやおがくずなどを活用)の率を、2020年に75%、2021年末までに95%に引き上げる。


注:
エコ・オーガニズムは、拡大生産者責任の枠組みの中で、国の認可を得て、リサイクルや廃棄物の管理を行う非営利団体。

変更履歴
文章中に誤りがありましたので、次のように訂正いたしました。(2020年7月29日)
(誤)修理の可能性の指標(1~10まで)の表示
(正)修理の可能性の指標(0~10まで)の表示
(誤)情報の表示を義務付ける(第19条、第130条)。
(正)情報の表示を義務付ける(第16条、第130条)。
執筆者紹介
ジェトロ・パリ事務所
奥山 直子(おくやま なおこ)
1985年からジェトロ・パリ事務所勤務。フランスの規制関連の調査を担当

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