特集:中堅・中小企業の米国ビジネス先行事例から学ぶ海外市場に特化した商品の開発・改良が有効

2019年3月8日

米国への輸出を目指す中堅・中小企業が直面するのは、何を輸出するのか、米国でどうやって売るのか、といった悩みだろう。今回は、ジェトロ事業の利用企業50社を対象に調査した結果をもとに、輸出する商品の開発・価格設定・販売先の選定・PR方法などについて、先行企業が取ったベストプラクティスを紹介する。ヒアリングした企業の声からは、各企業の状況に合わせて戦略的な選択を重ねていることがうかがえた。

海外向けの商品開発が輸出拡大のカギ

米国で自社商品の市場を開拓・拡大するには、米国の顧客が望む商品を準備することがカギの1つとなる。今回インタビューした50社のうち、約7割に当たる34社が「国内向け商品とは別に、海外向け商品やサービスの改良・開発をした」と回答した。海外売上比率が30%以上の企業に限ってみると、その割合は75.0%にのぼり、海外売上比率が高い企業のほうが、海外向けに特化した商品の用意がある傾向があった(図1参照)。

どのような商品開発・改良をしたのか各企業から聞き取ったところ、「米国の顧客の要望に合わせ、製品の食感を変えた 」(食品製造業・北海道ほか)、「アジア系の顧客以外にも販売の裾野を広げるため、米国人に訴求するパッケージデザインを開発した 」(食品製造業・長野)、「機器の操作のしやすさを重視し、タッチパネルを採用した」(機械器具製造業・東京)といった事例があった。国内向けと同じ商品を輸出していると回答した企業からは、海外向けの商品開発をしたいが、「まだ米国ユーザーのニーズくみ取りと企画化ができていない」(機械器具製造業・静岡)という声も聞かれた。

海外向けの商品開発に国や地方自治体の補助金を活用したと話した企業(食品製造業・北海道)もあった。都道府県によっては商品開発に必要な試験や分析を委託できる機関を持っている場合がある。これから商品開発に取り組む企業は、コスト負担削減のためにも、こういった補助制度を利用できないか検討するのも一案だ。

図1:国内向け商品とは別に、海外向け商品やサービスの改良・開発をした企業の割合
全体では68.0%、海外売上比率が30%以上の企業に限ると75.0%、海外売上比率が30%未満の企業に限ると66.7%となった。

出所:ジェトロ作成

食品製造業の7割がISOやHACCPの認証を取得

食品製造業では、約7割がISOやHACCPなど米国で通用する規格の認定を受けたと回答した(図2参照)。認定を受けた規格としてはHACCP、FSSC22000、ISO9001、ISO14001、ISO22000などが挙げられた。今回のインタビュー先でオーガニック製品を輸出している企業は3社あり、いずれの製品も有機JASまたは米国USDAのオーガニック認証(NOP)を受けていた(酒類については原料の認証)。有機JASとNOPには同等性互換認証があるため、有機JASを取得している企業にとって「米国はEUなどよりも輸出しやすい」(食品製造業・徳島)という声もあった。

米国へ食肉(加工品含む)、水産物(加工品含む)、ジュースなどの飲料を輸出する際は、HACCPに対応することが義務化されている。輸出準備の段階で対応が必要となる。

図2:米国で通用する規格の認定を受けた企業の割合
全体では48.0%だったが、食品製造業に限ると69.2%となった。

出所:ジェトロ作成

小売価格:6割が現地競合品の価格やバイヤーの意見を参考に決定

初輸出に当たり、値決めは容易ではない。解決策として、約6割の企業が現地競合品の価格やバイヤーの意見を参考に小売価格を決定したと回答した。そのうち、商社を利用している一部の企業は、小売価格決定は商社に任せていると話しているが、販売戦略を立てるうえで、小売価格は重要な要素となる。商社を利用している場合でも、現地での小売価格や競合品の価格を把握することは重要だ。

販売先は製品の特長や米国市場に合わせて適切な選択を

販売先は、企業向けとの回答が4割、店舗向けが同じく4割、その他2割という結果になった(図3参照)。その他には、米国の顧客へ越境ECで直接販売するDtoCという回答(繊維工業・大阪ほか)もあった。

国内での業態がBtoCの企業は、米国でも小売店舗向けに販売する企業が過半数だが、一部の企業は国内と米国の市場の違いをにらんで、あえて別の販路を使う場合もある。日本酒、焼酎のメーカーからは、まだ日本食になじみが薄い米国では、小売店よりもレストラン向けに販売し、飲み方や食べ物との組み合わせといった文化ごと伝える必要があるという意見も聞かれ、日本国内と同様に新しい製品の認知を上げる取り組みが見られた。

国内では主に企業向けに販売するBtoBの業態をとっている企業の中には、米国ではよりターゲットを絞り、大学や研究機関向けに販売する例もある。国内で電気機器メーカーなどに微細な作業をサポートする機器を販売する企業は、「米国のメーカーは日本ほど高い精度は求めない」(機械器具製造業・静岡)として、精密な作業を要する実験を行う大学、研究機関にターゲットを絞っている。

米国のEC売上高は、2018年第3四半期(7~9月)に1,309億ドルに達し、小売売上高の9.8%を占めている。EC売上割合は年々上昇して大きな市場を形成しつつある。輸出する商品の形態や、ターゲット層によっては、ECでの販売も視野に入るだろう。

図3:重点を置いている販売先
企業向けが38.0%、小規模店舗が24.0%、大規模小売店舗が16.0%、その他が22.0%だった。その他には、米国アマゾン、大学・研究所、個人バイヤーなどがふくまれる。

出所:ジェトロ作成

ディストリビューター経由での輸出が約半数

販売経路としては、ディストリビューター経由が最も多く約半数に達した。ディストリビューター経由と回答した企業のうち、76%が商社(パートナー)を利用しているとし、ディストリビューターの中で商社が占める割合は高い。ただし、「商社任せでは売れない。現地での営業同行などメーカー側も動かなければ、売り上げは増えない」(飲料製造業・茨城)と話す企業もあった。いずれの販売経路を利用するにしても、メーカーの立場で現地での営業を積極的に展開することが米国での売上増のカギの1つと言えよう。

8割が米国の展示会に出展

取引先を開拓する手段として、約8割の企業が米国での展示会・商談会に出展したことがあると回答した。また、約半数が展示会・商談会に継続して3年以上参加したと回答している。市場調査という意味でも、米国現地での展示会出展の意義は大きく、輸出準備中の企業にとってはバイヤーの意見を直接聞ける貴重な場となる。

Natural Products Expo(オーガニック食品)やMD&M(医療機器)など、特定の分野に特化した展示会を選んで出展したという企業もあった。数多い展示会の中で、自社製品の特性に合った展示会を選択することが商流開拓の手がかりとなる。「現在の顧客の多くは、展示会から成約に至った」と話す機械メーカー(静岡)は、世界最大級の理化学・分析機器見本市ピットコン(PITTCON)への出展経験がある。

7割超が英語ウェブサイトを作成

英語版のウェブサイトを輸出準備段階で作成した企業は約46%にとどまったが、従業員が20人未満の比較的小規模な企業では約67%が準備段階ですでに作成していたと回答した(図4参照)。英語版ウェブサイトの作成は、米国へ渡航しての展示会出展といった費用がかかるPR活動と比較すると、安価で対応できるため、小規模な企業でも手を付けやすい分野とみられる。

一方、現在英語版ウェブサイトを公開している企業は72%にのぼった。輸出開始後に英語サイトの必要性を認識し、作成した企業もある。

図4:英語版ウェブサイトを作成した企業の割合

出所:ジェトロ作成

販売先別でみると、企業向けに販売している企業は84.2%が現在英語版ウェブサイトを公開しているのに対し、店舗向け販売の企業は50%にとどまった。企業向け販売の企業からは、取引先が自社の英語版ウェブサイトを確認することもあるため、信用を高めるために必須と話している。店舗向けに販売している企業には、特に食品製造業で日系商社を利用しているケースも含まれることから、英語版ウェブサイト作成率が低くなった一因とみられる。その他へ販売している企業には、ECで顧客へ直接販売する企業も含まれ、91%と高い割合を示した(図5参照)。

図5:現在英語版ウェブサイトが公開されている企業の割合
現在、英語版ウェブサイトを公開している企業の割合を、重点を置いている販売先別にみると、企業向けに重点をおいている企業は84.2%、小売店舗向けに重点をおいている企業は50.0%、その他の販売先に重点をおいている企業は90.9%だった。

出所:ジェトロ作成

SNSは最適なサービスの選択を

SNSによるPRは、約3割の企業が実施していると回答した。

英語でのSNS発信について、「やりたいが、管理できる人材がいない」「開設したが、なかなか続かない」という声も聞かれた。自社でSNSを発信する方法のほかにも、米国のインフルエンサーとスポンサー契約を結び、本人のSNSで商品を紹介してもらうという方法も、SNS活用方法の一案である。

執筆者紹介
ジェトロ海外調査部米州課
飯田 桃子(いいだ ももこ)
2014年茨城県庁入庁。2018年からジェトロに出向し、海外調査部米州課勤務。

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