特集:中堅・中小企業の米国ビジネス先行事例から学ぶ外部リソースの有効活用がカギ

2019年3月8日

米国輸出の第3フェーズである事業立ち上げ段階については、取引先との交渉方法や取引条件、決済方法、外部リソースの活用などについて確認した。取引先との交渉では、ほとんどすべての企業で自社の社員が行っていた。取引条件はFOBが3割超で最多だったが、国内の仲介業者が指定する国内倉庫渡しも約3割に達した。契約関連では、基礎契約の見直し期間を設けていない企業が約4分の3を占め、契約書を締結していない事例も多く聞かれた。事業立ち上げ段階では96%の企業が外部リソースを活用しており、公的機関の専門家支援事業などを活用することで、リスクやコストを軽減することが可能だ。

取引先との交渉を自社の社員が行った割合は94%

取引先との交渉を自社の社員が行ったかを聞いたところ、自社の社員が行っていた割合は94.0%に達し、50社中47社が自社で実施していた。外国企業との取引では、商談の場での意思決定を求められることが多く、また、国内取引に比べてより詳細な条件を詰めていく必要があるので、自社で行う割合が高いとみられる。交渉の過程で一番大変だった点を聞いてみると、「取引条件の設定」は2割弱(18.0%)、価格交渉は1割強(12.0%)にとどまる一方で、「その他」が7割を占めた。その他で挙がった内容を一部紹介すると、「社長の思いが商社に伝わらない時がある」(飲料・たばこ・飼料製造業)、「メールでの連絡で微妙なニュアンス伝わらず、とげとげしい言い方に感じられてしまうときがある」といったコミュニケーション上の課題や、「米国食品安全強化法(FSMA)対応やリサイクル表示対応」「商社はある程度売れ行きが見込めないと登録に動いてくれない」「ハードリカー・ライセンスの取得が必要になること」など、食品関連の法制度対応などで苦労した事例が多く挙がった。

取引先が提示してくる条件では、「価格の値下げ」が57.6%、「サンプル」の提供が51.5%と半数を超えた(図1参照)。また、取引条件をみると、「FOB(本船渡し)」が31.9%で最多だった(図2参照)。食品メーカーなどは、国内商社や卸売業者と取引しているケースが多く、仲介業者が指定する国内倉庫渡しが29.8%で続き、「CIF(運賃、保険料込み)」が、21.3%だった。「その他」(27.7%)の条件としては、「DDP(関税込み持ち込み渡し)」や「EXW(工場渡し)」が複数あった。取引条件は、交渉相手との力関係で決まってくるかもしれないが、輸出者側の責任範囲が日本国内に限定されるEXWやFCA(運送人渡し)などを交渉時に提示することを勧める。

図1:取引先が提示してくる条件にはどのようなものがあったか
33社が複数回答し、「価格の値下げ」が57.6%、「サンプル」の提供が51.5%と半数を超えた。続いて「特定の決済方法の指定」が30.3%、「その他」は15.2%だった。

出所:ジェトロ

図2:どの取引条件としているか
47社が複数回答し、「FOB(本船渡し)」が31.9%で最多だった。「国内倉庫渡し」が29.8%で続き、「CIF(運賃、保険料込み)」は21.3%、「FCA(運送人渡し)」は8.5%、「その他」は27.7%だった。

出所:ジェトロ

約3割の企業が独占販売権をパートナーに付与

米国のパートナー企業に独占権を与えているかを聞いたところ、「はい」の割合は約3分の1(34.1%)だった。契約交渉の場でパートナー候補企業から「製品を独占的に販売したい」との要請を受けることが多いと思われる。独占販売権を与えることによって、パートナー企業が販売促進を積極的に行ってくれる、人的リソースを投入してくれる、といったメリットがある。一方、自社から他の販売店に直接販売することができなくなり、パートナーの売上高が伸びないと、販売機会を狭めてしまうというデメリットもあるので、パートナー候補が独占契約を結ぶのに最適な相手なのかを見極め、取引額に応じて段階的に独占契約に切り替えたり、独占契約を締結する条件を定めたりするなどの工夫が望まれる。

7割超の企業は契約の見直し期間を設定せず

基礎調査から契約に要した期間は、1年未満が47.4%、1年から2年未満が34.2%で、2年未満で契約締結に至った割合は8割を超えた(図3参照)。決済方法については、送金決済が85.4%を占めた(図4参照)。荷為替手形決済は8.3%(3社)にとどまったが、初めての取引など、相手の信用力が分からない場合には、信用状付荷為替手形決済で銀行を取引の間に入れることで、リスクを軽減することが可能だ。

図3:基礎調査開始から契約までに、どれくらいの期間を要したか。
38社が回答し、「1年未満」が47.4%、「1年~2年未満」が34.2%、「2年~3年未満」は10.5%、「3年~4年未満」は5.3%、「4年~5年未満」は2.6%だった。

出所:ジェトロ

図4:どの決済方法を使用しているか
48社が複数回答し、「送金決済」が85.4%を占め、「荷為替手形決済」は8.3%、「ネッティング」は2.1%、「その他」は18.8%だった。

出所:ジェトロ

基礎契約の見直し期間については、設けていない企業が約4分の3(73.3%)を占めており、契約書を締結していない事例も多く聞かれた(図5参照)。パートナーとの間で何らかのトラブルが発生したときに契約書がよりどころとなるので、契約書は極力締結するとともに、万が一紛争が発生する場合に備えて、仲裁条項を定めておくことを勧める。

図5:何年ごとに基礎契約の見直し期間を設定したか
45社が回答し、「1年」が15.6%、「3年以内」が8.9%、「5年超」は2.2%で、「なし」は73.3%に達した。

出所:ジェトロ

回答企業の海外売上高比率を聞いたところ、10%未満が57%、10~30%未満が26%で、大半の企業がこれから海外売上高比率を引き上げようとしている状況だ(表1参照)。また、海外売上高比率に占める米国売上高比率は、10%未満が28.9%、90%以上が20%と続いた。回答企業の海外売上高比率と米国売上高比率の中央値を試算すると、平均海外売上高比率は5.0%、海外売上高に占める米国売上高比率は40.0%、売り上げ全体に占める米国売上高比率は3.0%だった。

表1:海外売上高比率と海外売上高比率に占める米国売上高比率

企業回答結果(注1)(単位:社、%)
比率 海外売上高比率 海外売上高に占める
米国売上高比率
社数 割合 社数 割合
10%未満 27 57.4 13 28.9
10%以上30%未満 12 25.5 8 17.8
30%以上50%未満 3 6.4 8 17.8
50%以上70%未満 4 8.5 5 11.1
70%以上90%未満 0 0.0 2 4.4
90%以上 1 2.1 9 20.0
合計 47 100.0 45 100.0
回答結果の中央値試算(注2)
海外売上高比率 海外売上高に占める米国売上高比率
5.0 40.0

注1:企業からは、記載した各レンジのいずれに当たるかを聴取。
注2:中央値は、各レンジの中間値を用いて試算。
出所:ジェトロ

事業立ち上げ段階では96%の企業が外部リソースを活用

最後に、海外輸出の各フェーズでの外部リソースの活用状況を聞いたところ、検討段階では80%、事業立ち上げ段階では96%が活用していた(表2参照)。公的機関では、ジェトロや地方自治体のほか、中小企業基盤整備機構などで専門家の支援を行っている。海外企業との慣れない交渉で経験の豊富な専門家や弁護士に同席してもらったり、専門家などに相談しながら交渉を進めることで、交渉で不利益が生じないようにしたり、法的なリスクを軽減したりすることが可能だ。外部リソースを有効に活用し、リスクやコストを軽減しながら、米国輸出に取り組んでもらいたい。

表2:(1)~(3)の各フェーズで利用した外部リソースは何か(単位:%)(n=50, 複数回答)
フェーズ 外部リソースの
利用割合
ジェトロ 地方自治体 地方銀行 同業他社 その他
(1)検討段階 80.0 66.0 20.0 14.0 12.0 22.0
(2)意思決定段階 76.0 64.0 26.0 12.0 8.0 26.0
(3)事業立ち上げ段階 96.0 88.0 32.0 16.0 10.0 28.0

出所:ジェトロ

執筆者紹介
ジェトロ海外調査部米州課 課長代理
中溝 丘(なかみぞ たかし)
1997年、ジェトロ入構。海外調査部、国際交流部、経済産業省通商政策局(出向)、ジェトロ・ヒューストン事務所、産業技術部、企画部、経済産業省貿易経済協力局(出向)、ジェトロ・ヒューストン事務所長、サービス産業部などを経て、2016年4月より現職。

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