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特集:どうする?世界のプラスチック輸入規制は厳格も、国内規制の運用には課題(中国)

2019年1月10日

世界的な環境意識の高まりから近年、世界中で脱プラスチックの動きが巻き起こっている。欧州やアジア、アフリカなどのさまざまな国がプラスチック製の買い物袋の有料化や利用規制、プラスチックの生産規制、廃プラスチックなどの輸入規制を行っている。

中国もこうした動きと無縁ではない。本稿では、中国の廃プラスチックに関する輸入規制、中国国内のプラスチック製品の利用規制とその効果などについて、現地メディアの報道を踏まえて報告する。

2019年には工業由来の廃プラスチックも輸入禁止に

2017年7月、国務院は「海外ごみの輸入禁止と固形廃棄物輸入管理制度改革の実施計画外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます 」(以下、「計画」)を発布、同年8月に公開された新たな輸入ごみ管理リスト(注1)に基づき、主に生活由来の廃プラスチック8品目を含む24品目が同12月31日から輸入禁止となった(2018年4月11日記事参照)。

さらに2018年4月19日には、生態環境部(注2)など4部門が共同で「『輸入廃棄物管理リスト』の調整に関する公告外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます 」を発表した。同12月31日と2019年12月31日の2回に分けて、それぞれ16品目ずつが輸入禁止となる。この公告を受け、工業由来の廃プラスチックも2018年12月31日から輸入禁止となる(2018年4月23日記事参照)。

資源ごみの輸入禁止措置や密輸取り締まりは厳格に実施されており(2018年5月30日記事参照)、それは貿易統計からも読み取れる。多くの品目の輸入が禁止された廃プラスチックの輸入量は、2017年末までは10万トン以上だったが、2018年1月には約5,000トンにまで激減している(図1参照)。

図1:中国の廃プラスチック(HS3915)輸入量
2017年末までは10万トン以上であったが、2018年1月には約5,000トンにまで激減している。
出所:
グローバル・トレード・アトラスを基にジェトロ作成

日本企業にも影響

「計画」が発表される前は、世界各国からプラスチックの4割以上を中国が受け入れていたので、各国で大きな影響が出た(図2参照)。各種報道によると、中国に輸出されていたプラスチックごみは行き場をなくし、工場や港などに山積みされたり、処理施設が処理能力の限界を超えてしまって受け入れを拒否されたりする事態が発生している。

図2:輸入ベースで見た中国の廃プラスチック(HS3915)受け入れ量と、世界全体の廃プラスチック受け入れ量の合計に占める中国の廃プラスチック受け入れ量構成比
2017年まで中国は世界各国からのプラスチックの4割以上を受け入れていた。
出所:
グローバル・トレード・アトラスを基にジェトロ作成

日本も例外ではない。「計画」発表の前年である2016年の貿易統計を見ると、日本は約150万トンの廃プラスチックを世界に輸出し、うち52.6%に当たる約80万トンが中国向けで、日本にとって最大の輸出先だった(図3参照)。その中国が輸入を停止したため、日本国内でも多くの廃プラスチックが行き場をなくした。報道などによると、廃プラスチックを輸出する企業に大きな影響を及ぼし、事業戦略の見直しや経営破綻を迫られた企業も出てきている。

図3:2016年日本の廃プラスチック(HS3915)輸出先
「計画」が発表される前年である2016年の貿易統計を見ると、日本は約150万トンの廃プラスチックを世界に輸出しており、そのうちの52.6%にあたる約80万トンが中国に輸出されていた。
出所:
グローバル・トレード・アトラスを基にジェトロ作成

2018年10月、環境省は「外国政府による廃棄物の輸入規制等に係る影響等に関する調査結果外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます 」という報告書を発表した。それによると、自治体の24.8%、廃棄物の中間処理業者の35.2%が、廃棄物の保管量が増加傾向にあると回答した。また、中間処理業者の56.0%、最終処分業者の25.0%が廃棄物の処理量が増加したと回答している。ほかにも、処理業者のうち34.9%が受け入れ制限を行っているか、検討中だと回答した。この調査を踏まえて、環境省は「今後、廃プラスチック類の適正処理に支障が生じたり、不適正処理事案が発生したりする懸念がある」と総括している。

中国国内の規制は存在するも、ECなどまでカバーできず

次に、中国国内のプラスチック製品利用に関する規制について、報道などによる評価を踏まえて紹介する。

国連環境計画(UNEP)によると、中国では2008年以前、毎日30億枚ものプラスチックバッグが使用され、毎年300万トンがごみとして出ていた。

こうした状況を受け、国務院は2008年3月、「プラスチック製買い物袋の生産・販売・使用を制限する通知」を発布した。この通知は「プラスチック制限令」とも呼ばれている。これにより、厚さ0.025ミリ以下のプラスチック製買い物袋の生産・販売・使用が禁止されたほか、2008年6月からは小売店でプラスチック製買い物袋を原則有料で提供することが義務付けられ、無料提供が禁止された。価格は統一されていないが、2018年6月7日付の「中国新聞網」によると、1枚当たり0.2~1元(約3.2円~16円、1元=約16円)程度だという。

このように、中国でもプラスチック製買い物袋に対する規制が存在するが、各種報道などを見ると、これらの規制は劇的な効果を上げているとは言い難い。

「新華社通信」の2018年6月2日付の記事では、大型スーパーマーケットやレストランで「プラスチック制限令」は浸透していると評価している一方、小型の店舗や市場などまで浸透しきっていないと紹介し、「プラスチック制限令」の市場への影響はいまだに限定的だとした。また、同記事は、「プラスチック制限令」や幾つかの地域で試行されている「プラスチック禁止令」は完全に浸透・実行されているとは言えないとした上で、民衆の使用習慣の改善に期待するともしている。

前述の「中国新聞網」の記事は、2008年の施行から2016年までの8年間で合計700億枚ものビニール袋が節約されたなどとしており、「プラスチック制限令」の一定の効果を認めている。しかし、電子商取引(EC)などの新業態の発展に伴い、包装に使用されるプラスチック製品の消費量も急速に増加しているという。

UNEPも、「プラスチック制限令」によって、中国のスーパーマーケットでのプラスチック製買い物袋の使用量は60~80%減少したと効果を認める一方、食料品店や小規模な小売店では、効果的に実行されていないとしている。

独自のプラスチック規制を打ち出している地域もある。例えば中国東北部の吉林省では、2014年3月に「吉林省での使い捨て非分解性プラスチック製買い物袋、プラスチック製食器生産・販売・提供を禁止する規定」(以下、「吉林省プラスチック禁止令」)が発表され、2015年1月から施行された。これにより、使い捨ての非分解性プラスチック製の買い物袋や食器の生産・販売・使用が原則禁止され、違反した者には最大3万元の罰金が科せられることとなった。「吉林省プラスチック禁止令」は「プラスチック制限令」よりも厳格な規制といえる。

とはいえ、「吉林省プラスチック禁止令」も劇的な効果を上げていないのが現状だ。「工人日報」は2017年11月24日付の記事で、2016年末までに分解性プラスチック製の買い物袋の生産能力が6万トンに達したことや、大型スーパーマーケットで分解性プラスチック製の買い物袋への代替率が90%に上ったことなどを挙げ、「吉林省プラスチック禁止令」の一定の効果を認めている。一方、面積の広い吉林省全体に法を浸透させるのは困難だとし、農産物市場や食料雑貨店などではやはり浸透していないという。また、ECなどの急速な発展も「吉林省プラスチック禁止令」の盲点だとしている。UNEPも同禁止法の効果を限定的だと評価している。

「プラスチック制限令」も「吉林省プラスチック禁止令」も、大型スーパーなどでは効果を上げているものの、小型店舗や市場、そして近年急速に拡大しているECなどまではカバーしきれていないのが現状のようだ。特に、ECは近年急速に取引規模が拡大しており、2017年の中国のEC取引規模は前年比24.77%増の28兆6,600億元に上った(図4参照)。

図4:中国のEC取引規模
特に、ECは近年急速に取引規模が拡大しており、2017年の中国のEC取引規模は前年比24.77%増の28兆6,600億元に上った。
出所:
2017年度中国電子商務市場データ監測報告、2011年度中国電子商務市場データ監測報告

この額は、「プラスチック制限令」が発表された2008年の約9倍、「吉林省プラスチック禁止令」が出された2014年の約2倍の規模である。プラスチック規制を徹底するには、ECなども考慮した規制が必要といえるだろう。

輸出を前提としない対応策が重要

中国でも環境意識が高まっており、中国政府は環境問題に対して積極的な動きを見せている。現在、廃プラスチックや資源ごみ以外の分野でも、さまざまな規制を打ち出しており、今後もこのような動きが続くと思われる(2018年1月29日記事参照)。

中国以外の東アジア地域も同様で、各地で次の表のようなプラスチックに関連する輸入規制や利用規制が打ち出されている。

表:中国以外の東アジアの国・地域におけるプラスチック関連の規制
国・地域 規制
香港 2009年、チェーンの大型スーパーマーケットやコンビニ約3,500店舗で、2015年にはすべての店舗でプラスチック製のビニール袋を原則有料とした。価格は0.5香港ドル(約7円、1香港ドル=約14円)で、違反した場合、2,000香港ドルの罰金が科せられる。
台湾 2018年10月から質の悪い廃プラスチックの輸入を制限する。背景には、中国大陸の輸入制限に伴い、資源ごみの輸入量が増加したことがある。
韓国 2018年末から大型スーパーを含む大規模店舗、スーパーでのレジ袋配布が全面禁止となる。
大規模店舗とスーパーでは現在もレジ袋は有料だが、これにより使用自体が禁止される。ベーカリーや洋菓子店ではレジ袋の無料配布が禁止され、有料化される。
モンゴル 国内におけるプラスチック製レジ袋の販売・使用を2019年3月1日から禁止することを閣議決定した。スーパーマーケットなどで使用される使い捨てのプラスチック製レジ袋を禁止対象としており、税関庁および専門検査庁が監視に当たる。
禁止対象となる使い捨てのプラスチック製レジ袋の詳細な規格や違反した場合の罰則についてはまだ発表されていない。
出所:
各種報道などよりジェトロ作成

世界的に巻き起こる脱プラスチックの動きの中で、中国やその周辺国・地域がどのような規制を展開するのか、今後の動向を注目していくとともに、自社の廃プラスチック排出量の削減や処理能力の拡大など、輸出を前提としない対応策を検討していく必要があるだろう。


注1:
リストは「輸入禁止固形廃棄物リストPDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(214KB) 」「輸入制限再利用可能固形廃棄物リストPDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(164KB) 」「輸入非制限再利用可能固形廃棄物リストPDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(136KB) 」の3つから成り、いずれも生態環境部のウェブサイト外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます で閲覧できる。
注2:
2018年3月の機構改革で新設された部署。これに伴い、環境保護部は廃止された。
執筆者紹介
ジェトロ海外調査部中国北アジア課
楢橋 広基(ならはし ひろき)
2017年4月、ジェトロ入構。同月より現職。

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