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迷える資源ごみはどこへ行く(中国)
一部資源ごみ輸入禁止を受けて

2018年4月11日

2017年7月27日、国務院により「海外ごみの輸入禁止と固形廃棄物輸入管理制度改革の実施計画外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます 」が発表され、同年12月31日から施行された。これにより、環境への悪影響が大きい資源ごみの中国への輸入が禁止された。2016年の日本の貿易統計をみると、廃プラスチック輸出の約5割、古紙輸出は約7割が中国向けとなっており、今回の中国による輸入禁止は日本の再生資源輸出にも大きな影響を与えることが考えられる。

このレポートでは、最大の受け入れ国であった中国が輸入を禁止した後の、資源ごみの行き先を貿易統計などから考える。

今後、段階的に固形廃棄物の輸出が不可能に

「海外ごみの輸入禁止と固形廃棄物輸入管理制度改革の実施計画」(以下、「計画」)は、5章18項目からなり、資源ごみ輸入の管理体制強化や密輸取り締まりの厳格化について記載されたものである。環境への影響が大きく、国民の健康に大きな影響を与える固形廃棄物の輸入を2017年末から全面禁止し、それ以外についても、国内の資源ごみで代替可能な固形廃棄物の輸入を2019年末までに段階的に縮小するとしている。

2017年8月16日には、環境保護部など5部門が新たな輸入ごみ管理リストを公開した。「輸入禁止固形廃棄物リストPDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(214KB) 」「輸入制限再利用可能固形廃棄物リストPDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(164KB) 」「輸入非制限再利用可能固形廃棄物リストPDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(136KB) 」(注1)が改定され、廃プラスチック8品目、未選別古紙1品目、繊維系廃棄物11品目、バナジウムスラグ4品目の計4種類24品目が「輸入制限再利用可能固形廃棄物リスト」から「輸入禁止固形廃棄物リスト」に移された。同リストは12月31日から施行された。

この「計画」の背景には、近年の中国における環境意識の高まりがあると思われる。2018年3月に行われた全国人民代表大会でも、李克強総理が政府活動報告の中で「外国からの固形廃棄物の密輸を厳しく取り締まる」と、外国からの廃棄物輸入に言及している。

現在、一部の固形廃棄物については中国に輸出できるが、「計画」が着実に実行された場合、全ての固形廃棄物が輸出できなくなり、中国という最大の固形廃棄物市場が消滅する可能性がある。

「計画」は着実に実行中

「計画」が発表される前年の2016年の中国の貿易統計によると、2016年の中国の廃プラスチックの輸入量は734万7,200トンで、そのうち日本からの輸入が約84万2,000トンと約1割を占め、香港に次ぐ輸入先となっていた。また、同年の古紙輸入量は284万9,841トンで、そのうち日本からは約28万4,310トンとこちらも約1割を占め、米国、英国に次ぐ輸入先となっている。廃プラスチック(HS3915)と古紙(HS4707)について中国の貿易統計を見ると、「計画」発表後、輸入量は減少している。多くの品目の輸入が禁止された廃プラスチックの輸入量は、2018年1月に激減した。

図1:中国の廃プラスチック(HS3915)輸入量
中国の廃プラスチック(HS3915)の輸入量は2017年8月以降減少しており、「計画」が施行された2018年1月には5,000トンまで激減した。
出所:
Global Trade Atlasより作成
図2:中国の古紙(HS4707)輸入量
中国の古紙(HS4707)の輸入量は2017年8月以降減少傾向にある。
出所:
Global Trade Atlasより作成

日本や米国の貿易統計からも、「計画」の影響がうかがえる。日本の貿易統計では、2016年の廃プラスチック輸出の約5割、古紙輸出の約7割が中国向けであった。日米両国とも廃プラスチックの最大の輸出先は中国で、「計画」発表後は輸出量が減少した。特に日本の廃プラスチック輸出量は2018年1月、わずか2,000トンにまで減少した。

図3:日本の対中廃プラスチック(HS3915)輸出量
日本の対中廃プラスチック(HS3915)輸出量は、2017年8月以降減少しており、「計画」が施行された2018年1月には2,000トンまで激減した。
出所:
Global Trade Atlasより作成
図4:米国の対中廃プラスチック(HS3915)輸出量
米国の対中廃プラスチック(HS3915)輸出量は、2017年8月以降減少している。
出所:
Global Trade Atlasより作成

「計画」では、未分類の古紙の輸入は禁止されているが、他の古紙については輸入制限が課せられているものの全面禁止されているわけではないため、両国ともいまだに中国が最大の輸出先となっている。しかし、中国への輸出量は両品目共に減少傾向にあり、今後もこの傾向は続くと思われる。仮に古紙の輸入でも廃プラスチックのように禁止される品目が増えた場合、日本や米国の輸出量が激減することも考えられる。

図5:日本の対中古紙(HS4707)輸出量
2017年8月以降日本の対中古紙(HS4707)輸出量は、それ以前と比較して大きく減少している。
出所:
Global Trade Atlasより作成
図6:米国の対中古紙(HS4707)輸出量
2017年8月以降米国の対中古紙(HS4707)輸出量は、それ以前と比較して減少している。
出所:
Global Trade Atlasより作成

行き場をなくした資源ごみは東南アジアを目指す

では、中国へ輸出できなくなった資源ごみは、どこへ向かうのだろうか。ここでは、廃プラスチックを中心に分析する。

各種報道や貿易統計を見ると、輸出先としてタイやベトナム、マレーシアといった東南アジアの国々が資源ごみの輸出先として注目を集めている。

実際に、東南アジアで廃プラスチックを含めた資源ごみの輸入量は急増している。国際リサイクル機関(本部:ベルギー)によると、2017年のベトナムによる資源ごみ輸入量は前年比62%増の50~55万トンになると予測されている。タイは前年の2.2倍、インドネシアは前年比65%増である(ロイター通信、2018年1月16日付)。また、マレーシアの貿易統計でも、2017年の廃プラスチックの輸入量は前年同期比91.1%増の55万トンと急増している。

資源ごみの輸出元国の統計を見ても、輸出先として東南アジアが台頭している。

2017年の日本の廃プラスチック輸出量は、ベトナム向けなどが大きく伸びた。 ベトナムへの輸出量は前年比92.4%増の12万6,219トンとなり、2016年に輸出先3位であった台湾を抜き、日本にとって第3位の輸出先に浮上した。他にも、マレーシアが前年比2.3倍の7万5,435トン、タイが2.3倍の5万8,160トン、インドネシアが6.6倍の2,700トン、フィリピンが3.7倍の2,139トン、シンガポールが3.2倍の2,113トンと、東南アジア各国への輸出が大幅に増加した。台湾や韓国向け輸出も増加しているが、東南アジアの国ほどの伸び幅は見られない。なお、東南アジアのほかには、インド向けも2.1倍の7,526トンと、大幅に増加した。

図7:日本による廃プラスチック(HS3915)輸出量(主要国・地域向け)
日本の廃プラスチック(HS3915)の輸出先として、東南アジア諸国が大きく伸びている。
出所:
Global Trade Atlasより作成

米国でも同様の傾向がみられる。米国の2017年の廃プラスチック輸出において、最大の輸出先は中国、その次は香港であったが、2016年に5位であったベトナムが前年比2.1倍の13 万7,195トンとなり、カナダ、インドを抜いて3位に浮上した。他にも、インドネシアは16.5%減の2万8,729トンと減少したが、マレーシアが3.1倍の11万9,112トン、タイが5.0倍の3万2,680トンと大きく増加した。インドも34.0%増の12万3,182トンと、東南アジアほどではないが増加傾向にある。

図8: 米国廃プラスチック輸出量(HS3915)(主要国・地域向け)
米国の廃プラスチック(HS3915)の輸出先として、東南アジア諸国が大きく伸びている。
出所:
Global Trade Atlasより作成

東南アジアへの輸出が増加した理由として、ロイター通信(2018年1月16日付)などは、廃棄物の処理を行う際の人件費の安さや中国の近接性を背景に、中国の資源ごみの輸入業者などが代替輸入先として東南アジアに進出していることを挙げている。それが正しければ、中国が資源ごみの輸入制限をさらに厳しくした場合、東南アジアへの資源ごみの輸出は今後とも増加すると考えられる。

東南アジアでも禁止される可能性も

環境金融(注2)の普及や啓発、発展を目指す一般社団法人環境金融研究機構の1月16日付の記事によると、中国市場と比較して東南アジアの国々のリサイクル市場は小さく、年間約5割~2倍のペースで輸入増加が続くと市場が飽和するという。また、資源ごみの不正輸入の増加に対し、輸入後の処理がなされず環境汚染などが拡大することへの懸念から、各国で輸入規制強化を求める声が上がっているとのことだ。

ロイター通信(2018年1月16日付)は、東南アジアの多くの国では、自国のリサイクルシステムが開発途上であり、廃棄物問題の国民への周知も十分ではないとしている。加えて、廃プラスチックがこれらの国に大量に押し寄せると、中国が経験したような環境問題が引き起こされ、結果として「計画」と同じような法律が将来的に東南アジアの国でできる可能性を指摘している。

中国のみならず東南アジアにおいても、環境意識が高まりつつある。こうした状況下では、廃棄物の量を減らすこととその処理体制を整えることが重要だ。また、資源ごみの輸出先の多様化など、リスクを分散する取り組みが求められるだろう。


注1:
リストは生態環境部のウェブサイト外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます で閲覧できる。
注2:
金融市場を通じて、環境配慮に対し適切なインセンティブを与えることで、企業や個人の行動を環境に配慮するように変えていくメカニズムのこと。

変更履歴
文章中に誤りがありましたので、次のように訂正いたしました。(2018年6月13日)
第12段落
(誤)インドネシアは前年比65%増である(ロイター通信、2018年1月26日付)。
(正)インドネシアは前年比65%増である(ロイター通信、2018年1月16日付)。
第14段落
(誤)ベトナムへの輸出量は前年比92.4%増の13万7,195トンとなり
(正)ベトナムへの輸出量は前年比92.4%増の12万6,219トンとなり
第16段落
(誤)東南アジアへの輸出が増加した理由として、ロイター通信(2018年1月26日付)などは
(正)東南アジアへの輸出が増加した理由として、ロイター通信(2018年1月16日付)などは
第18段落
(誤)ロイター通信(2018年1月26日付)は、東南アジアの多くの国では、
(正)ロイター通信(2018年1月16日付)は、東南アジアの多くの国では、
執筆者紹介
ジェトロ海外調査部中国北アジア課
楢橋 広基(ならはし ひろき)
2017年4月、ジェトロ入構。同月より現職。

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