食料・燃料市場に浸透するロシア
アフリカ貿易から世界を見る(2)
2026年4月27日
アフリカ貿易解説シリーズの2回目。2024年の貿易について、主要輸出入品目の取引動向に焦点を当てる。主要品目の金額増減やシェアの変動、その背景にある国際市場の需給状況、国際情勢の変化にも踏み込んで分析する。食料・肥料・燃料市場で存在感を強めるロシアの動向にも注目する。
金、銅、カカオが2024年の輸出を牽引
前稿では2024年の国・地域別輸出入動向を見てきた。その際に利用したIMF財貿易統計(IMTS)が国別データのみ公表のため、本稿ではUNCTADの財貿易統計(注1)に基づき、アフリカの2024年の品目別貿易を構成比で確認する。
2024年の輸出品目の首位は原油類で、構成比は21.9%と前年から1.9%ポイント(以下、pp)低下した(表1参照)。アフリカの産油量は0.5%増加したが、国際取引価格(ブレント)が5.1%減少(Energy Institute、以下、EI)したことが響いた。主要輸出先はEUが約4割、中国が約2割を占める構造が続いている。
対照的に、2位の金(構成比9.4%)は前年から1.0pp上昇した。国際市況高騰がアフリカからの輸出を押し上げた。主な輸出先はUAEが4割強、スイスが約2割で固定化している。アフリカの産金量は西アフリカと東南部アフリカの国々を中心に年を追って増加し、2024年は886トン以上(注2)に達したと見込む。これは世界全体の産金量の約4分の1に相当する。国際情勢の不透明感が強まる中、安全資産投資や各国の金準備強化を背景に金需要は拡大し、2024年第4四半期の1オンス当たり価格は2,663.4ドル(注3)と、前年第1四半期から40.9%上昇した。
3位の銅(構成比5.1%)は前年比0.7pp拡大した。INTERNATIONAL COPPER STUDY GROUP(ICSG)によると、アフリカは2024年、コンゴ民主共和国やザンビアを中心に、世界の銅鉱石の18%、粗銅の4%、精製銅の10%を生産し、銅全体の生産量は前年を1割程度上回ったと推定される(注4)。世界銀行(以下、世銀)のCommodities Price Data(2026年2月、以下、CPD)によると、2024年の銅の国際市況は前年から7.8%上昇しており、増産と市況上昇が輸出増につながった。2022年以降は仕向け先の7~8割が中国向けである。急拡大する同国のEV生産需要も背景にあるとみられる。
4位と5位は天然ガス(構成比4.4%、前年比1.3pp減)と石油類(4.2%、0.3pp増)が占めた。このうち天然ガスは、2024年の国際取引価格指標(世銀・CPD)が前年から15.1%下落し、シェアが低下した。天然ガスの最大の仕向け先はEUだ。2022年にウクライナ紛争が勃発、EUがロシア産天然ガスの調達を減らす中で、南欧諸国向けを中心にアフリカ産ガスの輸出が一時的に急増(2022年のガス輸出全体の68.4%、前年比11.8pp増)したが、2024年は紛争前の水準(56.0%)に戻った。対EU減少分はインドやトルコ、チュニジア向けで補われた。アフリカは世界の天然ガス生産の5.8%(2024年、EI統計)を担い、アルジェリア、エジプト、ナイジェリア、リビアの4カ国で85%を占める。トップ4の生産量が伸び悩む一方、域内他国の産出量は拡大しており、消費国側の選択肢が広がっている。
このほかの上位品目では、果実・ナッツ類(6位、構成比2.6%、前年比0.5pp増)とカカオ(8位、2.4%、0.9pp増)のシェアが拡大した。このうちカカオについて、国連食糧農業機関(FAO)の統計によれば、アフリカは世界のカカオ豆の約3分の2(65.4%、2024年)を生産し、その多寡が国際市況、ひいてはチョコレートなど加工品の価格を左右する。コートジボワール(域内構成比55.2%)、ガーナ(15.5%)、ナイジェリア(10.2%)、カメルーン(9.3%)の4カ国でアフリカの輸出の約9割を占める。近年は、天候不順、病害、老木化、耕作地の整備不足、低い買い取り価格といった複合的要因で、ガーナを中心に生産量は減少傾向にある。ウガンダやコンゴ民主共和国、マダガスカルなど新たな産地も生産を伸ばしているが、アフリカ全体では2020年以降、約1割減産した。他方で世界のカカオ加工品需要は拡大しており、2023年から2024年にかけてカカオの取引価格は高騰した。世銀・CPDによれば、2024年の平均取引価格は前年比2.2倍のキロ当たり7.33ドルまで上昇し、生産量の停滞を輸出金額の伸びが大幅に上回った。持続的なカカオ生産・供給の実現に向けて、日本を含む世界の加工・流通業者は、児童労働の監視など生産者の人権保護、栽培環境の保全や植え替え、所得向上を支援する取り組みを進めている。
| 項目 | 2023年 | 2024年 | 前年比 |
|---|---|---|---|
| 石油、瀝青質原料由来油、原油 | 23.8 | 21.9 | △ 1.9 |
| 金(非貨幣用、鉱石・精鉱を除く) | 8.4 | 9.4 | 1.0 |
| 銅 | 4.4 | 5.1 | 0.7 |
| 天然ガス | 5.7 | 4.4 | △ 1.3 |
| 石油、瀝青鉱物(油分70%以上) | 3.9 | 4.2 | 0.3 |
| 果実・ナッツ類 | 2.2 | 2.6 | 0.5 |
| 非鉄金属の鉱石および精鉱 | 2.4 | 2.5 | 0.2 |
| カカオ | 1.5 | 2.4 | 0.9 |
| 乗用自動車 | 1.9 | 1.9 | 0.1 |
| 銀、プラチナ、その他プラチナ族金属 | 1.8 | 1.6 | △ 0.1 |
| 合計(その他含む) | 100.0 | 100.0 | — |
注:小数点以下第2位の四捨五入のため、2023年と2024年の構成比の差分が前年比との間で異なる場合がある。
出所:UNCTAD stat を基にジェトロ作成
輸入品目構造は静態的だが、変化する世界情勢の影響受ける
同じくUNCTAD統計を基に2024年のアフリカの輸入品目(構成比)を見ると、輸出と比較して上位品目のシェアは静態的だ。
最大品目の石油類(原油類以外)はガソリンやディーゼル、重油などが主力である。2024年の輸入シェアは前年比で1.5pp減少した(表2参照)。EI統計によると、アフリカの2024年の石油消費量(注5)は前年比2.5%増の2億1,000万トンに達し、世界平均(0.5%増)を上回る伸びを示した。一方、前章で述べたように2024年は国際原油市況が低迷し、派生製品の価格も連動して下落したため、輸入シェアは低下した。調達先は2020年以降、UAEやサウジアラビアなどペルシャ湾岸諸国の比率が約4割(39.7%)まで上昇し、対照的にEU(26.2%)のシェアは約1割低下した。この間、ロシア(4.7%)が順位を7位から5位に上げている。ウクライナ侵攻を機に発動された対ロシア経済制裁が、アフリカ地域のエネルギー輸入構造にも変化をもたらしている。アフリカの農業生産拡大に不可欠な肥料(17位)も天然ガスを原料とするものが多く、ここでもロシアがシェアを約2割(20.1%)に高め、供給国として首位に立った。
アフリカのエネルギー・食糧安全保障の観点では、ナイジェリアのダンゴテグループによる、単一石油精製所として世界最大となる製油所や国内尿素・肥料プラントの増強(2025年12月1日付ビジネス短信参照)、さらにエチオピアの窒素肥料プラント(2025年9月8日付ビジネス短信参照)の完工と本格稼働が待たれる。同時に、原料となる原油や天然ガスを域内最大の産油国ナイジェリアが安定供給できるかも、域内貿易拡大の観点で重要だ。
2位の乗用自動車(構成比2.8%)、8位の貨物・特殊用途自動車(1.4%)、9位の自動車部品(1.3%)は前年と同率だった。乗用車の輸入元としては日本が首位(13.3%)を維持し、2020年比でシェアを1pp拡大している。2位のドイツ(11.7%)をはじめ欧米諸国が軒並みシェアを下げる中、3位のインド(11.1%、対2020年比3.4pp増)、4位の中国(9.1%、5.5pp増)の躍進が目立つ。中古車取引の中継地UAEも6位(6.1%)につけている。貨物・特殊用途自動車では、2024年は中国が3割弱(28.9%)のシェアで首位、EU諸国が2割強(20.9%)で2位、3位に南ア(11.9%)が続く。
自動車部品の輸入は、EU諸国が8割強(80.4%)を占め、市場を寡占している。日本は1.7%にとどまり、順位も18位だった。アフリカ側の輸入国を見ると、域内の2大自動車生産拠点であるモロッコ(1位、36.4%)と南ア(2位、19.0%)で全体の過半を占める。南アのシェアは2020年以降、同水準にとどまっている。一方、欧州系自動車メーカーが生産増強中のモロッコ(2025年7月3日付地域・分析レポート参照)では、組み立て需要の拡大を背景に同期間にシェアを伸ばし、2020年比で8.8pp上昇した。両国に続き、エジプト(9.0%)、ナイジェリア(4.7%)、アルジェリア(3.9%)、チュニジア(2.5%)と、中小規模の自動車組み立て生産国が輸入上位に並ぶ。
食糧輸入に目を向けると、北アフリカを中心に消費されている小麦が輸入全体で3位(構成比2.3%)だった。FAOの推計では、アフリカの2024年の小麦生産量が2,610万トンだったのに対し、域内消費量は8,020万トンで、自給率は33%にとどまる。同じく主食作物のメイズ(83%)やコメ(60%)、雑穀(88%)と比較して低い。UNCTADの貿易統計によると、アフリカの小麦の調達先は2020年時点でEUが3分の1強(35.5%)、ロシアが約3割(29.3%)、ウクライナ(11.6%)とカナダ(11.0%)がそれぞれ1割強を占めていた。2022年のロシアのウクライナ侵攻で両国産品の供給は大きく制約された。アフリカ諸国は相対的に高価格のEU産品への輸入シフトを余儀なくされ、消費量の多い北アフリカを中心に物価高騰の一因となった。2023年以降はロシアの供給が回復し、2024年はロシアが4割弱(38.1%)とEU(33.3%)を抜いて最大の小麦調達元となった。一方で、ウクライナからの調達は5.9%にとどまり、ロシアがウクライナ産のシェアを奪うかたちとなっている。世銀・CPDによると、2024年の小麦の国際市況は2022年のピークから約4割低下した。ロシアは侵攻前の輸出量を上回ったのに対し、ウクライナは依然下回っている(注6)。今後も二国間の紛争の推移や主要産地の天候によっては、輸入コストが再び上昇に転じるリスクをはらむ。
小麦以外の食料品では、2024年は砂糖類が7位(構成比1.4%)に入った。2020年の12位から順位を上げた。この間、年間輸入量は1,540万トンから1,770万トンに増加し、国際市況も58%上昇している(注7)。砂糖類は食品原料として広範な業種で利用されており、調達コストが高止まればインフレ抑制の阻害要因ともなる。ブラジルやインドなど主要調達元の生産・輸出動向を注視する必要がある。
| 項目 | 2023年 | 2024年 | 前年比 |
|---|---|---|---|
| 石油、瀝青鉱物(油分70%以上) | 13.9 | 12.3 | △ 1.5 |
| 乗用自動車 | 2.8 | 2.8 | 0.0 |
| 小麦(未製粉) | 2.3 | 2.3 | △ 0.0 |
| 医薬品(動物用含む) | 1.9 | 1.9 | 0.0 |
| 通信機器・部品 | 1.8 | 1.7 | △ 0.1 |
| 石油、瀝青質原料由来油、原油 | 1.5 | 1.5 | 0.0 |
| 砂糖、糖蜜、ハチミツ | 1.4 | 1.4 | 0.1 |
| 貨物・特殊用途自動車 | 1.4 | 1.4 | 0.0 |
| 自動車部品 | 1.3 | 1.3 | 0.0 |
| 土木・建設用機械設備 | 1.3 | 1.3 | 0.0 |
| 合計(その他含む) | 100.0 | 100.0 | — |
注:小数点以下第2位の四捨五入のため、2023年と2024年の構成比の差分が前年比との間で異なる場合がある。
出所:UNCTAD stat を基にジェトロ作成
- 注1:
-
UNCTAD Stat「International Trade, Merchandise trade matrix, annual」に基づきジェトロ試算。前稿「EUと中国をインド、中東が追走」の注1のIMF・IMTSとは総額が異なる。
- 注2:
-
「World Gold Council(WGC)」のウエブサイト公開データに基づきジェトロ試算。
- 注3:
-
WGCのウエブサイト公開データに基づきジェトロ試算。ロンドン市場渡しの国際ベンチマーク価格。1トロイオンス当たりの米ドル建て。
- 注4:
-
米国地質調査所(USGS)の「Mineral Commodity Summaries 2025」を参照した。
- 注5:
-
国内消費に加え、航空機・船舶給油、製油所向け供給を含む。またバイオ燃料は除き、石炭・天然ガス由来のものを含む。
- 注6:
-
国際市況は世銀「Commodity Prices」の年次データ、生産・輸出量は国連食糧農業機構(FAO)「Food Outlook」各年版を参照した。ロシアとウクライナの2019/20~2021/22耕作年度(3年間)の平均輸出量(年度)は3,510万トンと1,890万トン、2024/25耕作年度の輸出量(推計値)は4,260万トンと1,530万トンだった。
- 注7:
-
輸入量はFAO「Food Outlook」各年11月版、国際市況は世銀「Commodity Prices」年次データを参照した。輸入量は2020/21、2024/25の両耕作年度のもの(いずれも推計値)。
- 執筆者紹介
-
ジェトロ調査部上席主任調査研究員
兒玉 高太朗(こだま こうたろう) - 1990年、ジェトロ入構。ドバイ事務所次長、パリ事務所次長、中東アフリカ課長、お客様サポート部長、市場開拓・展示事業部長、海外展開支援部長、関東・甲信越地域統括センター長兼東京貿易情報センター所長を経て、2025年5月から現職。





閉じる




