大陸ワイドの共通市場構想が前進
アフリカ貿易から世界を見る(3)

2026年4月27日

アフリカ貿易解説シリーズの3回目では、2024年のアフリカ域内貿易動向を整理する。南北貿易圏の主役である南アフリカ共和国(以下、南ア)とエジプトに加え、両者をつなぐモロッコの台頭、東南部アフリカで進む鉱業分野のサプライチェーン形成など、新たな動きを取り上げる。合わせて、大陸全体の共通市場創出に向けたルール形成の進展状況も報告する。

モロッコの域内輸出が西アフリカ中心に急増

IMFの国際財貿易統計(IMTS)によると、アフリカの2024年の域内貿易は、輸出額が前年比7.9%増の1,143億100万ドル、輸入額が5.9%増の879億4,700万ドル、貿易総額は2,022億4,800万ドル(7.0%増)と、いずれも前年水準を上回った。もっとも、世界貿易における域内貿易比率は、2020年以降、15%内外で停滞している。

アフリカ域内で50億ドル以上を輸出する国は、2024年時点で6カ国(構成比55%)だ(表1参照)。以下では、これら諸国の輸出先や主要輸出品目を見てみたい。

南アは南部アフリカ周辺国を中心に、同心円状に大陸内で輸出先を展開する。域内最大の産業集積を背景に、資本財から消費財まで多様な製品を輸出している。2位のエジプトは、アラブ・イスラム圏の北アフリカを中心に、建材や食料品などを供給する。

3位のコンゴ民主共和国は、南アの港湾(域外輸出港)や金属産業向けにコバルトや銅、金などを輸出している。また、金を除く金属原料はモザンビークやタンザニア経由で域外に出荷するルートも確立されている。

4位のナイジェリアは、製油・石油化学施設が所在するコートジボワールや南アに原油類を輸出、5位のガーナは金や原油類を南ア中心に供給している。6位のモロッコは、仏語圏でエチオピアの玄関口であるジブチや西アフリカ諸国を中心に、自国原料を加工した肥料や食料品、一部資本財の輸出を伸ばしている。モロッコの2024年のアフリカ向け輸出は2020年比で2.3倍と、上位国では群を抜いた伸びを示しており、西アフリカ市場のゲートウェイとしての地歩を固めつつある。

表1:アフリカ域内貿易での上位輸出国(2024年)*[( )は域内輸出に占める構成比・%]注1:*は域内輸出額50億ドル以上の国を対象。 注2:**はアフリカ全体の域内輸出額に占める割合。
国名 輸出金額
(100万ドル)
構成比** (%) 対2020年増減率 (%) 主要輸入元 主要輸入品目
南アフリカ共和国(南ア) 31,120 27.2 56.9 モザンビーク(21)、ボツワナ(14)、ナミビア(12) 非鉄金属の鉱石・精鉱(6)、石油類(6)、銑鉄・合金鉄等(4)
エジプト 7,596 6.6 99.3 リビア(25)、モロッコ(14)、アルジェリア(13) 石灰・セメント・加工建材(11)、小麦粉類(4)、精油・香水(3)
コンゴ民主共和国 7,191 6.3 90.9 南ア(43)、モザンビーク(28)、タンザニア(21) 銅(52)、無機化学元素料・酸化物等(27)、金(12)
ナイジェリア 5,996 5.2 △ 12.8 コートジボワール(34)、南ア(33)、セネガル(11) 原油類(83)、電力(2)、石油類(2)
ガーナ 5,635 4.9 70.2 南ア(73)、ブルキナファソ(7)、トーゴ(5) 金(48)、原油類(13)、石油類(4)
モロッコ 5,112 4.5 127.6 ジブチ(16)、コートジボワール(11)、セネガル(9) 肥料(37)、魚類・加工品(10)、電力配電機器類(5)

注1:*は域内輸出額50億ドル以上の国を対象。
注2:**はアフリカ全体の域内輸出額に占める割合。

出所:輸出金額、構成比、対2020年比、主要輸出先はIMF・IMTS(2026年2月28日時点)、主要輸出品目はUNCTAD Stat  を基にジェトロ作成

東南部で鉱業分野を中心にサプライチェーン形成が進む

域内での輸入に目を転じると、2024年にアフリカ域内から40億ドル以上の輸入を計上した国は6カ国(構成比41%)で、輸出と比較して分布がより平準化している(表2参照)。

首位の南アは輸出同様に、南部アフリカ諸国を中心に同心円状の輸入構造を有しているが、上位品目は原料品が多い。国内で産出しない原油は、アフリカ広域の産油国から調達している。また、世界でも有数の金のバリューチェーンを擁し、自国以外の域内諸国からも金を輸入・精錬している。2位のボツワナは、燃料である石油類を南アに依存するほか、経済を支えるダイヤモンド産業向けに、ナミビアなどからダイヤ原石・半加工品を輸入している。3位のジンバブエは、2020年以降、アフリカ域内からの輸入が2.1倍と急増した。長期の国内産業低迷に加え、2023年秋以降の降雨不足が重なり、食料やエネルギーを隣国南アに依存する構造が強まっている。

4位のウガンダは、東アフリカの金取引・精錬のハブとして頭角を現し、隣国タンザニアはもとより南アからも金を輸入している。コメなどの食料はタンザニア、加工食品や一般消費財はケニアから輸入するほか、近年の建設ブームを反映し、南アやケニアからの建設関連資機材の輸入も増加中だ。

5位のザンビアと6位のコンゴ民主共和国は、資本財から自動車を含む消費財まで幅広く南アから調達しているが、燃料の石油類はタンザニア経由の調達が多い。カッパーベルトを構成する両国は、銅・コバルトの精錬において、鉱物・中間品・製造用原料の供給で相互補完関係にある。鉱山関連資機材は南アからの調達が目立つ。

表2:アフリカ域内貿易での上位輸入国(2024年)*[( )は域内輸入に占める構成比・%]注1:*は域内輸出額40億ドル以上の国を対象。 注2:**はアフリカ全体の域内輸入額に占める割合。
国名 輸入金額
(100万ドル)
構成比** (%) 対2020年増減率 (%) 主要輸入元 主要輸入品目
南アフリカ共和国(南ア) 11,020 12.5 50.4 ナイジェリア(24)、エスワティニ(14)、ナミビア(12) 原油類(35)、金(10)、天然ガス(4)
ボツワナ 5,570 6.3 32.6 南ア(76)、ナミビア(18)、モザンビーク(3) 石油類(22)、真珠・貴石・半貴石(15)、電力(2)
ジンバブエ 5,314 6.0 113.6 南ア(75)、モザンビーク(8)、ザンビア(6) メイズ(11)、石油類(4)、電力(4)
ウガンダ 4,961 5.6 64.5 タンザニア(34)、ケニア(17)、南ア(11) 金(30)、石灰・セメント・加工建材(5)、コメ(5)
ザンビア 4,605 5.2 89.3 南ア(63)、タンザニア(11)、DRC(7) 肥料(7)、石油類(6)、自動車(4)
コンゴ民主共和国(DRC) 4,363 5.0 △ 5.5 南ア(42)、タンザニア(18)、ザンビア(10) 石油類(23)、石灰・セメント・加工建材(5)、自動車(4)

注1:*は域内輸出額40億ドル以上の国を対象。
注2:**はアフリカ全体の域内輸入額に占める割合。

出所:輸出金額、構成比、対2020年比、主要輸出先はIMF・IMTS(2026年2月28日時点)、主要輸出品目はUNCTAD Stat  に基づきジェトロ作成

アフリカ自らの手による地域共通市場構想が前進

前章で見てきたように、エジプトが北部、モロッコが北・西部、南アが南~中部で商圏を構築している。また、原油や銅・コバルト、金、ダイヤモンドといった特定資源では、一定の域内バリューチェーンが形成されている。もっとも、域内貿易の広域化や、付加価値を生み出す多様なバリューチェーンの構築は道半ばだ。これらを加速する基盤として期待されているのが、アフリカ大陸自由貿易圏(AfCFTA)構想だ。

2019年5月に地域協定として締結されたAfCFTAは、域内での物品・サービスの単一市場創設に加え、紛争解決、競争、投資、知財保護に関する域内共通ルールの適用を目指す。協定の詳細や進捗状況は他稿(アフリカ大陸自由貿易圏(AfCFTA)特集)を参照いただきたい。AfCFTA実現の暁(あかつき)には、アフリカ55カ国・地域で構成され、GDP総額3兆ドル、人口14億人を超える世界有数規模の単一市場が誕生する。一方で、譲許表未提出の国が少なからず残り、繊維・衣料、自動車などセンシティブ品目の取り扱いや原産地規則を巡る協議も続いている。財貿易の自由化に限っても、合意にはなお時間を要するだろう。南アの貿易・産業・協力省によると、2025年9月時点で55カ国・地域のうち54カ国が協定に署名、49カ国が批准、24カ国が関税譲許表を実装して運用を開始している。また、92.4%のタリフラインで原産地規則の合意形成に至った。遅れが目立っているサービス貿易でも、50カ国が5つの優先分野(注1)を対象とする初期サービス譲許表の提出を終えている。

域内各国は当面、最終段階にあるフェーズ1(注2)の財・サービス貿易の共通ルールづくりの早期完了と運用拡大に取り組み、フェーズ2以降は5領域でのルール形成(注3)に向けて議論を深めていく。日本やEUは、AfCFTA事務局や加盟各国を対象に、協定実装に向けた技術支援や人材育成に加え、広域貿易圏の物理的基盤となる主要回廊整備計画の支援にも取り組んでいる。双方が域内貿易の自由化と円滑化に向け連携することで、域内外企業の貿易・投資活動が活発化し、多様な分野で新たなバリューチェーンや付加価値が創出されよう。支援に参画する国々にとっても、アフリカ成長市場の開拓に加え、資源・エネルギー調達先の多角化など経済安全保障の確保にもつながる。


注1:
対象分野は、金融、通信、運輸、観光、ビジネスサービス。 本文に戻る
注2:
フェーズ1は、財・サービス貿易の基盤ルール(財貿易の関税率・譲許表・原産地規則など、サービス貿易の自由化分野・外資参入規則など)の策定、紛争解決メカニズムの構築、通関・貿易円滑化(効率的で簡素な共通貿易手続きの確立)の段階。 本文に戻る
注3:
フェーズ2以降は、共通市場を制度的に強化・深化させる段階。現在、テーマとしている領域は、投資、知的財産権、競争政策、デジタル貿易、若者・女性の貿易参画。 本文に戻る
執筆者紹介
ジェトロ調査部上席主任調査研究員
兒玉 高太朗(こだま こうたろう)
1990年、ジェトロ入構。ドバイ事務所次長、パリ事務所次長、中東アフリカ課長、お客様サポート部長、市場開拓・展示事業部長、海外展開支援部長、関東・甲信越地域統括センター長兼東京貿易情報センター所長を経て、2025年5月から現職。