EUと中国をインド、中東が追走
アフリカ貿易から世界を見る(1)
2026年4月1日
アフリカの貿易は、新型コロナ禍が世界に広がった2020年を境に、総じて拡大基調にある。グローバル経済に組み込まれたアフリカの貿易には、世界の政治・経済の構造変化や市場の需給動向が如実に反映される。また、アフリカが世界の経済活動や市場を支える分野も多い。他方で、地域総体として安定的かつ持続的な成長を目指すためには、貿易を通じた域内産業の相互補完や、サプライチェーン・付加価値の創出にも取り組む必要がある。
本稿では5回に分けて、2024年以降のアフリカの貿易概況、パートナーと取引品目、域内の貿易構造や共通市場創設の取り組みを解説し、アフリカを取り巻く国際環境の変化にも目配りする。初回は2024年の貿易動向を相手国・地域の切り口で解説する。輸出入ともにEUと中国の比重が大きいが、近年は中東諸国などパートナーが多角化する傾向にある。また、域内では高い輸出入の伸びを示す国々も出てきた。
2024年の貿易は輸出入ともに増加、赤字幅は縮小
2024年のアフリカ地域の貿易(財のみ)は輸出入ともに前年を上回り、貿易収支も改善した。IMFの国際財貿易統計(IMTS)(注1)によると、アフリカの2024年の対世界輸出額は6,473億3,300万ドル(前年比5.9%増)、輸入額は7,389億1,700万ドル(4.7%増)で、貿易収支赤字幅は前年から3.2%減少し915億8,400万ドルだった(図参照)。2024年の輸出の回復は、エネルギー原料を除く一次産品市況の上昇が寄与し、輸入の伸びは域内の底堅い民間消費と外貨ポジションの総体的な改善による。
注:各年の数値はIMF未報告の国・地域のIMF推計値を含む。
出所:IMF・International Trade in Goods(IMTS、2026年2月28日時点)を基にジェトロ作成
EUと中国で輸出先の4割超
2024年の輸出を国別に見ると(注2)、中国は前年と変わらず首位(構成比12.3%)で前年比6.4%増となった(表1参照)。原油、鉱石類(アルミ鉱、鉄鉱、銅鉱、クロム鉱、マンガン鉱など、精鉱を含む)、銅・同製品、貴金属類(金、プラチナ、ダイヤモンドなど)といった鉱物・エネルギー資源が85.7%を占める。
2位以下10位までには、歴史的に関係が深く地理的にも近接する欧州諸国が5カ国入っている。これらを含むEUの構成比は3割を超え(32.0%、4.1%増)、輸出額も対2020年比で倍増(2.0倍)した。EUへの輸出品目は、原油と天然ガスが主力の鉱物性燃料(46.5%、13.5%減)が5割近くを占め、近年は自動車・部品(2位、6.6%、0.8%増)や、ワイヤー類が約6割を占める電気機器(4位、5.9%、5.1%増)の輸出が、近接する北アフリカを中心に堅調である。加えて、市況高騰によりカカオ・同調整品が3位(5.9%、83.7%増)に急上昇した。
このほかの上位輸出先では、米国が5位(構成比4.4%、前年比4.4%増)となり、原油や石油製品など鉱物性燃料(30.0%、4.2%減)や、プラチナやダイヤモンドなど貴金属類(24.6%、7.2%増)を中心にアフリカから調達している。アラブ首長国連邦(以下、UAE)が9位に入り、UAEが約6割を占める中東地域の構成比も6.6%(14.4%増)と存在感を維持している。
アフリカ域内では南アフリカ共和国(以下、南ア)が前年比25.0%増、構成比3.3%で10位入りした。南アは、原油や天然ガスなど鉱物性燃料(46.8%、15.7%増)や、金など貴金属類(12.4%、48.2%増)を域内調達している。日本は2024年、前年同様18位の相手国(1.1%、9.4%減)だった。
| 順位 | 相手国・地域 | 2023年 | 2024年 | 構成比 | 対前年比 |
|---|---|---|---|---|---|
| 1 | 中国 | 74,793 | 79,555 | 12.3 | 6.4 |
| 2 | フランス | 35,880 | 42,333 | 6.5 | 18.0 |
| 3 | イタリア | 40,156 | 38,418 | 5.9 | △ 4.3 |
| 4 | スペイン | 34,065 | 35,352 | 5.5 | 3.8 |
| 5 | 米国 | 27,114 | 28,300 | 4.4 | 4.4 |
| 6 | インド | 26,711 | 27,575 | 4.3 | 3.2 |
| 7 | ドイツ | 22,506 | 26,429 | 4.1 | 17.4 |
| 8 | オランダ | 29,887 | 26,339 | 4.1 | △ 11.9 |
| 9 | アラブ首長国連邦(UAE) | 22,786 | 26,232 | 4.1 | 15.1 |
| 10 | 南アフリカ共和国(南ア) | 16,929 | 21,162 | 3.3 | 25.0 |
| 18 | 日本 | 8,002 | 7,249 | 1.1 | △ 9.4 |
| 合計(その他含む) | 611,198 | 647,333 | 100.0 | 5.9 | |
| (参考1)EU | 199,188 | 207,390 | 32.0 | 4.1 | |
| (参考2)アフリカ | 105,973 | 114,301 | 17.7 | 7.9 | |
| (参考3)中東 | 37,479 | 42,874 | 6.6 | 14.4 | |
| (参考4)中南米* | 11,726 | 13,798 | 2.1 | 17.7 | |
注:*はカリブ諸国を含む。
出所:IMF・ International Trade in Goods(2026年2月28日時点)を基にジェトロ作成
なお、2024年のアフリカの輸出全体で構成比5%以上の国は、南ア(17.2%)、モロッコ(11.2%)、ナイジェリア(8.2%)、アルジェリア(7.9%)、エジプト(6.9%)、アンゴラ(6.1%)、コンゴ民主共和国(5.4%)の7カ国だ。うち、市況が低迷した鉱物性燃料を輸出の主体とするナイジェリアとアルジェリアを除き、5カ国が前年の輸出実績を上回った。2020年との比較では、域内最大の鉱工業製品輸出国である南アの構成比が4.9%ポイント(以下、pp)低下したのに対し、工業製品(自動車・部品)、鉱物加工品(肥料・無機化学品)、農水産物とバランスの良い輸出構造を有するモロッコは4.0pp増となり、存在感が高まっている。
輸入市場では中国の攻勢が足踏み、調達元が多角化
同じくIMF・IMTSで輸入元国(上位10カ国)に目を転じると、2024年も中国が首位の座を維持(構成比18.0%)し、前年から8.2%増加した(表2参照)。2位以下にはEU 4カ国が入り、EU総体の構成比は輸入全体の25.0%、前年比3.6%増だった。構成比を2020年と比較すると、EUのシェアは1.9pp低下し、中国のシェアは18%で変化がなく、中国の輸出攻勢は足踏みしている。こうした中で、アフリカの輸入パートナーは多角化してきた。中でもUAEやサウジアラビアなど中東からの2024年の輸入シェアは10.6%(前年比0.9%増)で、アフリカ(11.9%、5.9%増)に比肩する水準にある。
国別では、インド(2位、構成比5.6%、前年比2.1%減)と米国(3位、5.3%、5.6%増)が中国に続く。上位10位圏外では、ロシア(12位、2.4%、7.0%増)とブラジル(14位、2.2%、16.5%増)が、2020年以降、シェアをそれぞれ0.3pp、0.4pp上げている。ロシアについては、近年のアフリカ地域との関係緊密化が輸入増にも現れている。日本からの輸入は前年とほぼ同水準(1.6%、0.6%増)だったが、順位は2つ上がり15位となった。
主要国・地域からの輸入品目(注3)を見ると、首位の中国からは多様な品目を輸入している。上位品目としては、スマートフォンなどの電気機器類(構成比14.4%、対前年比2.1%減)、建機やエアコン、PCなど一般機械類(14.3%、17.2%増)、商用・乗用車(内燃車中心)や部品など自動車(8.2%、17.7%増)、船舶(5.5%、64.7%増)、各種プラスチック原料・製品(5.4%、8.0%増)が挙げられる。
2位のインドは、ディーゼル油などの鉱物性燃料(27.2%、25.5%減)やコメ(10.3%、19.3%増)、医薬品(9.0%、1.7%増)、自動車(8.6%、0.8%減)が上位品目だ。3位の米国は、軽油などの鉱物性燃料(22.2%、46.0%増)、一般機械類(12.0%、4.6%増)、航空機・部品(11.7%、16.4%増)が上位品目となる。
EUからの輸入品目も、中国同様に多岐にわたる。主な品目は、軽油などの鉱物性燃料(14.7%、6.8%減)、自動車用エンジンや情報処理機器・PC、プラント用機材など一般機械類(14.7%、1.2%減)、乗用車(内燃車中心)や部品など自動車(9.2%、2.1%増)、スイッチ・プラグや絶縁ケーブル、スマートフォンなどの電気機器類(8.5%、0.7%減)の順となる。
なお、UAEやサウジアラビアからの調達は、原油や石油製品・石油化学製品などが主となる。
| 順位 | 相手国・地域 | 2023年 | 2024年 | 構成比 | 増減率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 1 | 中国 | 122,687 | 132,702 | 18.0 | 8.2 |
| 2 | インド | 42,597 | 41,683 | 5.6 | △ 2.1 |
| 3 | 米国 | 37,110 | 39,198 | 5.3 | 5.6 |
| 4 | フランス | 28,055 | 30,048 | 4.1 | 7.1 |
| 5 | アラブ首長国連邦(UAE) | 29,822 | 28,256 | 3.8 | △ 5.3 |
| 6 | ドイツ | 26,926 | 27,367 | 3.7 | 1.6 |
| 7 | 南アフリカ共和国(南ア) | 25,475 | 27,149 | 3.7 | 6.6 |
| 8 | スペイン | 20,186 | 26,165 | 3.5 | 29.6 |
| 9 | イタリア | 21,569 | 22,833 | 3.1 | 5.9 |
| 10 | サウジアラビア | 20,867 | 22,616 | 3.1 | 8.4 |
| 15 | 日本 | 11,500 | 11,575 | 1.6 | 0.6 |
| 合計(その他含む) | 705,816 | 738,917 | 100.0 | 4.7 | |
| (参考1)EU | 178,396 | 184,827 | 25.0 | 3.6 | |
| (参考2)アフリカ | 83,077 | 87,947 | 11.9 | 5.9 | |
| (参考3)中東 | 77,805 | 78,472 | 10.6 | 0.9 | |
| (参考4)中南米* | 25,140 | 28,503 | 3.9 | 13.4 | |
注:*はカリブ諸国を含む。
出所:IMF・International Trade in Goods(2026年2月28日時点)に基づきジェトロ作成
アフリカの対世界輸入における2024年の域内上位国(構成比5%以上)は、南ア(構成比14.4%、前年比6.0%減)、エジプト(14.0%、39.7%増)、モロッコ(13.3%、38.7%増)、アルジェリア(6.4%、11.5%増)、ナイジェリア(5.6%、35.8%減)の順となる。輸出と比較すると、上位国は南北に偏っている。2020年との比較では、コンゴ民主共和国(7位)とザンビア(17位)の輸入額がともに2.1倍、タンザニア(13位)が84.2%増と大きく伸長しており、新たな商機が期待できる注目市場だ。
- 注1:
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IMF「International Trade in Goods(IMTS)」(2026年2月28日時点)。IMF未報告の国・地域は、IMF推計値として計上。
- 注2:
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国別輸出額はIMF・IMTSに基づく。主要国・地域向けの輸出品目内訳は、Global Trade Atlas(GTA)の仕向け先国・地域の対アフリカ輸入データから算出。
- 注3:
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国別輸入額はIMF「International Trade in Goods(IMTS)」に基づく。主要国・地域からの輸入品目内訳はGTA、GTA非掲載国はUNCTAD Stat「International Trade, Merchandise trade matrix, annual」の輸入元国・地域の対アフリカ輸出データから算出。
- 執筆者紹介
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ジェトロ調査部上席主任調査研究員
兒玉 高太朗(こだま こうたろう) - 1990年、ジェトロ入構。ドバイ事務所次長、パリ事務所次長、中東アフリカ課長、お客様サポート部長、市場開拓・展示事業部長、海外展開支援部長、関東・甲信越地域統括センター長兼東京貿易情報センター所長を経て、2025年5月から現職。





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