2025年のブラジル自動車産業の動向
中国の電動車の現地生産化および輸入車の増加
2026年6月29日
2025年のブラジル自動車産業は、高金利などの逆風下でも生産・販売ともに成長を維持した。なお、同年のマクロ経済は厳しい環境下にあった。政策金利は15%と高止まりし、消費者向けクレジットの供給を阻害した。しかし、政府による政策的介入やメーカー各社の販売促進策が功を奏し、産業全体として生産・販売ともにプラス成長を維持した。とりわけ中国系メーカーによる電動車の現地生産化と輸入車の増加が、市場構造の変化を加速させた。輸出が大幅な増加に転じる一方で、アジア圏からの輸入も急増した。また、ブラジル国内への直接投資を通じた中国系メーカーの現地生産も本格稼働した。本稿では、ブラジル全国自動車製造業者協会(Anfavea)およびブラジル電気自動車協会(ABVE)が公表した年間統計データに基づき、2025年のブラジル自動車市況について報告する。
生産および販売は前年比増加
Anfaveaのデータによると、2025年の自動車(乗用車、軽商用車、バス、トラックの合計)の国内販売台数(新車登録ベース)は約269万台を記録し、前年比2.1%の増加となった。特に12月に販売が急加速した。12月単月の販売台数は27万9,400台に達し、前月比で17.1%増、前年同月比で8.5%増という大幅な伸びを記録した(図1、図2参照)。
この年末の販売急増の背景には、高金利によって冷え込んだ小売市場を活性化させるため、各自動車メーカーがディーラー網と連携して実施した大規模な在庫処分が挙げられる。Anfaveaの報告によれば、2025年11月時点では輸入車の在庫日数が平均153日という極めて高いレベルに達していた。これは、輸入車の急増や一時的な需要の停滞によるものとみられる。一方、トラックおよびバスの大型車セグメントは通年で停滞した。2025年の大型車生産台数は15万2,000台にとどまった。これは、高金利による資金調達コストの上昇が影響したためと考えられる。
2025年の自動車生産台数は前年比3.7%増の264万4,054台に達した。主に乗用車および小型商用車の増産(前年比5%増)に牽引された(図3参照)。Anfaveaの公式予測によれば、2026年の自動車生産台数は前年比3.7%増の274万1,000台へと拡大する見込みだ。主に乗用車・小型商用車(同3.8%増)によって牽引される。なお、大型車も、ブラジル国立経済社会開発銀行(BNDES)の融資効果により、1.4%増(15万4,000台)が見込まれている。
注:小型商用車は、総重量3.5トン以下の小中型車で、人と荷物を同時に運ぶことができるもの。ピックアップやバン、救急車などの特殊車両が該当する。一方で、スポーツ用多目的車などは乗用車に分類される。
出所:Anfaveaのデータを基にジェトロ作成
出所:Renavamのデータを基にジェトロ作成
注:小型商用車は、総重量3.5トン以下の小中型車で、人と荷物を同時に運ぶことができるもの。ピックアップやバン、救急車などの特殊車両が該当する。一方で、スポーツ用多目的車などは乗用車に分類される。
出所:Anfaveaのデータを基にジェトロ作成
輸出入の増加とアジア諸国からの輸入過半に
2025年は輸出と輸入の双方で大幅な増加を記録した。国産自動車の輸出は32.7%増加し、合計52万8,827台となった。2026年は、最大の輸出先であるアルゼンチンでの販売が引き続き好調とみられ、前年比1.3%増の53万6,000台が見込まれている。
輸入は、前年比6.7%増の49万8,000台だった。とりわけ中国からの輸入が全体の37.6%を占め、輸入の伸びを牽引した。中国車の輸入急増により、中国を中心とするアジア諸国からの輸入割合が全体の50.2%を占めた。これまで最大の輸入相手国・地域だったメルコスールおよびメキシコからの輸入は、初めて首位の座を失った。
こうした中国車の輸入急増に対し、ブラジル政府とAnfaveaは、政策的な防衛策に打って出た。SKDおよびCKD部品に対する輸入関税の優遇措置を前倒しして終了させることを決定した(2025年8月5日付ビジネス短信参照)。その結果、同年7月以降、電動車やSKD用部品に対する関税減免措置は終了する。8月以降は、関税率が普通自動車と同じ35%へ引き上げられる(2023年12月5日付ビジネス短信参照)。これらの措置の影響について、Anfaveaのイゴール・カルベ会長は「2026年を通じて輸入電動車モデルの流入ペースは鈍化すると予想している」と述べた。
エレクトロモビリティ市場の成長
パワートレイン別の新車登録台数を見ると、フレックス燃料車が189万7,539台(シェア70.6%)で大宗を占め、次いでディーゼル車39万418台(同14.5%)、ガソリン車11万4,263台(同4.2%)と続く(注1)。これら内燃機関車両は、国内販売の約93%を占める。一方、電動車(バッテリー式電気自動車:BEV、プラグインハイブリッド車:PHEV、ハイブリッド車:HEVの合計)は28万6,691台(同10.6%)と、2024年の6.8%からシェアを拡大している(表参照)。
| 燃料の種類 | ガソリン | BEV | HEV | PHEV | フレックス燃料 | ガス | ディーゼル | 合計 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 台数 | 114,263 | 81,636 | 109,819 | 95,236 | 1,897,593 | 669 | 390,418 | 2,689,634 |
| シェア | 4.2% | 3.0% | 4.1% | 3.5% | 70.6% | 0.0% | 14.5% | 100.0% |
出所:Anfavea のデータを基にジェトロ作成
ブラジル電気自動車協会(ABVE)の統計によると、電動車の販売台数は近年急増している。2025年の販売台数は22万3,896台で過去最多を更新し、前年比約39%増加した(図4参照)。そのうち、BEVとPHEVの増加幅が特に大きく、BEVは前年比30%増、PHEVは56%増加した。
市場を牽引しているのは、全体の45.3%を占めるPHEVだ。国土が広大なブラジルにおいて、ハイブリッド戦略は合理的な選択肢として評価されている。また、BEVも台頭した。新車販売台数は8万178台、シェア35.8%を確保した。比亜迪(BYD)の「ドルフィン・ミニ」や長城汽車(GWM)の「オラ03」など、比較的低価格帯のモデルがBEVの大衆化を促進した。
電動化普及の波は、ブラジル全土へ波及している。地域別の販売台数を見ると、最も販売台数の割合が高いのは、サンパウロ州やリオデジャネイロ州を含む南東部(46.4%)だ。なお、北東部(16.3%)でも販売台数が増加した。これは、BYDが2025年10月、北東部に位置するバイーア州で工場を稼働したことが影響している。
注:ABVEの統計では、2025年以降、マイルドハイブリッド車(MHEV)を電動車から除外したため、2024年以前もMHEVを除いた数値を使用している。
出所:ABVEのデータを基にジェトロ作成
充電インフラ拡充と中国系企業の国内生産シフト
電動車の普及を後押ししているのが、国内充電インフラの拡充だ。ABVEの調査によると、2026年2月末時点でブラジル全土の公共充電ステーションは約2万1,000基に達した。国内のガソリンスタンド数が約4万5,000カ所であるため、設置数はおおむねその半分程度まで拡大している。BEVとPHEVの国内総数は41万1,869台であり、これはBEVおよびPHEV約19.6台につき1基の充電器が設置されている計算となる。
特に急速・超急速充電器の設置が急増しており、2025年2月末に2,430基だったのが、2026年2月末時点で6,479基まで増加している。
もう一つの特徴として、中国系メーカーを中心とする新興勢力が、輸入から国内製造へと軸足を移し始めたことが挙げられる。
BYDは、2025年10月にバイーア州カマサリで最先端の電動車製造を開始した(2025年10月30日付ビジネス短信参照)。2026年1月中旬には累計生産台数が2万台を突破した。GWMは、サンパウロ州イラセマポリスで国内生産の基盤を固めた。2025年8月には、ルイス・イナシオ・ルーラ・ダ・シルバ大統領が列席する中、開所式が執り行われた(2025年8月21日付ビジネス短信参照)。長安汽車も2025年11月、ブラジル自動車メーカーのカオアと国内生産計画を発表した(2025年12月3日付ビジネス短信参照)。
ほかにも、広州汽車(GAC)が2026年までに工場建設を予定しており、ブラジルで三菱自動車の車両組み立て委託を行うHPEアウトモトレースとの連携合意が報じられている。
奇瑞汽車が展開するブランドである「Omoda(オモダ)」「Jaecoo(ジャクー)」や、零跑汽車(リープモーター)もブラジルでの生産検討をしていると報じられている(2025年12月4日付地域・分析レポート参照)。これらの現地生産化のインパクトは大きい。
Anfaveaの発表によると、2026年1月に販売された電動車のうち、35%が国内で生産されたモデルであった。
政府の産業介入と2026年の展望
高金利政策によるクレジット市場の収縮に対し、政府は巨額の政策介入を実施した。2025年7月11日から一般消費者向けに「持続可能な自動車(Carro Sustentável)」プログラムを導入した。同プログラムでは、環境負荷の低減と雇用維持を目的に、エネルギー効率が高く(燃費が良い)、安全装備が充実しており、かつ販売価格が15万レアル(約465万円、1レアル=約31円)以下の車両を対象に、工業製品税(IPI)を0%にする、あるいは大幅に減免するという税制優遇を行った。プログラム施行直後の2025年7月のデータでは、小売市場における販売台数が前年同月比で16.7%増と急増した。2026年初頭のAnfaveaの報告によれば、このプログラムの対象となった車両の累計登録台数は28万2,000台に達し、プログラム施行前と比較して22.8%の販売増効果をもたらしたと定量的に評価されている。
2026年のブラジル自動車産業は、新たな成長期への移行を迎える。Anfaveaの予測によれば、2026年の自動車生産台数は前年比3.7%増の274万1,000台へと拡大する見込みだ。電動車の市場シェアが2割に迫る可能性も高い。
開発商工サービス省(MDIC)と国立経済社会開発銀行(BNDES)は、2026年5月、Uberなど配車アプリのドライバーや個人のタクシードライバーを対象とした、新車購入のための超大型融資プログラム「Move Brasil」を策定した。このプログラムは、最大300億レアル(1レアル=31円、約9,300億円)の資金枠が設定されており、Moverプログラム(注2)で認可された自動車メーカーが製造する15万レアル以下の持続可能な車両(ハイブリッドや高効率ICE車)を対象に、市場金利よりも大幅に優遇された低金利で融資を提供するものだ。こうした巨額の需要喚起策が、マクロ経済の高金利という逆風を相殺し続ける限り、Anfaveaの予測は十分に実現性の高いものとなるだろう。一方で、中国系メーカーの現地生産拡大は、中長期的には輸入依存から国内生産中心の競争構造へと転換させる可能性があり、市場の競争環境は一段と激化するとみられる。
- 注1:
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正式名称はFlexible Fuel Vehicles(FFV)。日本語ではフレックス車あるいはフレックス燃料車と呼ばれる。ガソリンとバイオエタノールを混合し燃焼して走行する。
- 注2:
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MOVERは、脱炭素化と技術革新、研究開発、部品の現地生産を促進する目的で、2023年12月に導入された税制優遇や投資促進プログラム(2025年7月30日付ビジネス短信参照)。
- 執筆者紹介
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ジェトロ・サンパウロ事務所
中山 貴弘(なかやま たかひろ) - 2013年、ジェトロ入構。機械・環境産業部、ジェトロ三重、ジェトロ・サンティアゴ事務所、企画部海外地域戦略班(中南米)、内閣府などを経て、2023年7月からジェトロ・サンパウロ事務所勤務。





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