BYD、ブラジルに新生産拠点を開設、COP30記念でフレックスPHEVを発表

(ブラジル、中国)

サンパウロ発

2025年10月30日

中国の電気自動車(EV)大手の比亜迪(BYD)は10月9日、ブラジル・バイーア州カマサリ市で、大型生産拠点の完工式を開催した。式典にはルイス・イナシオ・ルーラ・ダ・シルバ大統領や、ジェラウド・アルキミン副大統領兼開発商工サービス相が出席した。

同拠点への総投資額は55億レアル(約1,540億円、1レアル=約28円)、敷地面積は460万平方メートル以上で、初期段階ではコンプリートノックダウン(CKD)とセミノックダウン(SKD)の生産を行い、輸入部品を使用する(注1)。現時点での年間生産能力は15万台とされており、BYD公式サイト(10月14日付)によると、将来的には30万台、さらに60万台への拡張を目指す。

現地紙「グローボ」(10月9日付)によると、初期生産車種はバッテリー式電気自動車(BEV)「ドルフィン・ミニ」、プラグインハイブリッド(PHEV)「宋PRO」「キング」(注2)だ。また、BYDは11月にブラジル・パラ州ベレン市で開催予定の国連気候変動枠組み条約第30回締約国会議(COP30)を記念し、「宋PRO」のフレックス燃料対応の特別限定モデル(注3)を発表した。自動車業界情報サイト「オートエスポルテ」(10月9日付)によると、同社はこの限定モデル30台をCOP30に参加するブラジル政府代表団に寄付するという。また、自動車業界情報サイト「オートマイス」(10月10日付)によると、同モデルの一般販売は2026年内に開始の見込みだ。

10月9日の完工式で、BYDの王伝福会長兼最高経営責任者(CEO)は「2年前のブラジル訪問時にエタノールの可能性に着目し、ブラジル向けにフレックス燃料エンジンを搭載したPHEV技術を導入することを決定した。このため、この車はブラジルと世界に向けた独自のソリューションを共同でつくりあげたという証しだ」と述べた。李鉄ブラジル事業代表も「エタノールはブラジルのエネルギー転換の戦略的要素であり、当社のシステムに組み込むことは、歴史的なブレークスルーとなる」と強調した。

(注1)BYDは8月19日、部品の現地調達率を2027年までに50%へ引き上げる方針を発表している。

(注2)2024年のブラジルでのBYD輸入車の販売台数は7万6,863台で、xEV車(BEV、PHEV、HEV)全体の新車販売台数の43.3%を占めた。中でも「宋Plus」シリーズ、「ドルフィン・ミニ」シリーズの販売が堅調だった。

(注3)フレックス車とは、ガソリンとバイオエタノールを混合・燃焼して走行可能な車両。

(エルナニ・オダ)

(ブラジル、中国)

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