長城汽車、ブラジルで新工場を開設

(ブラジル、中国)

サンパウロ発

2025年08月21日

中国自動車大手の長城汽車(GWM)は8月15日、ブラジル・サンパウロ州イラセマポリス市の新工場で完工式を開いた。ルイス・イナシオ・ルーラ・ダ・シルバ大統領やジェラウド・アルキミン副大統領兼開発商工サービス相も出席した。長城汽車のブラジルでの総投資額は、2032年までに100億レアル(約2,700億円、1レアル=約27円)を見込んでいる(注1)。新工場の建屋面積は9万4,000平方メートル、敷地面積は12万平方メートル。現在約600人いる従業員は2025年末までに1,000人に増員する計画だ。将来的にラテンアメリカ域内への輸出を目指し、2,000人以上の雇用を生み出す見込みだ。当該工場は長城汽車の米州、南半球で初の生産拠点で、中国国外では3番目の総合生産拠点となる。

同社公式リリースによると、部品はコンプリートノックダウン(CKD)やセミノックダウン(SKD)ではなく、個別に輸入する方式を優先し、早期の現地調達への移行を目指す。既に18社の現地サプライヤーから部品を調達している。18社には、ドイツのティア1サプライヤーのボッシュやコンチネンタル、ドイツの総合化学メーカーBASF、米国タイヤメーカーのグッドイヤー、米国の化学、素材メーカーのデュポンの現地法人等が含まれる。

現時点での年間生産能力は5万台だ。長城汽車の海外事業責任者で副総裁の史青科氏は現地紙「バロール」(8月18日付)のインタビューで、「将来的に年間25万~30万台への生産拡大を目指す」と述べた。最初に生産する車種はスポーツ用多目的車(SUV)「HAVAL H6」のプラグインハイブリッド(PHEV)とハイブリッド(HEV)、ピックアップトラック「POER(パオ)」、SUV「HAVAL H9」(注2)。HAVAL H9とパオはディーゼル車だ。同社はこれまで、バッテリー式電気自動車(BEV)やPHEV、HEVの輸入販売を行い、ブラジル市場でシェアを伸ばしてきた。他方で、同社が実施したブラジルの農村部や都市部以外を対象とした消費者アンケート調査によると、ディーゼルエンジン搭載のピックアップトラックや大型SUVの需要が高かいことが分かった。こうした調査結果も踏まえ、今後、長城汽車はディーゼルエンジン搭載車の生産も積極的に行う方針だ(注3)。

(注1)GWMの公式リリースによると、GWMのブラジルでの総投資額は10年間で100億レアルとされる。この金額は、第1フェーズの投資として2026年までに40億レアル(ブランドの国内展開、イラセマポリス工場の稼働と拡張を含む)、第2フェーズとして、2027年から2032年にかけて60億レアルを追加投資し、雇用の創出、部品の国産化、新製品の開発を推進する。

(注2)長城汽車はこれまで、HAVAL H6のPHEVおよびHEVを輸入販売していた。ブラジル電気自動車協会(ABVE)によると、2024年の新車販売台数でのシェアは、HAVAL H6(HEV)が4.1%、HAVAL H6(PHEV)が6.1%。

(注3)長城汽車の6月15日付公式サイトによる。

(エルナニ・オダ)

(ブラジル、中国)

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