米エヌビディアとAMD、対中AIチップ販売再開条件として米政府に収益15%納付で合意

(米国、中国)

サンフランシスコ発

2025年08月18日

米国半導体大手のエヌビディアとアドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)は、中国市場向け人工知能(AI)半導体の販売再開に向け、輸出ライセンス取得条件として販売収益の15%を米政府に納付することでトランプ政権と合意した。8月11日の会見でドナルド・トランプ大統領が公式に述べた。対象はエヌビディアの「H20」とAMDの「MI308」で、いずれも安全保障上の懸念から過去に対中販売が禁止されていた製品だ(2025年4月17日5月2日記事参照)。

米主要メディアによると、米商務省産業安全保障局(BIS)も8月8日に、両モデルの輸出ライセンスの発給を開始した。米政府が収益分配を条件に、輸出ライセンスを付与するのは前例がないという。

通商専門の弁護士によると、こうした政府との収益分配は、憲法で禁止されている「輸出税」とみなされる可能性があり、法的な異議申し立てに直面する恐れがあるという。この動きは、トランプ政権の国際的なビジネス取引への介入が強まっている流れと一致する。2025年6月の日本製鉄によるUSスチールの買収承認時にも、米政府が「黄金株」を保有するという手法が採られている(2025年6月17日6月19日記事参照)。

エヌビディアの広報担当者は「当社は米国政府が設定するルールに従い、世界市場に参加している」と述べ、「H20は数カ月、中国に出荷していないが、輸出規制が米国の競争力維持につながることを望んでいる」とコメントした。AMDの広報担当者も、同社のAIチップの一部の対中輸出申請が承認されたことを明らかにしたが、収益分配合意には触れず、「米国の輸出管理規則や政策を順守している」とした(ロイター8月12日)。

ブルームバーグによると、中国政府は、「H20」に位置情報追跡や遠隔停止機能があるとの安全保障上のリスクを懸念し、政府関連用途での使用を避けるように国内企業に求めているという。ただし、「H20」の使用を全面禁止する内容ではなく、米シンクタンクのランド研究所のレナート・ハイム氏は「中国政府は同国の通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)のための市場を形成する一方、実需に応じてH20購入も許与している」と分析する。

(松井美樹)

(米国、中国)

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