トランプ米大統領、中国に対するIEEPA追加関税を20%に引き上げる大統領令発表
(米国、中国)
ニューヨーク発
2025年03月04日
米国のドナルド・トランプ大統領は3月3日、国際緊急経済権限法(IEEPA)に基づき、中国に対する追加関税率を10%から20%に引き上げる大統領令を発表した。原則として、中国原産の全品目に20%の追加関税が課される。
トランプ氏は2月1日、フェンタニルをはじめとする違法に製造された麻薬性鎮痛薬の米国への流入阻止を目的に、中国に対して10%の追加関税を2月4日から課す大統領令を発令した(2025年2月3日記事、2025年2月4日記事参照、注1)。今回の大統領令では、中国が違法薬物の危機を緩和するための適切な措置を講じていないこと、フェンタニルなどの流入危機が沈静化していないことから、追加関税率の20%への引き上げを決定した、と記載した。
これにより、中国原産品を米国に輸入する際は、一般関税率〔最恵国(MFN)税率〕に加え、1974年通商法第301条やアンチダンピング税(AD)、補助金相殺関税(CVD)、その他の追加関税などに加えて(注2)、IEEPAに基づく20%の追加関税も課されることになる。
ジェトロが2025年1月に在米日系企業に対して行ったアンケート調査によれば、トランプ氏が提案している関税政策により、「サプライチェーン変更を検討するほどの影響がある」と回答した企業の割合は、「中国からの輸入に対する60%の関税」で46.6%と最多だった。品目によっては既に追加関税率の合計が60%を超えるものもあり、今後の米中間のサプライチェーンへの影響が懸念される。
(注1)ただし、輸入申告額が800ドル以下の少額貨物の輸入に対して、関税支払いなどが免除される非課税基準額(デミニミス)ルールの適用停止は、「適用される関税収入を完全かつ迅速に、処理および徴収するための適切なシステムが整っていることを商務長官が大統領に通知した時点」まで行われない(2025年2月10日記事参照)。
(注2)1962年通商拡大法232条に基づく、鉄鋼・アルミニウム製品への追加関税などが想定される。
(赤平大寿)
(米国、中国)
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