トランプ米政権、エヌビディア製などの半導体輸出管理を強化との報道

(米国)

ニューヨーク発

2025年04月17日

米国商務省が米半導体大手エヌビディア(NVIDIA)の人工知能(AI)向け半導体「H20」を輸出管理対象に加えたと、米主要メディアが4月15日に報じた。政治専門紙「ポリティコ」(4月15日)による商務省への確認によると、H20に加え、同じく半導体大手アドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)の半導体 「MI308」とそれらの同等品について、マカオおよび輸出管理規則(EAR)上の国別グループ「グループD:5」外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます(注1)に輸出する際に、事前許可(ライセンス)が必要になるという。

バイデン前政権では、「小さな庭に高いフェンス(small yard, high fence)」の考え方の下、中国に対する先端半導体の輸出を中心に、EARの強化を図ってきた(2025年1月14日記事参照)。H20はこうした制約の下で開発され、法律上、中国に輸出可能な最も優れたAI向け半導体だという(NPR4月9日)。トランプ政権は中国に対し、国際緊急経済権限法(IEEPA)などに基づいて、高い関税率を課すなど(注2)、中国に厳しい姿勢を示しており、輸出管理でも、同様の姿勢をとったかたちだ。2期目のトランプ政権発足以降、商務省産業安全保障局(BIS)が3月に、EAR上のエンティティー・リスト(EL)に80の事業体を追加したほか(2025年3月26日記事参照)、4月にボイコット(取引拒否)を要請したと確認された事業者のリストの更新外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますなどを行ってきたが、半導体に対する輸出管理強化といった分野に特化した大きな動きは今回が初となる。

米国では、AI向けを含む先端半導体の中国への輸出を制限しているにもかかわらず、中国発のAIスタートアップ「ディープシーク」が登場したことにより(2025年1月31日記事参照)、輸出管理を今後も強化していくのか、その方向性が注目されていた。米国の輸出管理に詳しい弁護士はジェトロに対して、「ディープシークの登場で、米国政府の輸出管理に対する姿勢は大きく変わるかもしれない。輸出管理を強化することによって、技術開発を遅らせるというのはあまり効果がないことが露呈した。規則をこれ以上厳しくすると、米国企業のビジネス機会をただ奪うだけになってしまいかねない」との見解を示していた。ドナルド・トランプ大統領は、AIを含め、規制緩和には積極的な姿勢を示しているほか(2025年4月9日記事参照)、「米国第一の通商政策」でも、「先端技術が敵対者に流出しないようにしなければならない」としつつも、「輸出規制はシンプルで厳格かつ効果的であるべきだ。同時に、米国のAIの優位性を促進しなければならない」と報告されていた(2025年4月7日記事参照)。

ただ、政府効率化省(DOGE)などによる連邦政府職員の削減などの影響もあり、2期目のトランプ政権下の輸出管理の方針や全体像はいまだにはっきりしない。今後の輸出管理政策の方向性には、引き続き注視する必要がある。

(注1)「グループD:5」には中国も含まれる。

(注2)中国原産品を米国に輸入する際は、最恵国(MFN)税率のほか、IEEPAに基づく合成麻薬フェンタニル流入阻止を目的とした20%(2025年3月4日記事参照)、IEEPAに基づく相互関税125%に加え(2025年4月11日記事参照)、1974年通商法301条に基づく7.5~100%(多くが25%)も課されることになる。なお、輸入する製品がアンチダンピング税(AD)や補助金相殺関税(CVD)の対象の場合は、これら関税も加算される。ただし、1962年通商拡大法232条に基づく追加関税の対象品目に対しては、相互関税は賦課されない。

(赤平大寿)

(米国)

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