米USTR、301条に基づく米中第1段階の経済・貿易協定の履行状況の調査開始

(米国、中国)

ニューヨーク発

2025年10月27日

米国通商代表部(USTR)のジェミソン・グリア代表は10月24日、1974年通商法301条に基づき、「米国と中国の経済貿易協定」(第1段階の経済・貿易協定)の中国の履行状況を調査すると発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした(官報PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます))。中国が第1段階合意に基づく約束を完全に履行しているか、約束の不履行によって米国の通商に負担や制限が生じているか、その場合、どのような対応を取るべきか、などについて調査する。

米国と中国は、第1次トランプ政権下の2020年1月に、中国が知的財産の保護や金融市場の開放、為替操作の禁止、米国からの輸入拡大などを約束する第1段階の経済・貿易協定に署名した(米国側:2020年1月16日記事、中国側:2020年1月17日記事参照)。だが、USTRは「発効から5年が経過したが、中国は非関税障壁、市場アクセス問題、米国製品・サービスの購入に関して、第1段階合意に基づく約束を果たしていないようだ」と指摘した。具体的には、「中国は2020~2021年に、5,350億ドル超の米国製品・サービスの購入を約束したが、米国政府の輸出統計によれば、中国の購入額は合計2,170億ドル以上不足している」などと指摘した。USTRは、米国企業の輸出や投資に対して障壁となる外国の貿易慣行などをまとめる「外国貿易障壁報告書(NTE)」で、例年、中国による第1段階合意の不履行を問題視している(2025年4月2日記事参照)。

これらを踏まえ、USTRは301条に基づく調査を開始する。301条は、外国の不公正な政策や慣行が米国の商業に損害や制限を与えていると調査を通じて判断された場合に、USTRが大統領の指示に従って追加関税などの輸入制限措置を講じることを認めている(注1)。調査開始にあたりUSTRは、中国による約束不履行の事例、約束の不履行が米国商取引に与える負担、これら問題に対処するために取るべき措置(関税率や対象品目など)などについて、パブリックコメントを募集する。パブリックコメント、および公聴会への出席要請は12月1日までに、提出する必要がある。公聴会は12月16日に行う(注2)。

なお、ドナルド・トランプ大統領と習近平国家主席は、10月30日に韓国で首脳会談を行う予定だ。USTRは、会談が間近に迫る中、中国に対する強硬な姿勢を示したかたちだ。そのほか、中国に対する相互関税の適用停止期限が11月10日に迫っており、これら課題が首脳会談を通じて解決されるのか注目点の1つになる。

(注1)具体的な手続きは、同法302~309条で規定される。301条に基づく調査や発動の手続きの詳細は、2024年12月10日付地域・分析レポート参照

(注2)コメントの提出、公聴会への出席要請は、10月31日から、USTRのウェブサイト外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを通じて可能になる。

(赤平大寿)

(米国、中国)

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