ジェトロ対日投資報告2022
第3章 最近の政府施策
第1節 経済財政運営と改革の基本方針2022

新型コロナウイルス感染症、ロシアのウクライナ侵略、気候変動問題など、我が国を取り巻く環境に構造変化が生じているとともに、国内においては、輸入資源価格の高騰、人口減少・少子高齢化、潜在成⻑率の停滞、災害の頻発化・激甚化など、内外の難局が同時かつ複合的に押し寄せている。

こうした中、この難局を単に乗り越えるだけでなく、社会課題の解決に向けた取組それ自体を付加価値創造の源泉としていくことが必要とされており、官民が協働して重点的な投資と規制・制度改革を中長期的かつ計画的に実施することにより、課題解決と経済成長を同時に実現しながら、経済社会の構造を変化に対してより強靱で持続可能なものに変革する「新しい資本主義」を起動することが求められている。このような背景をもとに、「経済財政運営と改革の基本方針2022」が2022年6月7日に閣議決定された。

同方針では、「人への投資」を始め、科学技術・イノベーションへの投資、スタートアップへの投資、グリーントランスフォーメーション(GX)、デジタルトランスフォーメーション(DX)への投資を柱とする「新しい資本主義」の実現に向けた重点投資分野についての官民連携投資の基本方針を示している。

特に、「人への投資」は、「新しい資本主義」に向けて計画的な重点投資を行う科学技術・イノベーション、スタートアップ、GX、DXに共通する基盤への中核的な投資ともなり、民間投資を喚起しての生産性向上による収益・所得増加と併せることにより、 自律的な経済成長の実現が期待される。

「経済財政運営と改革の基本方針2022」で示された5つの重点投資分野の概要を図表3-1に示す。これらの重点分野では、「人への投資」を強化する3年間で4,000億円規模の施策パッケージ、「第6期科学技術・イノベーション基本計画」、 「スタートアップ育成5か年計画」、「クリーンエネルギー戦略」、「デジタル田園都市国家インフラ整備計画」、「デジタル社会の実現に向けた重点計画」などをもとに必要な制度改革などを行い、官民連携の下、中長期的・計画的に推進する。

図表3-1 新しい資本主義に向けた重点投資分野
No. 重点投資分野 概要 計画
1 人への投資と分配
  • 人的資本への投資
  • 多様な働き方の推進
  • 質の高い教育の実現
  • 賃上げ・最低賃金の引上げ
  • 資産所得倍増プラン
「人への投資」を強化する3年間で4,000億円規模の施策パッケージ
2 科学技術・イノベーションへの投資
  • 研究開発投資を増加する企業に対するインセンティブ付与
  • 量⼦、AI、バイオテクノロジー・医療分野へ官⺠連携による投資拡充や宇宙・海洋分野の取組の強化
  • イノベーション創出拠点である大学での産学官連携など戦略的経営の抜本強化
  • 若手人材に対する支援の強力推進
第6期科学技術・イノベーション基本計画
3 スタートアップへの投資
  • 5年で10倍増を視野にしたスタートアップ育成5か年計画の策定
  • IPOプロセスの見直し、ストックオプションなどの環境整備
  • 起業を支える人材の育成や確保、研究者と経営⼈材等のマッチングの⽀援
  • オープンイノベーションの活性化や公共調達の活用推進
スタートアップ育成5か年計画
4 グリーントランスフォーメーション(GX)への投資
  • 今後 10 年間における150 兆円超の投資実現のための「成⻑志向型カーボンプライシング構想」の具体化
  • トランジション・ファイナンスなどの新たな金融手法の活用
  • 「GX実行会議」の設置
  • 脱炭素投資を後押しする重点的な環境整備(蓄電池、車両購入支援、インフラ整備、水素・アンモニア、CCUS/カーボンリサイクル、革新原子力、核融合等)
  • グリーンボンドなどの環境関連商品を取り引きするグリーン国際金融センターの実現


クリーンエネルギー戦略
5 デジタルトランスフォーメーション(DX)への投資
  • デジタル改革・規制改革・行政改革の一体的推進
  • 法人設立時の手続き迅速化、費用軽減を含む規制改革の推進
  • 自動運転⾞や空⾶ぶクルマ、物流・⼈流分野のDX・標準化、MaaS推進やテクノロジーマップの整備
  • 医療・介護、教育、インフラ、防災に係るデータ・プラットフォームの早期整備
  • デジタル田園都市国家インフラ整備計画
  • デジタル社会の実現に向けた重点計画

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