ジェトロ対日投資報告2021
第3章 ジェトロの対日投資促進事業
第2節 ジェトロによる対日直接投資支援

外国企業の日本進出・外資系企業の国内ビジネス拡大のために一貫した支援を提供

対日直接投資誘致機関であるジェトロは、外国企業が日本に進出し国内市場でビジネスを拡大するための支援として、日本のビジネス環境に関する情報発信から、対日直接投資に関心のある企業の発掘、日本での拠点設立支援、日本国内でのビジネス拡大の支援までを一貫して提供する(図表3−8)。また、外国・外資系企業による進出・ビジネス拡大を都市圏のみならず日本全国で広く促進するため、国内の自治体向けに外国企業誘致のための支援を提供するほか、ビジネス環境のさらなる改善に向けた働きかけを日本政府に対して行う。

図表3-8 ジェトロの対日投資促進事業
ジェトロの対日投資促進事業を説明した概念図。 政府向け・情報提供。日本のビジネス環境の改善要望等の取りまとめ・政策提言/既進出外資系企業への情報提供,1.対日投資関心企業や進出外資系企業からの日本のビジネス環境の改善要望等の取りまとめと政府関係者等への提言・情報提供,2.日本の投資環境の改善成果の情報発信。自治体向け。外国企業誘致戦略策定支援,1.誘致戦略策定への助言,2.トップセールス支援(場の提供等),3.海外企業向けセミナーの開催。外国企業へのアプローチ支援,1.対日投資関心企業の招へい。企業向け。日本のビジネス情報の発信,1.ウェブサイト「Investing in Japan」による情報発信,2.各種資料・パンフレットの提供,3.海外企業向けセミナーの開催。対日投資/協業連携関心企業の発掘日本市場の調査・分析戦略提案。1.イベント・展示会・ネットワーキングを通じた企業発掘,2.市場情報・規制情報等の情報提供,3.参入戦略の提案,パートナー候補企業とのマッチング。対日投資・ビジネスサポートセンター(IBSC)を通じた立上支援。1.テンポラリーオフィスの提供(東京、大阪、横浜、名古屋、神戸、福岡),2.登記手続き、法務、労務、税務関連のアドバイス,3.人材探し・オフィス物件探し支援。日本企業とのビジネス拡大(国内外), 1.ビジネスマッチング機会の提供,2.自治体との協業支援,3.二次投資・拡大支援,4.J-Bridgeを通じた協業・連携案件形成支援。

1)日本企業と海外のスタートアップ企業などとのオープンイノベーションを促進

ジェトロは日本企業と海外のスタートアップ企業等との協業・連携によるオープンイノベーションを推進することを目的に、ビジネス・プラットフォーム「ジャパン・イノベーション・ブリッジ(J-Bridge)」を2021年2月に立ち上げた。デジタルやグリーンなどの分野で、国内外における企業間の協業を後押しし、海外企業の活力取り込み、ひいては対日投資の拡大を目指す。

具体的には、オンラインセミナーやピッチイベントなどによる情報発信のほか、J-Bridge会員日本企業向けに、海外有望企業の紹介、面談アレンジ、専門家によるコンサルテーション、メンタリングやマッチングなどのプログラムから成る一貫支援などのサービスを提供している。J-Bridge会員には、2021年11月時点で約500社・600名が登録している。また、J-Bridgeにはベンチャー・キャピタルや銀行などがパートナーとして参画しており、ファイナンスや企業間交渉など様々な知見を持つ関係者が一体となって日本企業を支援することを目指している。

2)ジェトロによる情報発信

ジェトロは外国企業ならびに国内の外資系企業に対し、ウェブサイトやオンラインイベントなどをとおして情報提供を行っている。2021年に全面改訂を行ったジェトロの対日投資ウェブサイトは、日本語を含む7言語で様々な情報発信をする(図表3−9)。日本の投資環境の概況として、日本国内でも特に有望な市場に焦点を当てた「対日投資有望産業」や日本市場・社会の魅力を伝える「Why Japan?」にて市場の特徴などを把握できるほか、「日本での拠点設立方法」では、法人設立に必要な登記や査証や税制、労務など幅広い情報を提供する。日本への進出形態、拠点設立手続き、就労ビザの取得などに関する解説動画も掲載する。また、「地域進出支援ナビ」は、都道府県ならびに主要都市の経済・社会の基礎情報から、産業、インフラ、インセンティブに関する情報などを一元的に閲覧することのできるポータルである。「外資系企業動向」や「サクセスストーリー」では、これまで日本に進出した企業の事例紹介を行っており、日本に関心を持つ外国企業を中心に、多くのアクセスを集める。

図表3-9 ジェトロ対日投資ウェブサイト
ジェトロ対日投資ウェブサイトの画像。 日本のGDP(50818億米ドル),対日直接投資残高(33.9兆円),特許出願件数(2019年)(307,969件)

ウェブサイトでの情報発信に加え、ジェトロはコロナ禍において様々なオンラインイベントを開催し、日本の魅力を海外に発信している。東京オリンピック・パラリンピックの開催と併せ、ジェトロは2021年7月28日から9月10日にかけてこれまで以上に大型のオンラインイベントとなるNET ZERO Leaders Summit (Japan Business Conference 2021)を開催した(図表3−10)。同イベントでは、世界の有識者の登壇により、日本を含めた世界の各国・地域が注目するカーボンニュートラルに向けた議論が展開された。さらに、来場者がオンラインアバターとなって仮想空間に用意されたジェトロや日本企業・自治体のブースを訪問し、チャット機能などを用いて出展者とリアルタイムのコミュニケーションが取れるなど、コロナ禍により物理的なイベント開催が困難な中、オンラインの利点を活かしたイベントとなった。

図表3-10 3Dバーチャル会場におけるロビーの様子
3D バーチャル会場におけるロビーの様子の画像。 NET ZERO LeadersSummit (Japan Business Conference 2021)

3)外国・外資系企業に寄り添った個別支援体制

ジェトロの「外国企業パーソナルアドバイザー(PA)」制度は、ジェトロの対日直接投資支援の核となるサービスだ。PA制度では、ジェトロの外国企業誘致担当者が外国企業に寄り添い、日本での法人設立やビジネス活動を行う上で必要となる規制、行政手続きなどに向き合うことで、きめ細やかなサポートを提供する。上記のほか、税務・労務・法務に関するコンサルテーション、市場・規制情報の提供、ビジネスイベントへの参加など、各社のニーズに応じた支援を、柔軟に提供する。

ジェトロは国内6拠点(東京、横浜、名古屋、大阪、神戸、福岡)などで展開する「対日投資・ビジネスサポートセンター(IBSC)」にて、外国企業が日本での法人設立準備の際に利用できるテンポラリーオフィス(50営業日まで無料)を提供している。ジェトロ国内拠点のIBSC入居企業には、専属スタッフや専門家による様々な支援を行っている。ジェトロ本部内のIBSCには、東京での法人設立時に必要な手続きの窓口が一ヵ所に集約された「東京ワンストップセンター(TOSBEC)」(運営主体:国・東京都)が隣接しており、日本で拠点設立を行う企業の対応を行う。

また、世界中どこからでも相談を受け付けるべくジェトロは「デジタルIBSC(Digital IBSC)」を推進しており、外国・外資系企業の日本への進出やビジネス拡大をオンラインでも支援する。各種情報提供、コンサルテーション などもオンラインで提供している。

上記のサービスに加え、国内に進出した外資系企業のビジネス拡大を後押しするため、ジェトロは国内大学と連携し、外資系企業と国内学生を結ぶイベントを開催する。2021年11月に開催予定の「キャリア・ディスカバリー」では、全国14大学に通う外国人留学生、留学経験者、外資系企業への関心を有する学生など約600名以上を対象として、ジェトロの支援を受ける外資系企業約30社とオンラインで交流を行うイベントを開催する。また、2021年10月から2022年1月末にかけて、国内5大学にてジェトロと外資系企業を講師とした特別講座を実施し、日本における外資系企業の活躍や、外資系企業でのキャリアなどについて対象大学に通う学生に対して講義を行う。外資系企業の国内ビジネス拡大において、適切な人材の確保が以前から大きな課題として挙げられており、ジェトロの新たなサービスが課題解消の一助となることが期待される。

4)地域への対日直接投資誘致支援

ジェトロは、外国・外資系企業支援のほか、これらの企業誘致を行う自治体に対してもジェトロがこれまでに培った知見やリソースを基にキャパシティビルディングから外国企業とのマッチングまで、様々な支援を提供する(図表3−11)。

図表3-11 サポートプログラムの主な支援内容
項目 支援メニュー 内容
(1) 誘致ノウハウの提供 基礎研修 担当者向けに外国企業誘致の基礎研修を開催
スキルアップ研修 誘致活動のスキルアップに向けた研修を開催
専門家・コンサルタントの個別派遣 誘致戦略策定等のために専門家やコンサルタントを当該地域に派遣し、研修や勉強会を開催
(2) PR・広報サポート 海外向けオンラインセミナー ジェトロ海外事務所又は海外企業向けに分野別のオンラインセミナーを開催
地域ブランディング強化支援事業 海外での更なる自治体のブランド力向上を目指して、海外のコンサルタントを通じて、海外の視点から誘致戦略やPR資料の見直しをサポート。
(3) 外国企業のマッチング・招へい RBC事業 ジェトロが企画したプログラムに参加したい外国企業や自治体を募集
ターゲット集中型招へい事業 誘致確度の高い外国企業に対し、地域のビジネスチャンスを集中的にPR。地域企業等とのマッチングを実施。
(4) その他 (ジェトロ案件企業向け)地方向けテンポラリーオフィス サポプロ対象自治体において、拠点設立を希望しているジェトロ案件企業に対して、無料のテンポラリーオフィスを提供。(原則50営業日)

上述のとおり、ジェトロのウェブサイトの「地域進出支援ナビ」では各自治体の情報を外国企業に検索可能な形で届ける。また、2018年度に発足した「地域への対日直接投資サポートプログラム(以下、サポートプログラム)」をとおし、参加自治体に対して、ジェトロ職員や専門家による誘致ノウハウの提供を行う。外国企業を誘致する上で非常に重要となる海外への広報サポートとしては、ジェトロの海外ネットワークを活用し、参加自治体がオンラインで直接、外国企業に魅力を伝えることのできるセミナーを開催する。さらに、新たな事業として、選定された自治体に対し、当該地域の魅力の発信力を強化するため、地域ブランディングの強化新事業を開始し、2021年7月に1つ目の対象地域として福岡市を選定した。対象地域の持つ魅力を最大限に広報し、外国企業に伝えることができるよう、サポートを拡充しつつある。

また、サポートプログラム参加の自治体の一部に対し、外国企業とのオンラインマッチングも提供する。同マッチング支援では、外国企業の注目が高く、かつ参加自治体の強みが発揮される分野としてコロナ禍で更なる革新が期待されるヘルステック、産業の高度化に大きく寄与するファクトリーテック、コロナ収束後の需要拡大が期待されるトラベルテックの3分野に対象を絞り、オンラインマッチングを提供し、具体的な連携が見込める場合には、外国企業の将来的な招へいや視察の機会の提供を予定する。

5)ビジネス環境改善のための政府への働きかけ

日本のビジネス環境整備のため、ジェトロは外国・外資系企業から規制などの改善要望を聞き取り、政府や関係省庁との面談の調整や働きかけを行う。ジェトロは日本政府と外国・外資系企業との橋渡し役として、企業から相談や要望を受付、関係省庁との面談を行う「対日投資ホットライン」や、日本政府が2018年に開始した「規制のサンドボックス制度」の外国・外資系企業のための相談窓口としての役割を担う。さらに、日本に重要な投資を行う外国企業に対して、副大臣が相談を受ける「企業担当制」でも、ジェトロは関係省庁との面談同席などをとおし、外資系企業の日本でのビジネス展開をサポートする。2020年6月には、新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえ、外国企業や在日外資系企業に対する日本国内ビジネスに関連する相談窓口を「外国企業ヘルプライン」を設置している。 そのほか、ジェトロは関連大臣などが制度改革などの実現に向けて開催する対日直接投資推進会議の構成員を務めるほか、2020年10月から2021年5月にかけて開催された対日直接投資促進のための中長期戦略検討ワーキング・グループの副座長を務めるなど、関係省庁と協力しながら日本のビジネス環境整備に向けて取り組んでいる。

ジェトロは今後、対日直接投資促進戦略に基づき、内閣府や経済産業省などとともに、日本のビジネス環境の改善に対する取り組みをより一層強化する。 取り組み強化の一環として、2021年9月から10月にかけて「外資系企業ビジネス実態アンケート」を実施し、全国の外資系企業の事業概要ならびに日本のビジネス環境に関して意見を集めた。同アンケートは集計を行ったのち、2022年の春以降にジェトロのウェブサイトなどで公表する。

【執筆者】対日投資部対日投資課
1章 長﨑勇太 吉田薫 中山史子
2章 吉田薫 中山史子
3章 長﨑勇太 吉田薫

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