ジェトロ対日投資報告2021
第1章 世界・日本のマクロ経済・対内および対外直接投資動向
第2節 世界・日本の直接投資動向
対日直接投資動向 part1

対日直接投資フロー
2020年の対日直接投資額は7.1兆円に

2020年の対日直接投資額(ネット、フロー)は、前年比61.8%増の7.1兆円だった(図表1-20)。比較可能な2014年以降では、2016年の4.5兆円を大きく超えて最多となった。

図表1-20 対日直接投資額
1996年から2013年の対日直接投資額は、1996年マイナス31億円、1997年3045億円、1998年3169億円、1999年1兆7179億円、2000年1兆1616億円、2001年6010億円、2002年1兆4666億円、2003年1兆296億円、2004年8207億円、2005年5502億円、2006年マイナス2486億円、2007年2兆5947億円、2008年2兆5303億円、2009年1兆1478億円、2010年6636億円、2011年マイナス693億円、2012年407億円、2013年1兆501億円。2014年以降の対日直接投資額は、2014年2兆745億円、2015年6272億円、2016年4兆4915億円、2017年2兆1144億円、2018年2兆7949億円、2019年4兆3630億円、2020年7兆581億円、2021年1~8月は1兆9517億円。

〔注〕2013年以前は計上原則が異なるため、単純比較はできない。
〔出所〕「国際収支統計」(財務省、日本銀行)から作成

2020年の対日直接投資額(7.1兆円)を資本形態別にみると、株式資本※4が前年比49.8%減の0.6兆円、収益の再投資※5が同2.6%減の1.4兆円、負債性資本※6が同183.7%増の5.1兆円であった(図表1-21)。世界的なコロナ禍による経済・社会への影響などを受け、日本への新たな投資や増資の傾向を表す株式資本は、過去最多となった2019年と比較して半減した。他方、資本関係にある企業間の資金貸借などを表す負債性資本が大きく増加しており、この増加が2020年の対日直接投資額の増加の主要因となった。特に負債性資本が大きく増加した2020年6月の財務省による発表※7をみると、負債性資本の増加は日本企業による「海外関連会社からの借入等」が原因とされた。同統計の計上原則(資産負債原則※8)の性質上、日本企業による海外子会社などからの借り入れが対日直接投資額に反映されており、全体の金額を押し上げた。

  1. ※4

    「株式資本」は、外国企業による議決権ベースで10%以上の株式取得や、支店の持ち分およびその他の資本拠出金を計上した金額。

  2. ※5

    「収益の再投資」は、外国企業が出資する日本企業や在日子会社の未配分収益のうち、外国企業の出資比率に応じた取り分を計上した金額。

  3. ※6

    「負債性資本」は、資本関係のある企業間の資金貸借や債券の取得処分などを計上した金額。

  4. ※7
  5. ※8

    資産負債原則外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」は、本邦から海外への投資を資産(対外投資)、海外から本邦への投資を負債(対内投資)とする。

図表1-21 対日直接投資額(資本形態別)
対日直接投資額を資本形態別で見ると、株式資本:2019年1兆1665億円、2020年5856億円。収益の再投資:2019年1兆3935億円、2020年1兆3576億円。負債性資本:2019年、1兆8029億円、2020年5兆1149億円。

〔出所〕「国際収支統計」(財務省、日本銀行)から作成

2020年の対日直接投資額を地域別にみると、欧州が前年比351.3%増の4.1兆円で最多となり、次いで北米が前年比20.6%増の2.3兆円、アジアが同1.6%減の1.0兆円などで続いた(図表1-22)。

図表1-22 対日直接投資額(地域別)
対日直接投資額を地域別で見ると、欧州:2019年9049億円、2020年4兆834億円。北米:2019年1兆8814億円、2020年2兆2686億円。アジア:2019年1兆401億円、2020年1兆235億円。中東:2019年142億円、2020年86億円、アフリカ:2019年646億円、2020年マイナス6億円。中南米:2019年2802億円、2020年マイナス1936億円。大洋州:2019年1775億円、2020年マイナス1318億円。

〔出所〕「国際収支統計」(財務省、日本銀行)から作成

最多の欧州については 、英国が前年比969.9%増の3.3兆円で世界の国・地域別で最多、スイスが同704.4%増の0.8兆円で3番目に多く、両国からの投資が欧州の投資の大半を占めた(図表1-23)。国・地域別で2番目に多かった米国は前年比21.1%増の2.3兆円だった。2020年の対日直接投資額で上位国となった英国、米国、スイスからの投資を資本形態別にみると、いずれの国も負債性資本の割合が最も多いことが窺える※9

  1. ※9

    単年の対日直接投資額の統計では、投資元国・地域ごとの資本形態別の統計は存在しない。投資元国・地域および資本形態別に統計の入手が可能である対日直接投資残高の推移を参照。

図表1-23 対日直接投資額(国・地域別)(億円、%)
2020年
順位
出資国・地域 順位
変動
2020年 2020年
前年比
1 英国 上昇 32,674 969.9
2 米国 下降 22,605 21.1
3 スイス 上昇 7,610 704.4
4 シンガポール 下降 5,462 98.3
5 中国 横ばい 1,434 -31.5
6 フランス 横ばい 1,398 -19.5
7 香港 下降 1,239 -45.4
8 オランダ 上昇 1,215
9 タイ 横ばい 1,080 -4.8
10 ドイツ 上昇 819 235.7
全体 70,581 61.8

近年、日本への投資が増加傾向にあるアジアをみると、シンガポールは前年比98.3%増の0.5兆円となったものの、その他の主要投資国・地域は中国が同31.5%減、香港が同45.4%減など、軒並み減少となった。

業種別の対日直接投資額は、非製造業が大半を占める

2020年の業種別の対日直接投資額は前年比26.8%減の1.1兆円と、2017年以来3年ぶりの前年比減となった。大業種別にみると、非製造業が1.1兆円(全体の96.8%)、製造業が0.03兆円(全体の3.2%)で、大半が非製造業であった(図表1-24)。

図表1-24 対日直接投資額(業種別)
2020年の対日直接投資額を業種別で見ると、非製造業が96.8%、製造業が3.2%。

〔注〕国・地域別の統計とは計上原則が異なる。
〔出所〕「国際収支統計」(財務省、日本銀行)から作成

詳細業種をみると、金融・保険業が前年比3.7%減の1.2兆円と最も多く、次に多かった輸送機械器具(前年比18.4%減の0.2兆円)の約6倍と、他業種を圧倒した(図表1-25)。金融・保険業の投資を国別にみると、最多だった米国は前年比40.5%減の0.7兆円だったものの、シンガポールが前年の約3倍となる0.4兆円となったほか、欧州諸国の増加もみられ、全体として前年と同水準の投資額となった。製造業では、例年、比較的金額の大きい電気機械器具が前年比90.4%減の0.03兆円、化学・医薬がマイナス0.2兆円の引揚超過となり、全体を押し下げた。

図表1-25 対日直接投資額(上位10業種)(億円、%)
順位 業種 2020年 2020年
前年比
1 金融・保険業 12,445 -3.7
2 輸送機械器具 1,992 -18.4
3 サ-ビス業 1,950 38.1
4 電気機械器具 325 -90.4
5 運輸業 256 11.5
6 一般機械器具 254
7 ガラス・土石 243
8 石油 77
9 繊維 40 44.8
10 鉄・非鉄・金属 35 -70.2
化学・医薬 -2,227
卸売・小売業 -4,004

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