ジェトロ対日投資報告2021
第1章 世界・日本のマクロ経済・対内および対外直接投資動向
第2節 世界・日本の直接投資動向
世界の対内直接投資動向 part1

2020年の世界の対内直接投資額は前年比34.7%減の9,990億ドル

国際連合貿易開発会議(UNCTAD)によると、2020年の世界の対内直接投資(ネット、フロー。以下、対内直接投資額)は9,990億ドルだった(図表1-5)。新型コロナウイルスの影響を大きく受け前年比34.7%減となり、減少幅は2008-~2009年の金融危機を超えたほか、1兆ドルを下回るのは2005年以来となった。

図表1-5 世界の対内直接投資額

〔注〕先進国・地域の地域区分はUNCTADの区分に準拠する。途上国・地域は全体から先進国・地域を差し引いて算出。
〔出所〕「World Investment Report 2021」(UNCTAD)から作成

金額の内訳をみると、先進国・地域への投資金額が前年比58.3%減の3,120億ドル、新興国・地域向けが同12.1%減の6,870億ドルだった(図表1-6)。両地域で前年比減となったほか、特に先進国・地域は2003年の水準まで低下した。2020年の対内直接投資額の割合はそれぞれ先進国・地域が31.3%、新興国・地域が68.7%となり、後者の割合は過去最高となった。先進国・地域は大幅な前年比減を受けて割合が小さくなり、新興国・地域の割合は2018年以降、3年連続で5割を超えた。

図表1-6 世界の対内直接投資額(地域別)(10億ドル、%)
地域名 2019年 2020年
フロー 前年比 割合 フロー 前年比 割合
世界 1,530 6.5 100.0 999 -34.7 100.0
先進国・地域 749 5.8 48.9 312 -58.3 31.3
階層レベル2の項目欧州 363 5.3 23.7 73 -80.0 7.3
階層レベル2の項目北米 309 18.2 20.2 180 -41.7 18.0
新興国・地域 781 7.2 51.1 687 -12.1 68.7
階層レベル2の項目アフリカ 47 3.9 3.1 40 -15.6 4.0
階層レベル2の項目アジア 516 3.8 33.7 535 3.8 53.6
階層レベル2の項目中南米 160 6.9 10.5 88 -45.4 8.8

先進国・地域をみると、欧州が前年比80.0%減の730億ドル、北米が同41.7%減の1,800億ドルだった。国・地域ごとにみると、米国は2020年も最大の投資受け入れ国であったものの、前年比40.2%減の1,560億ドルだった(図表1-7)。欧州諸国をみても、ルクセンブルク(前年比320.1%増)やスウェーデン(同158.2%増)が前年を大きく上回って上位となった一方で、その他の主要投資受け入れ国ではドイツが同34.1%減、アイルランドが同58.8%減、オランダが引揚超過になるなど、新型コロナウイルスによる投資の減退や多国籍企業の資金繰りの影響を受け、主要各国で前年から大きく投資額が減少した。

図表1-7 2020年対内直接投資額上位10カ国・地域(10億ドル、%)
2020年
順位
国・地域名 順位
変動
2019年 2020年 2020年
前年比
2020年
割合
1 米国 横ばい 261 156 -40.2 15.6
2 中国 横ばい 141 149 5.7 15.0
3 香港 上昇 74 119 61.7 11.9
4 シンガポール 下降 114 91 -20.7 9.1
5 インド 上昇 51 64 26.7 6.4
6 ルクセンブルク 上昇 15 62 320.1 6.2
7 ドイツ 上昇 54 36 -34.1 3.6
8 アイルランド 下降 81 33 -58.8 3.3
9 メキシコ 上昇 34 29 -14.7 2.9
10 スウェーデン 上昇 10 26 158.2 2.6
20 日本 上昇 15 10 -29.5 1.0
オランダ 上昇 49 -115 -335.5 -11.5
世界 1,530 999 -34.7 100.0

新興国・地域の減少幅は、先進国・地域と比較すると小さかった。地域別にみると、アフリカ(前年比15.6%減)や中南米(同45.4%減)などが前年比減となるなか、アジアは同3.8%増となった。国・地域別にみても、中国が同5.7%増の1,490億ドル、香港が同61.7%増の1,190億ドル、インドが同26.7%増の640億ドルなど、前年比増の国・地域がみられた。UNCTADは、多国籍企業の資金戦略の影響のほか、中国では比較的早期に新型コロナウイルスの感染拡大の抑え込みができたことなどが、同地域の堅調な投資受け入れを可能にしたと指摘する。

世界のグリーンフィールド投資件数は2年連続で減少

fDi Markets(Financial Times)によれば、2020年の世界のグリーンフィールド投資※3(公表日ベース)件数は、前年比30.2%減の11,781件だった(図表1-8)。新型コロナウイルスの影響を受け、グリーンフィールド投資件数は大きく落ち込み、過去最多となった2018年から2年連続で前年比減となった。2021年1~8月期をみると、直近2年の同時期と比較しても件数は伸び悩んでおり、世界的なグリーンフィールド投資件数の持ち直しには、時間を要することが窺える。

  1. ※3

    新たに投資先国に法人を設立する形態の投資を指す

図表1-8 世界のグリーンフィールド投資件数
世界のグリーンフィールド投資件数は、2003年8,403件、2004年前年比6.4%増8,956件、2005年前年比6.4%増9,532件、2006年前年比17.5%増11,196件、2007年前年比3.9%増11,637件、2008年前年比33.1%増15,486件、2009年前年比18.0%減12,698件、2010年前年比5.8%増13,429件、2011年前年比12.0%増15,042件、2012年前年比8.5%減13,766件、2013年前年比3.5%増14,250件、2014年前年比3.0%減13,829件、2015年前年比3.4%減13,352件、2016年前年比1.1%増13,497件、2017年前年比5.4%増14,228件、2018年前年比19.7%増17,033件、2019年前年比1.0%減16,868件、2020年前年比31.2%減11,600件。2019年1~8月では11,625件、2020年同時期では8,302件、2021年同時期では6852件。

〔出所〕「fDi Markets」(Financial Times)(2021年10月11日時点)から作成

2020年の件数を投資元国・地域別にみると、米国が前年比32.9%減の2,446件で最多で、次いで英国が1,138件(同28.7%減)、ドイツが1,051件(同28.6%減)などで続いた(図表1-9)。上位10ヵ国・地域の全てが前年比減となったものの、国・地域の順位に入れ替わりは少なく、日本と中国(香港を除く)を除いた全ての国が欧米諸国だった。

図表1-9 2020年世界のグリーンフィールド投資件数(投資元国・地域別)(件、%)
順位 国・地域 順位
変動
件数 前年比 割合
1 米国 横ばい 2,446 -32.9 20.8
2 英国 横ばい 1,138 -28.7 9.7
3 ドイツ 横ばい 1,051 -28.6 8.9
4 フランス 横ばい 682 -27.8 5.8
5 スイス 上昇 604 -25.2 5.1
6 日本 下降 547 -34.7 4.6
7 中国 横ばい 394 -40.4 3.3
8 オランダ 上昇 386 -24.6 3.3
9 スペイン 下降 340 -34.5 2.9
10 スウェーデン 上昇 299 -7.7 2.5
世界 11,781 -30.2 100.0

グリーンフィールド投資の投資先国・地域をみると、米国が前年比20.7%減の1,529件で最多で、次いでドイツが964件(同17.5%減)、英国が873件(同34.9%減)などとなった(図表1-10)。グリーンフィールド投資の上位受け入れ国・地域は軒並み前年比減となった。

図表1-10 2020年世界のグリーンフィールド投資件数(投資先国・地域別)(件、%)
順位 国・地域 順位
変動
件数 前年比 割合
1 米国 横ばい 1,529 -20.7 13.0
2 ドイツ 上昇 964 -17.5 8.2
3 英国 下降 873 -34.9 7.4
4 フランス 上昇 511 -29.9 4.3
5 スペイン 上昇 452 -33.8 3.8
6 ポーランド 上昇 380 -1.0 3.2
7 インド 横ばい 373 -45.1 3.2
8 中国 下降 358 -54.6 3.0
9 アラブ首長国連邦 横ばい 351 -13.8 3.0
10 カナダ 上昇 300 -15.7 2.5
18 日本 横ばい 197 -14.3 1.7
世界 11,781 -30.2 100.0

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