ジェトロ対日投資報告2021
第2章 日本のビジネス環境と外資系企業
第2節 日本におけるビジネス環境整備
イノベーション都市に向けた動き

国際的なスタートアップ・エコシステム拠点都市の形成

少子高齢化や地域間格差など様々な社会課題を抱える日本において、持続的に経済成長を遂げるには、海外の優秀な人材や資金を取り込むとともに、オープンイノベーションを通じて革新的な技術やノウハウを取り入れ、イノベーション・エコシステムを構築していくことが必要不可欠とされる。「対日直接投資促進戦略」においてもイノベーション・エコシステムの構築は上述(2章(1))の政策目標を達成するための柱の一つとされている。具体的には、地域のトップ大学を軸に、国際的にも開放された国際イノベーション・エコシステム都市を形成し、外国スタートアップ、海外人材(教員・研究者、起業家等)や投資家の集積を一体的・統合的に促進する ことが同戦略で述べられている。

内閣府は世界に開かれたイノベーション都市を構築すべく、2020年7月、中核となるスタートアップ・エコシステム拠点として、グローバル拠点都市4拠点、推進拠点都市4拠点、計 8 拠点を選定した(図表2-5)。8拠点には18自治体が含まれ、これら自治体に所在するスタートアップに対して、3年間で集中的に支援を行う。

図表2-5 スタートアップ・エコシステム拠点都市
スタートアップ・エコシステム拠点都市を示した日本地図。 推進拠点都市(札幌・北海道スタートアップ・エコシステム推進協議会,仙台スタートアップ・エコシステム推進協議会,広島地域イノベーション戦略推進会議,北九州市SDGsスタートアップエコシステムコンソーシアム)。グローバル拠点都市(スタートアップ・エコシステム東京コンソーシアム,Central Japan Startup Ecosystem Consortium,大阪・京都・ひょうご神戸コンソーシアム,福岡スタートアップ・コンソーシアム)

〔出所〕ジェトロウェブサイトより抜粋

内閣府、文部科学省、経済産業省が策定した「スタートアップ・エコシステム形成に向けた支援パッケージ」では起業に取り組むための姿勢などを学ぶアントレプレナーシップ教育の推進、教育・支援のネットワーク・コミュニティの形成、スタートアップ創出に向けた研究開発の体制の整備、成長性の高い有望な大学発ベンチャーの創出などが含まれる。また、同パッケージの一環として、スタートアップ支援を行う9つの政府系機関がMOUを締結し、支援体制を強化している。

ジェトロでは地方におけるエコシステムの更なる活性化を推進すべく、地方発のスタートアップに対する支援に力を入れる。ジェトロは2021年2月、グローバル拠点都市4ヵ所のスタートアップ49社を対象に、米国のアクセラレーターによる戦略立案や人材獲得策などに関するアクセラレーションプログラムを実施した。支援を本格化すべく、2021年秋より参加対象地域をエコシステム推進拠点都市4ヵ所にも拡充した上で、100社程度のスタートアップを対象に専門コースなどを含むアクセラレーションプログラムをオンラインで行う。同プログラムは2021年10月下旬から2022年2月にかけて実施する。

スーパーシティ構想の推進

スーパーシティ構想とは、移動や物流、教育や医療などの生活全般にまたがる幅広い分野でAIやビッグデータなど先端技術を活用し、先進的で利便性の高いサービスを提供することで市民生活を向上させる取り組みである。
2020年5月にスーパーシティ構想の制度的枠組みを定めた国家戦略特別区域法の一部を改正する法律が成立し、同年9月に改正法が施行された。

2020年12月、内閣府はスーパーシティ型国家戦略特別区域を指定するため、2021年4月16日を期限として、特区として指定すべき区域や実施する先端的サービス、規制改革などについて公募を開始したところ、合計31の自治体から応募があった。同年8月にはスーパーシティの区域指定に関する専⾨調査会が開催されたが、同調査会の委員の意見などを踏まえ、同年10月15日を期限として、規制改革などの再提出の募集が行われた。再提案については、31の提案自治体のうち28の自治体から提案があった。今後、規制改革の提案内容のさらなる具体化などを経た段階で再度専門調査会を開催する予定としている。その後は、区域指定の案の意⾒具申する国家戦略特区諮問会議を実施し、政令閣議決定にて区域を指定する。

研究開発税制の見直し

経済産業省は、積極的に研究開発投資を維持または拡大する企業を後押しするため、2021年度の税制改正で研究開発税制を見直した。同税制は、研究開発を行う企業が研究費の一定割合(2~14%)を法人税額から控除できる制度であるが、2021年度の税制改正により、1)今まで最大45%であった控除上限を法人税額の最大50%まで引き上げること、2)研究開発費を維持・増加させるための税額控除率の見直しを行うこと、3)ドローンなどを活用したインフラの自動点検サービスやシェアリングなどのモビリティサービス始めとする 、クラウドを通じてサービスを提供するソフトウェアなどに係る 研究開発を本税制の対象に追加すること、4)オープンイノベーション型の運用改善を行うこと、などの改正を実施した。

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