ジェトロ対日投資報告2021
第2章 日本のビジネス環境と外資系企業
第2節 日本におけるビジネス環境整備
グリーン化とデジタル化の同時達成に向けた政府の取り組み

カーボンニュートラル実現に向けた動き

2020年10月、政府は2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする目標「2050年カーボンニュートラル」を宣言した。その実現に向けて脱炭素化投資の加速を促すべく、経済産業省はカーボンニュートラルに向けた投資促進税制を創設した。同税制では、1)化合物パワー半導体や燃料電池など大きな脱炭素化効果を持つ製品の生産設備、および、2)最新鋭の生産設備の新規導入など、生産工程の脱炭素化と付加価値向上を両立する設備の導入に対して、最大10%の税額控除又は50%の特別償却を措置する(図表2-7)。

経済産業省は新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)に2兆円規模の「グリーンイノベーション基金事業」を創設し、「2050年カーボンニュートラル」実現に資する革新的技術について、具体的な目標とその達成に向けた取り組みへのコミットメントを示す企業等に対して、10年間、研究開発や実証から社会実装までを継続して支援していく同事業では、産業競争力の観点から、国内経済への波及効果が期待される場合には、海外の先端技術なども取り込んでいく。グリーンイノベーション基金による企業支援は「経済財政運営と改革の基本方針(2021)」でも盛り込まれるとともに、「対日直接投資促進戦略」においても触れられている。

半導体・デジタル産業戦略を策定

新型コロナウイルスの蔓延により、社会のデジタル化対応が世界的に進んだことで、デジタル化の基幹製品である半導体の重要性が再認識されている。世界的に需給状況がひっ迫するなど、半導体の確保は経済安全保障上の観点から重要であるとともに、2050年カーボンニュートラルを目指す上では半導体の省エネ化・グリーン化は必須とされる。「経済財政運営と改革の基本方針2021」の大きな方向性の下、2021年6月に政府が閣議決定した「成長戦略実行計画」においてもデジタル機器や情報通信自体の省エネ化、グリーン化の推進が明記されており、こうした状況下、経済産業省は、半導体・デジタルインフラ・デジタル産業の今後の政策の方向性について検討するため、「半導体・デジタル産業戦略検討会議」を2021年3月に設置、同年6月に「半導体・デジタル産業戦略」を取りまとめた。

デジタル化は、クラウドなどを活用したデジタル産業、データセンターなどのデジタルインフラ、電子機器に用いる半導体によって支えられており、経済産業省はこれら3分野の重点投資を進める政策を「半導体・デジタル産業戦略」に盛り込んだ。具体的には、日本でのデータセンター立地などを促進するとともに、データセンターの計画的な整備や投資支援を進める。欧米諸国とも連携した相互依存関係を構築することで日本が半導体技術や生産において中心的な役割を果たし、「デジタルを活用した経済・社会のスマート化によるカーボンニュートラルへの貢献と、エネルギー・環境負荷の増大を最小化するためのデジタル分野でのエネルギー効率の向上・脱炭素化を同時達成」(半導体・デジタル産業戦略)によるデジタル化とグリーン化の同時達成、早期実現化を目指す。

さらに政府は、日本国内における半導体の安定的な生産体制の構築を目指し、半導体関連の設備投資に対する補助制度などを盛り込んだ関連法改正を検討している。

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