ジェトロ対日投資報告2021
第1章 世界・日本のマクロ経済・対内および対外直接投資動向 第2節 世界・日本の直接投資動向
世界の対内直接投資動向 part2
世界のM&Aは件数、金額ともに減少
Workspace(Refinitiv)による2020年のクロスボーダーM&A(以下、M&A)は 、件数が前年比15.3%減の10,070件で、金額が同10.6%減の9,690億ドルと、件数、金額ともに2019年に続いて2年連続の前年比減となった(図表1-11)(図表1-12)。

〔出所〕「Workspace」(Refinitiv)(2021年10月11日時点)から作成

〔出所〕「Workspace」(Refinitiv)(2021年10月11日時点)から作成
2020年のM&A件数の推移を月別にみると、1月には1,055件と例年の1ヵ月と同程度(900~1,100件程度)のM&A取引ディールがあったが、その後、2月(822件)、3月(818件)は800件台となったのち、世界的に新型コロナウイルスの拡大がみられた4月(669件)、5月(681件)には600件台まで落ち込んだ。その後、件数は徐々に回復し、10月には950件、12月には1,067件まで増加した。2021年をみても、M&A件数は堅調に推移しており、同年1~8月は前年同時期を39.6%上回るペースでM&Aが実行されている。
2020年の世界のM&Aを買収国・地域別にみると、件数では米国が2,187件(前年比4.6%減)で最多で、次いで英国(1,051件、同12.1%減)、カナダ(547件、同6.5%減)、ドイツ(490件、同22.5%減)、フランス(479件、同28.6%減)などとなった(図表1-13)。
順位 | 国・地域 |
順位 変動 |
件数 | 前年比 | 割合 |
---|---|---|---|---|---|
1 | 米国 |
![]() |
2,187 | -4.6 | 21.7 |
2 | 英国 |
![]() |
1,051 | -12.1 | 10.4 |
3 | カナダ |
![]() |
547 | -6.5 | 5.4 |
4 | ドイツ |
![]() |
490 | -22.5 | 4.9 |
5 | フランス |
![]() |
479 | -28.6 | 4.8 |
6 | 日本 |
![]() |
376 | -25.7 | 3.7 |
— | 全体 | — | 11,896 | -15.3 | 100 |
全体の約半分を占める上位5ヵ国は、件数ベースではいずれも前年比減だった。
金額ベースをみると、米国が2,460億ドル(前年比19.2%増)で、件数ベース同様、最多だった。次いで、英国(1,860億ドル、前年比43.0%増)、ドイツ(480億ドル、同0.3%減)、日本(480億ドル、同65.3%減)などだった。
米国、英国は前年比増となった(図表1-14)。UNCTADは件数、金額ともに前年比減となった日本のM&Aについて、直近数年みられていた大型案件が2020年に実行されなかったことが要因と分析する。
順位 | 国・地域 |
順位 変動 |
金額 | 前年比 | 割合 |
---|---|---|---|---|---|
1 | 米国 |
![]() |
246 | 19.2 | 25.4 |
2 | 英国 |
![]() |
186 | 43.0 | 19.2 |
3 | ドイツ |
![]() |
48 | -0.3 | 5.0 |
4 | 日本 |
![]() |
48 | -65.3 | 4.9 |
5 | 中国 |
![]() |
37 | -0.7 | 3.8 |
— | 全体 | — | 969 | -10.6 | 100.0 |
被買収側の国・地域をみると、件数では米国が1,686件(前年比0.0%増)で最多で、次いで英国(941件、同10.6%減)、ドイツ(523件、同25.3%減)などだった(図表1-15)。全体の件数が前年比15.3%減となるなか、上位国では米国やカナダの件数が前年比でほぼ横ばいだった。
順位 | 国・地域 |
順位 変動 |
件数 | 前年比 | 割合 |
---|---|---|---|---|---|
1 | 米国 |
![]() |
1,686 | 0.0 | 16.7 |
2 | 英国 |
![]() |
941 | -10.6 | 9.3 |
3 | ドイツ |
![]() |
523 | -25.3 | 5.2 |
4 | カナダ |
![]() |
512 | -1.0 | 5.1 |
5 | フランス |
![]() |
415 | -18.3 | 4.1 |
20 | 日本 |
![]() |
135 | 11.6 | 1.3 |
— | 全体 | — | 10,070 | -15.3 | 100.0 |
金額をみると、米国が2,490億ドル(前年比11. 1%減)で、件数と同様に最多だったものの、前年比は減少した。次いで、オランダ(1,360億ドル、同442.2%増)、英国(740億ドル、同16.8%減)などだった(図表1-16)。
順位 | 国・地域 |
順位 変動 |
金額 | 前年比 | 割合 |
---|---|---|---|---|---|
1 | 米国 |
![]() |
249 | -11.1 | 25.7 |
2 | オランダ |
![]() |
136 | 442.2 | 14.0 |
3 | 英国 |
![]() |
74 | -16.8 | 7.6 |
4 | ドイツ |
![]() |
66 | 10.9 | 6.8 |
5 | インド |
![]() |
40 | 43.6 | 4.1 |
21 | 日本 |
![]() |
10 | 19.8 | 1.0 |
— | 全体 | — | 969 | -10.6 | 100.0 |
2021年は前年比増の予測も、回復には地域差
UNCTADは2021年の世界の対内直接投資について、2020年比10~15%増となると見込む(図表1-17)。グリーンフィールド投資の件数は伸び悩んでいる一方で、M&Aの動きは2020年後半から活発にみられ、その傾向は2021年も継続している。2020年も堅調に投資がみられたアジア地域のほか、EU諸国や米国は、新型コロナウイルスによる経済への影響に対応するための財政政策を打ち出しており、これらの政策に基づいたインフラやデジタル技術、環境関連の投資は、対内直接投資の増加に寄与すると、UNCTADは分析する。

〔注〕地域区分はUNCTADに準拠する。
〔出所〕「World Investment Report 2021」(UNCTAD)から作成
他方、UNCTADは、2021年も引き続き新型コロナウイルスの影響を大きく受ける中南米諸国やアフリカ諸国の対内直接投資額の回復は弱くなると予測する。今後、新型コロナウイルスの変異ウイルスによる世界各地の社会・経済に影響によって、世界の対内直接投資額予測への影響も懸念される。
2021年
第1章 世界・日本のマクロ経済・対内および対外直接投資動向
-
第1節
-
第2節
第2章 日本のビジネス環境と外資系企業
-
第1節
-
第2節
-
第3節
第3章 ジェトロの対日投資促進事業
-
第1節
-
第2節
PDF版
お問い合わせ
フォームでのお問い合わせ
ジェトロはみなさまの日本進出・日本国内での事業拡大を全力でサポートします。以下のフォームからお気軽にお問い合わせください。
お問い合わせフォームお電話でのお問い合わせ
-
- 拠点設立・事業拡大のご相談:
- 03-3582-4684
-
- 自治体向けサポート:
- 03-3582-5234
-
- その他の対日投資に関するお問い合わせ:
- 03-3582-5571
受付時間
平日9時00分~12時00分/13時00分~17時00分
(土日、祝祭日・年末年始を除く)