ジェトロ対日投資報告2021
第1章 世界・日本のマクロ経済・対内および対外直接投資動向
第2節 世界・日本の直接投資動向
世界の対内直接投資動向 part2

世界のM&Aは件数、金額ともに減少

Workspace(Refinitiv)による2020年のクロスボーダーM&A(以下、M&A)は 、件数が前年比15.3%減の10,070件で、金額が同10.6%減の9,690億ドルと、件数、金額ともに2019年に続いて2年連続の前年比減となった(図表1-11)(図表1-12)。

図表1-11 世界のM&A投資件数
世界のM&A投資件数は、2008年11,755件、2009年前年比29.1%減8,335件、2010年前年比21.8%増10,154件、2011年前年比6.7%増10,835件、2012年前年比7.6%減10,015件、2013年前年比9.8%減9,037件、2014年前年比12.9%増10,199件、2015前年比0.5%増11,265件、2016年前年比3.4%増11,650件、2017年前年比5.4%増12,274件、2018年前年比1.8%増12,499件、2019年前年比4.8%減11,896件、2020年前年比15.3%減10,070件。2019年1~8月では8,099件、2020年同時期は6,311件、2021年同時期は8,810件。

〔出所〕「Workspace」(Refinitiv)(2021年10月11日時点)から作成

図表1-12 世界のM&A投資金額
世界のM&A投資金額は、2008年1兆2509億9800万ドル、2009前年比55.9%減5514億7100万ドル、2010年前年比26.8%増6990億1300万ドル、2011年前年比39.%増9751億2000万ドル、2012年前年比25.6%減7250億8400万ドル、2013年前年比6.0%減6812億8400万ドル、2014年前年比34.3%増9147億900万ドル、2015年前年比22.4%増1兆1193億4800万ドル、2016年前年比12.6%増1兆2605億900万ドル、2017年前年比10.3%減1兆1308億9800万ドル、2018年前年比15.3%増1兆3035億2500万ドル、2019年前年比16.9%減1兆835億5300万ドル、2020年前年比10.6%減9685億8000万ドル。2019年1~8月では7467億1100万ドル、2020年同時期は6065億8200万ドル、2021年同時期は9801億9100万ドル。

〔出所〕「Workspace」(Refinitiv)(2021年10月11日時点)から作成

2020年のM&A件数の推移を月別にみると、1月には1,055件と例年の1ヵ月と同程度(900~1,100件程度)のM&A取引ディールがあったが、その後、2月(822件)、3月(818件)は800件台となったのち、世界的に新型コロナウイルスの拡大がみられた4月(669件)、5月(681件)には600件台まで落ち込んだ。その後、件数は徐々に回復し、10月には950件、12月には1,067件まで増加した。2021年をみても、M&A件数は堅調に推移しており、同年1~8月は前年同時期を39.6%上回るペースでM&Aが実行されている。

2020年の世界のM&Aを買収国・地域別にみると、件数では米国が2,187件(前年比4.6%減)で最多で、次いで英国(1,051件、同12.1%減)、カナダ(547件、同6.5%減)、ドイツ(490件、同22.5%減)、フランス(479件、同28.6%減)などとなった(図表1-13)。

図表1-13 世界のM&A投資件数(買収国・地域別)(件、%)
順位 国・地域 順位
変動
件数 前年比 割合
1 米国 横ばい 2,187 -4.6 21.7
2 英国 横ばい 1,051 -12.1 10.4
3 カナダ 上昇 547 -6.5 5.4
4 ドイツ 横ばい 490 -22.5 4.9
5 フランス 下降 479 -28.6 4.8
6 日本 横ばい 376 -25.7 3.7
全体 11,896 -15.3 100

全体の約半分を占める上位5ヵ国は、件数ベースではいずれも前年比減だった。

金額ベースをみると、米国が2,460億ドル(前年比19.2%増)で、件数ベース同様、最多だった。次いで、英国(1,860億ドル、前年比43.0%増)、ドイツ(480億ドル、同0.3%減)、日本(480億ドル、同65.3%減)などだった。

米国、英国は前年比増となった(図表1-14)。UNCTADは件数、金額ともに前年比減となった日本のM&Aについて、直近数年みられていた大型案件が2020年に実行されなかったことが要因と分析する。

図表1-14 世界のM&A投資金額(買収国・地域別)(10億ドル、%)
順位 国・地域 順位
変動
金額 前年比 割合
1 米国 横ばい 246 19.2 25.4
2 英国 上昇 186 43.0 19.2
3 ドイツ 上昇 48 -0.3 5.0
4 日本 下降 48 -65.3 4.9
5 中国 上昇 37 -0.7 3.8
全体 969 -10.6 100.0

被買収側の国・地域をみると、件数では米国が1,686件(前年比0.0%増)で最多で、次いで英国(941件、同10.6%減)、ドイツ(523件、同25.3%減)などだった(図表1-15)。全体の件数が前年比15.3%減となるなか、上位国では米国やカナダの件数が前年比でほぼ横ばいだった。

図表1-15 世界のM&A投資件数(被買収国・地域別)(件、%)
順位 国・地域 順位
変動
件数 前年比 割合
1 米国 横ばい 1,686 0.0 16.7
2 英国 横ばい 941 -10.6 9.3
3 ドイツ 横ばい 523 -25.3 5.2
4 カナダ 横ばい 512 -1.0 5.1
5 フランス 横ばい 415 -18.3 4.1
20 日本 上昇 135 11.6 1.3
全体 10,070 -15.3 100.0

金額をみると、米国が2,490億ドル(前年比11. 1%減)で、件数と同様に最多だったものの、前年比は減少した。次いで、オランダ(1,360億ドル、同442.2%増)、英国(740億ドル、同16.8%減)などだった(図表1-16)。

図表1-16 世界のM&A投資金額(被買収国・地域別)(10億ドル、%)
順位 国・地域 順位
変動
金額 前年比 割合
1 米国 横ばい 249 -11.1 25.7
2 オランダ 上昇 136 442.2 14.0
3 英国 下降 74 -16.8 7.6
4 ドイツ 横ばい 66 10.9 6.8
5 インド 上昇 40 43.6 4.1
21 日本 上昇 10 19.8 1.0
全体 969 -10.6 100.0

2021年は前年比増の予測も、回復には地域差

UNCTADは2021年の世界の対内直接投資について、2020年比10~15%増となると見込む(図表1-17)。グリーンフィールド投資の件数は伸び悩んでいる一方で、M&Aの動きは2020年後半から活発にみられ、その傾向は2021年も継続している。2020年も堅調に投資がみられたアジア地域のほか、EU諸国や米国は、新型コロナウイルスによる経済への影響に対応するための財政政策を打ち出しており、これらの政策に基づいたインフラやデジタル技術、環境関連の投資は、対内直接投資の増加に寄与すると、UNCTADは分析する。

図表1-17 2021年対内直接投資額伸び率(予測)
2021年対内直接投資額伸び率の予測は、全体10~15%増、先進国・地域15~20%増、欧州15~20%増、北米10~20%増、新興国・地域5~10%増、アフリカ0~10%増、アジア5~10%増、中南米5%減から5%増。

〔注〕地域区分はUNCTADに準拠する。
〔出所〕「World Investment Report 2021」(UNCTAD)から作成

他方、UNCTADは、2021年も引き続き新型コロナウイルスの影響を大きく受ける中南米諸国やアフリカ諸国の対内直接投資額の回復は弱くなると予測する。今後、新型コロナウイルスの変異ウイルスによる世界各地の社会・経済に影響によって、世界の対内直接投資額予測への影響も懸念される。

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