ジェトロ対日投資報告2021
第3章 ジェトロの対日投資促進事業
第1節 ジェトロによる外国企業支援実績

2020年度の誘致成功件数は96件

政府は2021年6月に公表した「経済財政運営と改革の基本方針2021」にて、「海外から高度な人材・技術・資金を取り込み、我が国の技術力・研究開発力と結び付け、イノベーション創出、サプライチェーン強靭化等につながっていくため、対日直接投資を一層推進する」とし、外国企業誘致を日本経済・社会の発展に資するとして引き続き重要視している。

ジェトロは継続的に外国企業の日本拠点設立ならびに日本市場でのビジネス展開の支援を行っている。2020年度にジェトロの対日投資促進事業にて支援を行った件数は1,020件で、日本に拠点設立を行った、あるいは日本でのビジネス拡大に至った件数は96件だった(図表3-1)。

図表3-1 2020年度対日投資プロジェクト支援・成功件数
年度 2020年度
成功件数 96件
プロジェクト支援件数 1,020件

2020年度の成功件数を親会社の出身地域別にみると、アジアが37.5%、欧州が29.2%、北米が28.1%などとなった(図表3-2)。

図表3-2 成功件数(地域別)
成功件数(地域別)にて示した円グラフ。 アジア,37.5%,欧州,29.2%,北米,28.1%,その他,5.2%。

出身国をみると、例年同様、米国が全体の22.9%を占めて最も多い(図表3-3)。そのほか、中国が全体の14.6%で2番目に多く、ドイツ(全体の10.4%)、フランス(6.3%)など欧州諸国が続いた。

図表3-3 成功件数(国・地域別)
成功件数(国・地域別)にて示した円グラフ。 米国,22.9%,中国,14.6%,ドイツ,10.4%,フランス,6.3%,シンガポール,5.2%,カナダ,5.2%,その他,35.4%。

2020年度の成功案件を業種別にみると、2019年度に引き続き、最多はICT・情報通信(全体の34.4%)で、次いで電気・電子機器、同部品(同13.5%)、医薬品・医療機器、関連サービス(同11.5%)などとなった(図表3-4)。また、成功案件の国内進出先を見ると、東京都が60.4%、神奈川県が11.5%、大阪府が5.2%などとなった(図表3-5)。

図表3-4 成功件数(業種別)
成功件数(業種別)にて示した円グラフ。 ICT・情報通信,34.4 %,電気・電子機器、同部品,13.5 %,医薬品・医療機器、関連サービス,11.5 %,その他製造,9.4 %,環境・エネルギー,4.2 %,サービス,2.1 %,その他,25.0 %。
図表3-5
成功件数(都道府県別)にて示した円グラフ。 東京都,60.4%。東京都以外,39.6%,内訳(神奈川,県11.5%,大阪府,5.2%,愛知県,4.2%,福岡県,3.1%,その他,15.6%)。

ジェトロは2019年度より、外国企業誘致を通した国内のイノベーション創出などに貢献するため、特に以下の業種に従事する外国企業への支援を強化している(図表3-6)。

図表3-6 イノベーションの創出が期待される業種
イノベーションの創出が期待される業種を示した図 1.テック系(AI,FinTechなど),2.製造業(IoT,IR 4.0,ドローン,宇宙など),3.ライフサイエンス,4.再生エネルギーやインフラ,5.「未来投資戦略」に記載がある分野。

2020年に、ジェトロの支援を受けて拠点設立などを行った企業事例をみると、COVID-19向けのPCR検査キットの量産化に成功したシンガポールのMiRXESや医療機関向け感染症対策製品を製造・販売するドイツのシュルケ・アンド・マイヤー社などコロナ禍で活躍する企業、ならびに小売りや製造業の倉庫向けに自動化ソリューションを開発・製造するフランスのExotecなど少子高齢化や地域間格差などに伴う自動化への需要に応じ、日本の社会課題解決に貢献する企業の日本進出がみられる(図表3-7)。

図表3-7 ジェトロの支援で日本に進出した外国企業
企業名 国籍 概要
MiRXES Japan株式会社 シンガポール MiRXES(シンガポール)は、血液中に含まれるマイクロRNA(miRNA)をマーカーとして、早期の胃がんを診断する世界初の検査システムを開発・展開しているバイオテック企業。さらに同技術を活用し、2020年にはCOVID-19向けに、RT-PCR検査キットである「Fortitude Kit」の量産化に成功。シンガポールの全病院の80%以上で試験・実証された同製品は、東南アジア、ニュージーランド、南米を含む20ヵ国以上で展開されている。
同社は2020年1月に東京都千代田区にMiRXES Japan株式会社を設立。同社の革新的なマイクロRNAの実用技術によって、日本人でも症例の多い胃がんを従来よりも簡易に高精度で診断が可能になる。同社の日本拠点設立に際し、ジェトロ対日投資・ビジネスサポートセンター(IBSC)は、コンサルテーション(労務、登記)の提供、情報提供(規制関連)、サービスプロバイダーの紹介、PR支援を行った。
Schulke & Mayr GmbH ドイツ Schulke & Mayr GmbH(シュルケ・アンド・マイヤー社)は、医療機関向け感染症対策製品を製造・販売するドイツの医療衛生企業。日本においては日本エア・リキード社の医療衛生事業部として2015年にJohnson & Johnson社より手指衛生関連製品を承継し、医療機関向けの感染対策製品を提供してきた。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が世界的に猛威を振るう中、ドイツ本社が実施した試験では、主に医療関連施設で使用されている低アルコール環境清拭ワイプ「マイクロジッド®プレミアムワイプ」と、主に歯科クリニックや理化学研究施設などで使用されているノンアルコール環境清拭ワイプ「マイクロジッド®センシティブワイプ」が、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)を用いた欧州基準(EN14476)の試験に合格した。薬事非該当(雑品)であるこれら2製品は既に日本国内でも販売されており、国内の医療関連施設において、新型コロナウイルスを含む感染対策に寄与している。
事業拡大に伴い、2020年6月に東京都にシュルケ・ジャパン合同会社を設立した。同社の日本拠点設立に際し、ジェトロ対日投資・ビジネスサポートセンター(IBSC)はコンサルテーション(税務)および市場情報の提供を行った。
Exotec フランス Exotecは、小売り・Eコマース・製造業の倉庫向けの柔軟な自動化ソリューションを開発・製造するフランスのロボットメーカー。2015年に設立され、欧州・米国・日本に合計300名の従業員数を擁する。世界9ヵ国でビジネスを展開しており、2021年の収益は1億ドルを超える見込み。2020年9月には、シリーズCの投資ラウンドで9,000万ドルを調達した。
同社の自動ピッキングロボットシステム「Skypod」は、積載量30キロ・毎秒4メートルの速さで、高さ12メートルまで3次元空間を動くことができる。空間を有効活用して在庫を高い密度に格納することで、従来の棚型ピッキングと比較し保管量を5倍に増やすことができる。また、オペレーションを中断させることなく在庫量と業務フローに応じて、迅速かつ段階的に追加部分の棚やロボットの導入ができ、顧客企業が業務拡大のペースに応じて倉庫への投資を行える点が特長。倉庫制御システムASTARでは、作業計画を管理し、倉庫内のケースとロボットの位置をリアルタイムで追って記録する。
同社は新規顧客開拓や既存顧客対応などを行うことを目的に、2020年1月、東京都にEXOTEC NIHON株式会社を設立、同年第1四半期には京都府に倉庫を設置し、日本での活動を本格化させている。2021年第4四半期には、東京都のオフィスを港区に移転する予定。同社の日本拠点設立に際し、ジェトロ対日投資・ビジネスサポートセンター(IBSC)は、規制・制度情報提供、サービスプロバイダの紹介・面談アレンジ、補助金・インセンティブ情報の提供、 不動産物件情報提供、コンサルテーション(登記・ビザ・税務・労務)を行った。

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