資源ごみの輸入禁止へ、環境への悪影響を配慮

(中国)

中国北アジア課

2017年09月15日

国務院は7月27日、「海外ごみの輸入禁止と固形廃棄物輸入管理制度改革の実施計画」を発表した。12月31日から施行され、環境への悪影響が大きい資源ごみの輸入が禁止されることとなった。また、環境への影響度に応じて、輸入縮小を進める一方、国内での資源ごみの再利用を促すとしている。中国を廃プラスチックや古紙の主な輸出先とする日本の業界では、影響を懸念する声が出ている。

リストを作成し輸入ごみの管理制度を強化

海外ごみの輸入禁止と固形廃棄物輸入管理制度改革の実施計画外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」(以下、「計画」)は、5章18項目からなる。「生態環境の安全性と人民の健康」などのために策定され、資源ごみ輸入の管理体制強化や密輸取り締まりの厳格化について記載されている。環境への影響が大きく、国民の健康に大きな影響を与える固形廃棄物の輸入を2017年末から全面禁止し、それ以外についても、国内の資源ごみで代替可能な固形廃棄物の輸入を2019年末までに段階的に縮小するとしている。

「計画」では、「環境リスクや産業の発展度合いなどに基づいて、業種別、種類別に輸入禁止のタイムテーブルを制定し、固形廃棄物の輸入リストを分類、調整する」としている。具体的には、「2017年末までに生活ごみとして出される廃プラスチック、未処理の古紙、繊維系の廃棄物、バナジウムスラグなどの輸入を禁止する」とした。また、2019年末までに「固形廃棄物輸入リストを分類、調整し、輸入固形廃棄物の種類と数量を大幅に減少させる」ともしている。これらのリストは、環境保護部、商務部、国家発展改革委員会、税関総署、国家質検総局の5部門が作成する。

24品目を輸入禁止リストに

8月16日には、上記5部門が新たな輸入ごみ管理リストを公開した。「輸入禁止固形廃棄物リストPDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)」「輸入制限再利用可能固形廃棄物リストPDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)」「輸入非制限再利用可能固形廃棄物リストPDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)」(注)が改定され、廃プラスチック8品目、未選別古紙1品目、繊維系廃棄物11品目、バナジウムスラグ4品目の計4種類24品目が「輸入制限再利用可能固形廃棄物リスト」から「輸入禁止固形廃棄物リスト」に移された。この措置は12月31日から施行される。

「計画」では、管理リストのほかにも、2018年末までに固形廃棄物を輸入できる港を限定することや、許可制度の見直し、資源ごみの密輸などの違法行為に対する罰則強化なども行っていくとしている。

国内での固形廃棄物の再利用を推進

「計画」は、海外ごみの密輸取り締まり強化のため「固形廃棄物の輸入申請の審査を厳格にし、固形廃棄物の輸入許可を減らして輸入量を減らす」としている。また、海外ごみの輸入の禁止を進めるとともに、国内で出た固形廃棄物の再利用も進めていくとしている。「計画」では、2015年に2億4,600万トンだった固形廃棄物の回収量を2020年までに3億5,000万トンにするとしており、再利用技術の開発に注力するとしている。

国務院によると、中国は1980年代から資源不足解消のため、海外から再利用可能な固形廃棄物の輸入を開始した。同時に、管理体制強化や環境リスク軽減のため、管理制度を段階的に構築してきた。しかし、一部の地域や企業は環境保護の意識が低い上、海外ごみの密輸問題が後を絶たず、国民の健康と国内の生態環境を脅かす事態になっているとしている。

日本は廃プラや古紙の主な輸入先

なお、中国の貿易統計によると、2016年の中国の廃プラスチックの輸入量は734万7,200トンで、そのうち日本からが約84万2,000トンと約1割を占め、香港に次ぐ輸入先となっている。また、2016年の古紙輸入量は284万9,841トンで、そのうち日本からは約28万4,310トンと約1割を占め、米国、英国に次ぐ輸入先となっている。日本の貿易統計をみても、廃プラ輸出の約5割、古紙輸出は約7割が中国向けとなっており、日本への影響は小さくないと考えられる。中国への古紙輸出に影響が出るとの懸念や、中国の再生資源輸出市場が消滅するかもしれないとの声を伝える報道もある。

現時点で、輸入ごみ管理リストは出そろっておらず、決まっていない点も多い。今後とも資源ごみ輸入に対する中国政府の動きを注視していく必要があるだろう。

(注)リストは環境保護部のウェブサイト外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで閲覧できる。

(楢橋広基)

(中国)

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