特集:コロナ禍で未曽有の危機下にある世界経済と新たな潮流主要国の最終消費財輸入、2020年に入り急減

2020年10月8日

世界の経済成長率(実質GDP伸び率)は、新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)拡大の影響などを受け、2020年に入り大幅に減少した。最終消費財の輸入データから主要国の消費動向を見ると、自動車などが金額・数量ともに減少した。他方、マスクや防護服、医薬品といった新型コロナに対応した品目などは増加した。 一部で消費財輸入に回復傾向がみられるものの、前年水準を割り込む状況が続いている。

主要8カ国から算出した世界の経済成長率(実質GDP伸び率)(注1)は、2020年第1四半期(1~3月)に急減した(図1参照)。IMFによると、主要8カ国の購買力平価基準の名目GDPが世界全体に占める割合は2020年に58.0%に達すると見込まれている(注2)。世界の経済成長率は2018年第1四半期以降、2019年第4四半期(10~12月)まで鈍化傾向にあったが、それでも前年同期比でプラスを維持していた。しかし、2020年に入ると、新型コロナによる影響を受けた中国などの経済減速を受け、世界の経済成長率はマイナスとなった。2020年第2四半期(4~6月)には、中国の経済成長率が前年同期比でプラスを記録したものの、世界全体ではマイナス成長が継続している。

図1:世界の実質GDP伸び率の推移
中国、米国、インド、日本、ロシア、ドイツ、インドネシア、およびブラジルの加重平均から算出した世界の実質GDP伸び率は、2020年に入り急減し、マイナスを記録した。

注1:中国、米国、インド、日本、ロシア、ドイツ、インドネシア、およびブラジルの加重平均。GDP(購買力平価ベース)をウエートとして使用。
注2:2020年9月13日までに入手できたデータで作成。
出所:CEIC Data Company Limited、およびIMFから作成

経済成長が鈍化する中、消費の動向はどうか。以下、主要各国の消費、とりわけ財の消費に注目し、各国の輸入統計から2020年1~6月期(インドは1~5月期)の最終消費財の動向を整理した(表参照)(注3)。中国と米国の2018年と2019年の1~6月期の最終消費財輸入額は、前年同期比でプラスを継続したが、2020年にマイナスに陥った。中国と米国を除いた6カ国は、2019年1~6月期にマイナスの伸び率を記録していたが、2020年は一段と伸び率が低下した。主要8カ国いずれにおいても、2020年1~6月期の最終消費財輸入額が落ち込んだ様子が見て取れる。

表:主要国の最終消費財輸入額(億ドル、前年同期比%)(△はマイナス値)
国名 2018年1-6月 2019年1-6月 2020年1-6月
金額 伸び率 金額 伸び率 金額 伸び率
中国 1,559 21.7 1,709 9.6 1,656 △ 3.1
米国 5,169 7.4 5,330 3.1 4,645 △ 12.8
日本 1,442 11.0 1,418 △ 1.6 1,350 △ 4.8
ロシア 425 14.9 418 △ 1.6 391 △ 6.5
ドイツ 2,279 15.8 2,263 △ 0.7 2,051 △ 9.4
インドネシア 203 18.9 181 △ 10.7 153 △ 15.8
ブラジル 236 14.3 225 △ 5.0 188 △ 16.4
インド 487 11.5 451 △ 7.4 347 △ 23.2

注1:国連の分類(BEC第5版)に基づき、最終用途として「最終消費」に分類される財(HS6桁ベース)が対象。「最終消費」とともに、「中間消費」「総固定資本形成」の要素を併せ持つ財も対象とした。
注2:インドは1-5月。
注3:2020年9月13日までに入手できたデータで作成。
出所:「Classification by Broad Economic Categories」(United Nations)および「Global Trade Atlas」(IHS Markit)から作成

各国の最終消費財輸入額減少に大きく寄与した商品を整理すると、資源輸出国(注2)として分類されるロシアを除き、石油製品を含む鉱物性燃料などが共通している(別添1:主要国の最終消費財輸入額:金額ベースでの減少寄与度が大きい財(2020年1-6月期)PDFファイル(233.57KB))。ただし、これら鉱物性燃料などの中でも、例えば、中国の液化天然ガスは、金額ベースでは前年同期比14.1%減なのに対し、数量ベースでは同10.4%増と拡大した。また、日本の液化天然ガスやドイツの天然ガスなども、数量の減少率に比べると金額の減少率が大きい。国際商品価格の影響を受けた側面があると考えられる。

前述の鉱物性燃料以外では、インドを除いて、乗用車が各国の最終消費財輸入額の減少に大きく寄与した。これら乗用車の輸入は金額のみならず、数量ベースでも前年同期比を割り込んだ。各国の消費が落ち込んだ様子が見て取れる。その他には、中国、米国、インドでダイヤモンドの輸入が金額ならびに数量ベースで前年同期比水準を割り込んだ。

増えた品目はどうか。寄与度が大きい順に整理すると、マスクや診断薬といった新型コロナに対応した商品が並ぶ(別添2:主要国の最終消費財輸入額:金額ベースでの増加寄与度が大きい財(2020年1-6月期)PDFファイル(241.47KB))。とくに、マスクなど紡織用繊維の製品の一部が全8カ国の上位品目に名を連ねる。いずれも金額のみならず、数量も増加した。これら新型コロナ関連商品のほかには、携帯用の自動データ処理機械(ノートパソコン)や、記憶装置といったデジタル関連消費財(注4)も目立つ。新型コロナによるいわゆる「巣ごもり需要」が後押ししたと考えられる。また、自動車輸入が各国で減少する中、ドイツではプラグインハイブリッド(PHV)車の輸入が増加しており、環境対応車の底堅い需要が確認できた。

上記8カ国のうち、2020年7月(一部は8月)までのデータが入手可能な中国、米国、日本、インドネシア、ブラジルの5カ国の最終消費財輸入額の前年同期比(3カ月後方移動平均)の推移をみる。いずれも前年同期比水準を引き続き割り込む状況が継続した(図2参照)。しかし、日本を除いた4カ国は前年同期比(3カ月後方平均)が改善傾向にある。こうした動きが定着するのか、新型コロナの影響を色濃く受けた消費動向の変化とともに注視していく必要がある。

図2:中国、米国、日本、インドネシア、ブラジルの最終消費財輸入額伸び率の推移
中国、米国、日本、インドネシア、およびブラジルの2020年5月から8月(一部は7月)の最終消費財輸入動向(前年同期比、後方3カ月移動へ行き)をみると、日本を除いて改善傾向にある。しかし、いずれも依然として前年同期水準を割り込んでいる。

注1:最終消費財の定義は表の注1を参照。
注2:前年同期比は後方3カ月移動平均。
注3:9月13日までに入手できたデータで作成。
出所:「Classification by Broad Economic Categories」(United Nations)および「Global Trade Atlas」(IHS Markit)から作成


注1:
2019年時点の購買力平価(PPP)基準の名目GDP額が大きい8カ国(中国、米国、インド、日本、ロシア、ドイツ、インドネシア、ブラジル)を対象に、各国の実質GDP伸び率を、世界全体のPPP基準の名目GDP額に占める各国の構成比で加重平均して求めた。
注2:
“World Economic Outlook (April 2020)”(IMF)参照。
注3:
本稿での最終消費財について、国連のBEC(包括的経済分類)第5版に基づき、最終用途として最終消費に分類される財を最終消費財とした。なお、財の中には、中間消費や総固定資本形成にも利用される多面的な機能を有する最終消費財が含まれる。広く最終消費財の動向を捉えるため、最終消費財のみならず他の財にも分類可能なこれらの財も最終消費財に含めた。
注4:
デジタル関連財の定義については「2020年版ジェトロ世界貿易投資報告」第4章PDFファイル(2.77MB) 参照。
執筆者紹介
ジェトロ海外調査部国際経済課 課長代理
朝倉 啓介(あさくら けいすけ)
2005年、ジェトロ入構。海外調査部アジア大洋州課(2005~2009年)、国際経済研究課(2009 ~2010年)、公益社団法人日本経済研究センター出向(2010~2011年)、ジェトロ農林水産・食品調査課(2011~2013年)、ジェトロ・ムンバイ事務所(2013~2018年)を経て海外調査部国際経済課勤務。

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