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特集:アジアで進展する貿易円滑化と現場の実態制度・手続きの情報充実やペーパレス化などが課題、改善の動きも(ラオス)

2020年3月17日

ラオスではこの数年で貿易円滑化がすすめられたものの、依然として多岐にわたって課題がみられる。進出日系企業は、貿易制度や手続きに関する情報の充実、通関手続きのペーパレス化などの必要性を指摘する。また、ラオスは内陸国のため、タイでのトランジット手続きに関する課題もみられる。以下では、進出日系企業へのヒアリング調査などを踏まえて分析する。

多岐にわたる貿易円滑化の課題

ジェトロが2019年8~9月に行ったアジア・オセアニア進出日系企業調査によると、「貿易円滑化の必要性の有無」について、「ある」と回答した在ラオス日系企業は73.1%となり、ASEAN平均(78.2%)をわずかに下回る水準だった一方、「貿易取引の改善に必要な貿易円滑化措置」は14項目中11項目でASEAN平均を上回る結果となり、多岐にわたって課題があることが分った。「貿易取引の改善に必要な貿易円滑化措置」で回答率が最も高かったのは、「貿易制度や手続きに関する情報の充実」だった(図参照)。回答率は61.5%とASEAN平均を17.3ポイント上回った。これに、「電子化・ペーパレス化、洗練されたICTシステムの導入」(46.2%)や「事前教示制度の導入と利用可能な運用」(38.5%)、「税関書類の簡素化、国際基準への統一化・フォーマット化」(38.5%)が続き、いずれもASEAN平均を上回った。

図:貿易取引を改善するために必要だと思われる貿易円滑化措置(上位10項目)
回答率が最も高かったのは「貿易制度や手続きに関する情報の充実」で、回答率は61.5%とASEAN平均を17.3ポイント上回った。

出所:ジェトロ「2019年度アジア・オセアニア進出日系企業実態調査」

「貿易制度や手続きに関する情報の充実」については、進出日系企業からも必要とする声が多い。ラオス政府はポータルサイト外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを通じて法令や手続きの情報開示を進めるが、ほとんどはラオス語のみで、英語でアクセスできる情報が限られている。また、発表されているガイドラインが幅広い業種を想定して書かれていないため、解釈に困るといった声も聞かれる。

シングルウィンドウの導入を求める声が多数、車両の輸入では運用開始

「電子化・ペーパレス化、洗練された情報通信技術(ICT) システムの導入」が必要と回答した企業のうち、「シングルウィンドウの導入」が必要と回答した企業は9割にのぼった。ナショナルシングルウィンドウ(NSW)は2019年5月、自動車などの輸送機器の輸入で先行して試験運用が始まった。他方、NSWで輸入した車両に対してナンバープレートが発給されないことが問題となり、7月から運用が停止していた。その後、2020年2月3日付財務省税関局告示でNSWが2月6日から再開することが発表された。関係者によると、再開後はナンバープレートが発給されない問題は解決しているという。

進出日系企業がシングルウィンドウを求める背景には、煩雑な手続きがあるとみられる。「税関書類の簡素化、国際基準への統一化・フォーマット化」が必要と回答した企業は、ASEAN平均を大きく上回った。進出日系企業からは、書類への指摘事項が部署、担当者によって異なるため、手続きに時間がかかるという声が聞かれる。

マスターリストは運用上の課題が残るも制度は大幅改善

他方、回答率が低かった貿易円滑化措置のうち、「新たな貿易手続き・通関制度・検査の導入の改正について、効力発生前の確実な発出・通知」(26.9%)は、ASEAN平均(25.7%)とほぼ同じ水準になった。これについては、進出日系企業が規制緩和を求め、日ラオス官民合同対話で長年、協議されてきたマスターリストのルールが、2019年から大幅に改善され、その際にラオス政府が事前に草案を発表したことが評価されたとみられる(2018年10月30日付ビジネス短信参照)。

ラオスでは、加工輸出企業が輸入時の関税や付加価値税(VAT)の免除措置を受けるために、マスターリストと呼ばれる年間輸入計画書の提出が義務付けられている。以前は、このマスターリストの申請から承認までに、商工省で輸入許可、財務省関税局で免税許可を取得する必要があり、手続きに数カ月を要した。しかし、2019年1月2日付「企業の輸入計画における関税・付加価値税上の投資奨励優遇に関する中央投資奨励管理委員会ガイドライン1号」によって、申請先が計画投資省管轄の投資ワンストップサービス室に一元化された。また、マスタ―リストの運用においては、申請上限額、変更回数、緊急輸入の回数・上限額が主な課題となっていたが、回数や上限額が撤廃されるなど改善が進んだ。

進出日系企業へのヒアリングによると、2019年には、申請から、承認までにかかる時間は約1カ月に短縮されたという。一方、申請書を別の窓口へ提出するよう求められたり、事業と関係のない省庁で審査を受けるよう求められたりするなど、同ガイドラインで規定されているとおりに運用されていないケースも見られるため、依然として注意が必要だ。

タイを経由した輸送ならではの課題も

また、貿易円滑化の課題は、ラオス国内にとどまらない。内陸国のラオスでは、タイを経由して原料を輸入、加工品を輸出する進出日系企業も多い。これらの企業は、タイのトランジット手続きに関する課題を挙げる。例えば、タイのレムチャバン港では、異なるバースに到着するトランジット貨物を1台のトラックに混載し、輸送することができないため、物流効率が悪くなる。

また、ラオスからタイを経由して輸出し、第三国で特恵関税を適用して輸入するためには、非加工証明が求められる。タイ税関の通達によると、トランジット貨物に対して非加工証明を発行するとされているが、運用上、タイで販売しないケースでは発行されないこともあるという。その場合、進出日系企業はタイで輸入通関手続きを行い、非加工証明を取得した上で、輸出するなどして対応しており、コストがかかるとの声が聞かれる。

世界銀行調査では貨物の追跡、通関手続きなどで改善

ラオスの貿易円滑化は、ここ数年で進展したと評価できる面もある。世界銀行が2年ごとに実施する「物流パフォーマンス指標」(LPI)によると、ラオスは2018年調査では全160カ国・地域中82位(スコア2.70)となった(表参照)。前回の2016年調査では、調査が始まった2007年以降の最低となる152位(スコア2.07)を記録していたため、大幅に改善したといえよう。

2018年のLPIにおける項目別スコアをみると、「トラッキング、追跡能力」が1.15ポイント改善し、2.91と最も高い値になった。また、2016年調査でスコアが高かった「適時性(予定、期待された配送時間での配送)」を除いて、すべての項目で0.5ポイント以上高くなった。

表:「物流パフォーマンス指標」におけるラオスの項目別スコア
項目 2016年 2018年
トラッキング、追跡能力 1.76 2.91
適時性(予定、期待された配送時間での配送) 2.68 2.84
税関(通関手続きなどの効率性) 1.85 2.61
国際出荷の容易さ(競争的な価格での出荷) 2.18 2.72
物流サービスの質(輸送事業者) 2.10 2.65
インフラ(貿易、交通インフラの質) 1.76 2.44
総合 2.07 2.70
順位 152 82

出所:世界銀行「物流パフォーマンス指標」(2016年、2018年)

特に、「税関(通関手続きなどの効率性)」に関しては、ラオス政府が投資環境改善の一環で重点的に取り組んでいる。商工省輸出入局は、2018年9月に「サービス憲章」を発表し、2020年までに輸出入に関係する書類やその処理にかかる時間を50%削減し、電子化を進めることを目標に掲げた(2018年9月21日付ビジネス短信参照)。またラオス政府は、2019年10月16日付「輸出入、一時的輸入、トランジット、輸送の利便化に関する首相命令」で、2022年までに輸出入にかかる時間を50%、書類を30%削減すると発表した。ラオスは内陸国であるため、物流面の投資環境改善は進出日系企業の事業運営に大きく影響するといえる。これらラオス政府の施策の進捗に期待がかかる。


執筆者紹介
ジェトロ海外調査部アジア大洋州課
山口 あづ希(やまぐち あづき)
2015年、ジェトロ入構。農林水産・食品部農林水産・食品課(2015~2018年)、ジェトロ・ビエンチャン事務所(2018~2019年)を経て現職

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