特集:激変する世界情勢と日本企業の海外ビジネス企業の外国人材活用、制度構築に加えて必要な視点

2019年4月18日

中小企業の人手不足が深刻になる中、改正出入国管理法(注1)の運用が4月にスタートし、外国人労働者の就労に新たな門戸が開かれた。注目が高まる外国人材活用について、採用方法や採用の現状を検証するとともに、今後取り組むべき課題を考察する。

中小企業や小規模事業者で深刻化する人手不足

国内では人手不足が深刻だ。完全失業率は2.4%(2018年)まで低下し、完全雇用に近い状態といえる。一部の業界では、雇用を確保できずに廃業・倒産を余儀なくされている。厚生労働省が発表した産業・事業所別新規求人数外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます では、従業員30人未満の企業の新規求人数が過去10年で2倍以上に拡大し、757万人に達した。30~99人規模の企業の新規求人数も緩やかに増加している。一方、100人以上の企業ではほぼ横ばいとなっている(図1参照)。人手不足は大企業より中小企業や小規模事業者で著しい。

図1:事業所規模別新規求人数の推移
29人以下の事業所では2009年は335万人から2倍以上に伸び、2018年には757万人に達した。30~99人の事業所では2009年は163万人から2018年は267万人と増加。100~299人の事業所では2009年の81万人から微増し、2018年には99万人となった。500人以上の事業所では2009年から2018年まで一定して100万人前後の求人数であった。

出所:厚生労働省「一般職業紹介状況(職業安定業務統計)」から作成

深刻な人手不足の打開策となりうるのが、4月から運用がスタートした改正出入国管理法だ。この改正によって新たな在留資格が創設され、十分な人材の確保が期待できない14分野を「特定産業分野」(注2)として、外国人就労を可能にした。政府は5年間で約34万人の外国人受け入れを見込んでいる。

外国人材に社内で活躍してもらいたいと考える企業側の受け入れ準備も欠かせない。募集方法の検討や社内体制の整備が必要だ。以下では、ジェトロが実施した2018年度「日本企業の海外事業展開に関するアンケート調査」(以下、本調査)(注3)で明らかになった外国人材活用の現状について検証していく。

約6割の中小企業が外国人社員を雇用もしくは採用を検討

本調査で外国人社員の雇用状況を尋ねたところ、外国人材を雇用する企業は45.1%となり、前年(45.4%)から横ばいだった(図2参照)。大企業では既に74.5%の企業が外国人を雇用しているのに対し、中小企業では38.5%と、現状では大きな開きがある。しかし、中小企業では今後の採用を検討している企業が2割を超え、「外国人を雇用している」もしくは「今後(3年程度)採用を検討したい」と回答した企業が合わせて約6割(58.6%)に上った。

図2:外国人社員の雇用状況(全体、企業規模別)
外国人を雇用していると回答した企業は全体で45.1%、大企業で74.5%、中小企業で38.5%。現在、外国人は雇用していないが、今後(3 年程度)採用を検討したいと回答した企業は全体で17.8%、大企業で7.5%、中小企業で20.1%。現在、外国人は雇用しておらず、今後(3 年程度)も採用する方針はないと回答した企業は全体で33.0%、大企業で15.3%、中小企業で36.9%。なお、回答企業数は全体で3,385社、大企業615社、中小企業2,770社。母数は本調査の回答企業総数。

注:母数は本調査の回答企業総数。
出所:2018年度「日本企業の海外事業展開に関するアンケート調査」(ジェトロ)

図3:外国人社員の採用方法(全体、企業規模別)
日本国内の外国人留学生を採用と回答した企業は全体で43.9%、大企業で53.8%、中小企業で40.8%。日本国内の外国人(留学生を除く)を採用と回答した企業は全体で43.4%、大企業で47.4%、中小企業で42.2%。海外在住の外国人技能実習生を採用と回答した企業は全体で23.8%、大企業で14.7%、中小企業で26.6%。海外在住の外国人(技能実習生を除く)を採用と回答した企業は全体で19.8%、大企業で21.6%、中小企業で19.3%。その他と回答した企業は全体で4.3%、大企業で2.6%、中小企業で4.9%。 なお、回答企業数は全体で2,127社、大企業504社、中小企業1,623社。

注:母数は本調査で「外国人を雇用している」「外国人の採用を検討したい」と回答した企業。
出所:2018年度「日本企業の海外事業展開に関するアンケート調査」(ジェトロ)

これらの企業は外国人社員をどこから採用しているのだろうか。本調査結果では、日本国内で採用または検討している企業が多く、「日本国内の外国人留学生を採用」「日本国内の外国人(留学生を除く)を採用」と答えた企業はいずれも4割を超えた(複数回答、図3参照)。一方、海外在住の外国人の採用では、2割以上が技能実習生を採用または検討していると回答。企業規模別では、中小企業が26.6%と高く、大企業(14.7%)との差が大きかった。先に述べた出入国管理法の改正に伴い、一定の技術を身につけた技能実習生が新設された在留資格「特定技能1号」(注4)に移行する動きも想定される。

採用したい外国人材によって、アプローチの方法も変わる。図4で示した採用人材別の採用方法をみると、国内留学生の採用は「日本本社の募集案内」や「大学・各種学校のキャリアセンター・教授の紹介」を通じて採用を行う企業が多い(図4参照)。一方、外国人技能実習生の採用方法では、「民間の人材斡旋(あっせん)企業を利用」している企業が最も多く、55.5%に上った。そのほか、「自治体による支援を利用」「自治体以外の公的機関による支援を利用」と回答した企業がいずれも10%を超えており、技能実習生の採用に当たっては、第三者機関に対する期待が高い。

図4:外国人社員の採用方法(採用人材別)
日本国内の外国人留学生と回答した企業は933社、日本国内の留学生以外の外国人と回答した企業は924社、海外在住の外国人技能実習生を採用と回答した企業は506社、 海外在住の外国人(技能実習生を除く)を採用と回答した企業は422社。 外国人の採用方法は日本本社の募集案内がそれぞれ、57.1%、52.3%、16.2%、22.3%。大学・各種学校のキャリアセンター・教授の紹介がそれぞれ37.5%、11.3%、6.5%、9.5%。 民間の人材斡旋企業を利用がそれぞれ25.1%、37.9%、55.5%、32.5%。本社(日本)社員の個人的な人脈がそれぞれ14.3%、23.6%、6.9%、20.4%。海外現地法人による募集案内がそれぞれ4.5%、3.7%、18.4%、32.2%。海外の取引先企業の紹介がそれぞれ3.8%、3.9%、8.7%、17.5%。 自治体による支援を利用がそれぞれ11.8%、11.3%、12.8%、6.9%。 自治体以外の公的機関による支援を利用がそれぞれ9.4%、9.6%、15.8%、7.8%。 その他がそれぞれ2.4%、3.2%、3.8%、5.0%。

注:母数は「日本国内の外国人留学生を採用」した、あるいは検討したいと回答した企業。
出所:2018年度「日本企業の海外事業展開に関するアンケート調査」(ジェトロ)

採用の取り組み強化と同時にマネジメント層の育成を

優秀な人材は国籍を問わず、獲得競争にさらされる。外国人社員を採用し、長期的に雇用したいと考える企業は、社内制度から見直す必要がある。本調査で採用のための取り組みを尋ねたところ、調査企業全体では、「特別な取り組みは実施していない」と回答した企業の割合が38.0%と最も多かった(表1参照)。次に「職務内容や権限の明確化」「キャリアプランや育成方針の提示」と続く。ただ、社内での外国人社員比率が高くなるにつれ、取り組みも多層化する。外国人社員が従業員数の1割を超える企業では、上記に加え、「給与や福利厚生など待遇面の改善」や「社内の相談体制の整備」「日本語習得などの研修の充実」などにも取り組む傾向が共通して見られた。

表1:外国人社員比率別にみた採用の取り組み(複数回答、%)
外国人
社員比率
社数 キャリアプランや育成方針の提示 希望する部署への配属 職務内容や権限の明確化 昇給・昇格要件の明確化 給与や福利厚生など待遇面の改善 日本語習得支援など研修の充実 社内の相談体制の整備 採用期間や選考手続きの柔軟化 英語などによる採用情報の発信強化 大学、行政など関係機関との連携強化 特別な取り組みは実施していない その他
全 体 1,459 18.6 13.6 21.6 13.4 18.4 13.9 15.6 11.6 6.0 9.2 38.0 2.2
1 %未満 623 16.2 12.7 14.0 9.6 12.5 9.0 10.9 9.8 5.8 7.9 47.5 2.7
1 ~5 % 506 21.5 15.4 24.7 14.0 19.4 14.8 17.4 11.7 6.3 10.9 32.2 1.8
6 ~10% 147 17.0 12.2 25.9 16.3 22.4 20.4 17.7 11.6 6.8 8.2 32.7 0.7
11~20% 87 19.5 12.6 34.5 23.0 29.9 25.3 26.4 13.8 5.7 11.5 26.4 2.3
20%超 96 19.8 12.5 36.5 20.8 34.4 20.8 22.9 20.8 5.2 8.3 25.0 3.1

注:(1)母数は本調査で「外国人を雇用している」と回答し、社員比率を回答した企業。(2)太文字は回答率が20%以上の項目。
出所:2018年度「日本企業の海外事業展開に関するアンケート調査」(ジェトロ)

外国人社員の比率が高くなるにつれて、多層的な制度構築に加え、多国籍の人材をマネジメントする管理職の育成が急務となる。採用した外国人社員が定着し社内で活躍してもらうためには、現場でチームの一員として迎え入れ、適正なルールのもと評価できる管理職の存在が欠かせない。異文化マネジメントと組織文化研究の第一人者であるオランダの社会心理学者、ヘールト・ホフステード氏はインタビュー(2016年4月号ジェトロセンサー参照)の中で、「異文化への理解の希薄さには、教育や研修内容に問題がありそうだ。外国人の雇用を促進したいと考えている企業は、管理者クラスの社員にこのようなコースを受けさせる必要がある」と、管理職への研修の必要性を説いている。


注1:
正式名称「出入国管理及び難民認定法及び法務省設置法の一部を改正する法律」。2018年12月14日交付、2019年4月1日施行。
注2:
特定産業分野では、「建設」「宿泊」「農業」「介護」「造船」「ビルクリーニング」「漁業」「飲食料品製造業」「外食業」「素形材産業」「産業機械製造業」「電子・電気機器関連産業」「自動車整備業」「航空業」の14分野が指定されている。
注3:
本調査は、海外ビジネスに関心の高いジェトロのサービス利用日本企業10,004社を対象に、2018年11月から2019年1月にかけて実施。3,385社から回答を得た(有効回答率33.8%、回答企業の81.8%が中小企業)。プレスリリース・概要、報告書も参考に。過去の調査の報告書もダウンロード可能。
注4:
特定技能1号とは、「特定産業分野に属する相当程度の知識又は経験を必要とする技能を要する業務に従事する外国人向けの在留資格」のこと。対する特定技能2号は、「特定産業分野に属する熟練した技能を要する業務に従事する外国人向けの在留資格」。(入国管理局PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(1.1MB)
執筆者紹介
ジェトロ海外調査部国際経済課
伊尾木 智子(いおき ともこ)
2014年、ジェトロ入構。対日投資部(2014~2017年)、ジェトロ・プラハ事務所(2017年~2018年)を経て現職。

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