「2018年度日本企業の海外事業展開に関するアンケート調査」(ジェトロ海外ビジネス調査) 結果概要

2019年03月07日

ジェトロでは2018年11月~2019年1月にかけて、ジェトロのサービス利用企業(=海外ビジネスに関心の高い日本企業)10,004社を対象にアンケート調査を実施、3,385社から回答を得た(うち中小企業が2,770社、有効回答率33.8%)。アンケートでは、貿易・海外進出への取り組み、保護貿易主義の影響、FTAの活用、外国人材の活用、電子商取引(EC)等について尋ねた。調査結果のポイントおよび概要は次のとおり。

調査結果のポイント

  • 輸出、海外進出の拡大意欲はほぼ横ばいに推移、拡大先に中国を選ぶ企業の比率が上昇
  • 24%の企業が今後、保護貿易主義による負の影響を予想、その7割は対応策を検討
  • 海外向け販売のEC利用が拡大、約6割の企業は利益・メリットを実感

調査結果の概要

1. 輸出拡大意欲が下げ止まり、中国を最重要先とする回答が増加【P10~15】

今後(3年程度)の輸出方針については、「輸出の拡大を図る」企業が81.2%に達した(「さらに拡大を図る」企業(70.5%)と「新たに取り組みたい」企業(10.6%)を合わせた数値)。輸出拡大意欲を有する企業の比率は、2015年度(84.9%)をピークに低下を続け、17年度(79.4%)に8割を割ったが、18年度に下げ止まった。

今後、最も重視する輸出先については、輸出の拡大を図る企業の28.1%が中国と回答した。次いで、米国(14.7%)、ベトナム(8.0%)と続く。前回調査(16年度)と比較すると、中国の割合が19.8%から大きく増加した。最重要輸出先を選択した理由をみると、中国では「当該国・地域の需要の増加」と回答した割合が92.2%と、ほかの理由を大きく上回った。

2. 海外進出拡大意欲は横ばい、中国、米国では上向く【P16~24】

今後(3年程度)の海外進出方針については「海外進出の拡大を図る」企業が57.1%と前年(57.1%)から横ばいとなった(「さらに拡大を図る」企業(32.9%)と「新たに進出したい」企業(24.2%)とを合わせた数値)。拡大意欲が横ばいとなった要因として、回答企業からは人材不足を指摘するコメントが多かった。他方、海外需要には輸出で対応と回答した企業も目立った。

事業拡大を図る国・地域については、中国の比率が55.4%と前年(49.4%)から上昇した。中国の比率が上昇したのは、データのとれる2011年度以降で初めてである。また、前年に事業拡大意欲に低下がみられた米国は、製造業を中心に拡大意欲が上向き、32.3%と前年(29.0%)から上昇した。拡大を図る機能としては、両国ともに販売機能を挙げる企業が前年から増加した。

3. 24%の企業が今後、保護貿易主義による負の影響を予想、その7割は何らかの対応策を検討【P25~33】

2017年以降の「保護主義的な動き」(保護貿易主義)が自社のビジネスに与えた影響について、43.1%の企業が調査時点では「影響はない」と回答。次に、「わからない」(28.0%)、「全体としてマイナスの影響」(15.2%)が続いた。今後(2-3年程度)については、「影響はない」が15.9%に縮小する一方、「わからない」が42.0%、「全体としてマイナスの影響」が24.4%に拡大する。今後予想される影響の内容については、マイナスの影響を予想する企業(正負の影響が同程度の企業も含む)の47.9%が「販売先の経済悪化」を懸念する。自社や調達先、納入先の商品への負の影響を予想する企業の比率はそれぞれ30~34%程度となった。

保護貿易主義に対し、本調査の全回答企業の24.0%が既に何らかの対応策を実施済み、38.7%が今後実施を検討と回答した。うち、「全体としてマイナスの影響がある」と回答した企業では、何らかの対応策をとる企業の比率が、56.7%(実施済み)、70.1%(今後検討)に上る。これら企業の今後の対応策をみると、「情報収集強化」(30.1%)、「生産性向上・効率化」(26.5%)が2割を超えて高い。

4. 輸出でのFTA利用率は48%まで上昇、中小企業の利用が拡大【P34~39】

日本のFTA締結国へ輸出を行う企業のうち、1カ国以上でFTAを利用している企業の比率は48.2%で、前年比3.3%ポイント上昇した。中小企業の利用率は43.8%で、同4.6%ポイント上昇した。日EU・EPAやTPP11の原産地証明制度として採用された自己申告制度(自己証明制度とも呼ばれる)に対する認識では、「原産地手続きにかかる手間・時間を短縮できる」との回答が最も多く、FTAを利用または検討中の企業の39.0%に上った。他方、37.0%が「自己証明制度に関する情報が不足している」と回答した。

5. 約6割の中小企業が外国人社員を雇用もしくは採用を検討【P40~46】

国内拠点で「外国人を雇用している」企業の割合は45.1%と、前年(45.4%)並みの水準を維持した。今後採用を検討したいと回答した企業は前年に比べ増加した(前年15.7%→17.8%)。企業規模別では、「外国人を雇用している」もしくは「今後採用を検討したい」と回答した中小企業が約6割(58.6%)に上った。外国人社員の雇用比率が高い企業では「職務内容や権限の明確化」、「給与や福利厚生など待遇面の改善」、「社内の相談体制の整備」などに取り組む比率が共通して高い傾向がみられる。

6. 海外向け販売のEC利用が拡大、約6割の企業は利益・メリットを実感【P47~53】

販売でECを利用したことのある企業のうち、海外向け販売でECを利用したことのある企業は52.8%で、16年度の前回調査(47.2%)を上回った。海外販売の内訳をみると、日本国内から海外への販売(越境EC)で利用したことのある企業は40.3%と、前回調査から9.4%ポイント上昇した。海外拠点での販売は22.8%で横ばいだった。

海外向け販売でECを利用したことがある企業で、何らかの利益・メリットがあると回答した企業は59.7%だった。そのうち、「(海外EC事業単体で)現状、黒字である」と回答した企業は全体の28.7%で、大企業は40.2%、中小企業は26.1%と企業規模による差が見られた。業種別では、医療品・化粧品で何らかの利益・メリットがあると回答した企業が7割を超えた。海外販売先については、現在、今後(3年程度)とも中国を挙げる企業が最も多くなっている。


各年の調査報告書は「日本企業の海外事業展開に関するアンケート調査」からご覧いただけます。

ジェトロ国際経済課(担当:明日山、柏瀬)
Tel:03-3582-5177