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特集:日本企業の海外事業展開を読む海外ビジネスでの電子商取引(EC)活用に高い関心

2018年4月24日

昨今、新たなデジタル技術の発展が取り沙汰されるが、その活用実態に関する資料はまだ少ない。そこで、2017年度「日本企業の海外事業展開に関するアンケート調査」(以下、本調査)では、デジタル技術の活用について尋ねた。今回の調査では(1)海外ビジネスでのデジタル技術の活用は電子商取引(EC)が中心、(2)デジタル技術の活用対象国は中国がトップ、(3)特に中小企業がECのメリットを認識、の3点が明らかとなった。

海外でのデジタル技術活用はECが中心

2017年度の本調査(注1) では、海外ビジネスに関心の強い企業に七つのデジタル技術(注2) (電子商取引(EC)、ロボット、3Dプリンター、IoT(モノのインターネット)、ビッグデータ、人工知能(AI)、クラウド・ファンディング)の活用実態を尋ねた。まず全ての技術をあわせた活用実態をみると、国内ビジネスで活用あるいは活用検討中の回答比率が海外ビジネスでのそれを大きく上回ったことがわかる(図1)。この傾向は企業規模や業種にかかわらず見られた。

図1:デジタル技術の活用状況(全体、企業規模別、業種別)
国内ビジネスで活用中と回答した企業は、全体 29.8%、大企業37.3%、中小企業28.0%。 国内ビジネスで活用を検討中と回答した企業は、全体 27.9%、大企業35.1%、中小企業26.2%。 海外ビジネスで活用中と回答した企業は、全体 10.1%、大企業16.4%、中小企業8.6%。 海外ビジネスで活用を検討中と回答した企業は、全体 14.2%、大企業14.6%、中小企業14.1%。
注1:
「海外ビジネス」とは、当該技術の海外拠点での活用のほか、越境EC、海外データの収集・解析、海外事業目的の資金調達を含む。
注2:
母数は、本調査の回答企業総数。このため、「活用中」、「活用を検討中」以外の企業には、本設問への無回答企業も含まれる。
注3:
海外ビジネスで「活用中」、「活用を検討中」の両方を回答した企業は「活用中」に分類している。
出所:
2017年度「日本企業の海外事業展開に関するアンケート調査」(ジェトロ)

技術別に活用状況を見ると、国内ビジネス、海外ビジネスでの活用ともにEC、IoT、ロボットの順に回答が多かった(図2)。「活用中」または「活用を検討中」を合わせたECの回答率は国内ビジネスではIoTの約2倍(EC:29.4%、IoT:14.9%)、海外ビジネスでは3倍以上(EC:17.8%、IoT:5.7%)となり、企業の活用への意識が特に高いことがうかがえた。EC活用への意欲は企業規模を問わず高い。特に海外ビジネスでは七つの技術の中で企業規模による回答率の差が小さく、また唯一、中小企業の活用検討が大企業を上回った(表1)。本調査では、今後中長期的に自社ビジネスに最も影響を与えるデジタル技術としてECを挙げる企業が中小企業で最多となったが(詳しくは本特集の「デジタル技術への理解は進むも人材・コストが活用の壁」を参照)、企業の活用検討にもそれが現れる結果となった。一方で、他の技術では大企業と中小企業の活用姿勢に大きな隔たりが見られる。特にIoT、ビッグデータ、AIでは、活用を検討中と回答した大企業の比率が中小企業の約3倍となった。これら技術のビジネス活用の始まりは数年前と比較的新しいが、活用に対する意欲の差が、将来的に大企業と中小企業の競争力の格差拡大につながる可能性が懸念される。

図2:デジタル技術別の活用状況(全体)

国内
電子商取引(EC)は 活用中 20.3%、活用を検討中 9.1% IoT(モノのインターネット)は 活用中 3.7%、活用を検討中 11.2% ロボットは 活用中 6.0%、活用を検討中 8.1% ビッグデータは 活用中 2.5%、活用を検討中 7.5% 人工知能(AI)は 活用中 1.5%、活用を検討中 10.1% 3Dプリンターは 活用中 5.8%、活用を検討中 4.4% クラウド・ファンディングは 活用中 1.6%、活用を検討中 4.6%
注:
図1の注を参照。
出所:
2017年度「日本企業の海外事業展開に関するアンケート調査」(ジェトロ)
海外
電子商取引(EC)は 活用中 7.2%、活用を検討中 10.6% IoT(モノのインターネット)は 活用中 1.1%、活用を検討中 4.6% ロボットは 活用中 1.9%、活用を検討中 2.6% ビッグデータは 活用中 0.6%、活用を検討中 3.2% 人工知能(AI)は 活用中 0.2%、活用を検討中 3.0% 3Dプリンターは 活用中 0.7%、活用を検討中 1.5% クラウド・ファンディングは 活用中 0.2%、活用を検討中 1.5%
注:
図1の注を参照。
出所:
2017年度「日本企業の海外事業展開に関するアンケート調査」(ジェトロ)
表1:海外ビジネスにおけるデジタル技術別の活用状況(企業規模別)(複数回答、%)
技術 活用中+活用を検討中 活用中 活用を検討中
大企業 中小企業 大企業 中小企業 大企業 中小企業
EC 19.0 17.5 9.1 6.8 9.9 10.7
IoT 13.1 4.0 3.3 0.6 9.8 3.4
ロボット 10.1 3.2 6.1 0.9 4.0 2.3
ビッグデータ 9.3 2.5 2.2 0.2 7.1 2.3
AI 7.8 2.2 0.5 0.2 7.3 2.0
3Dプリンター 4.5 1.7 2.0 0.4 2.5 1.3
クラウド・ ファンディング 2.3 1.6 0.5 0.1 1.8 1.5
注:
図1の注を参照。
出所:
2017年度「日本企業の海外事業展開に関するアンケート調査」(ジェトロ)

デジタル技術の活用対象国は中国が首位

海外ビジネスでデジタル技術を活用中あるいは活用を検討中とした企業に対し、活用対象国・地域を尋ねたところ、国別では全ての技術で中国の回答が最多となった(表2)。特に、企業の活用への意欲が最も高いECでは、中国の回答比率が52.7%と半数を超え、2位の米国(29.9%)を20%ポイント以上上回る結果となった。ECで世界最大の市場である中国への関心が極めて高いことがわかる。ECにおけるその他の活用対象国・地域では、台湾(23.7%)、香港(19.7%)、シンガポール(15.6%)が続き、日本企業がアジア市場に高い関心を持っていることが明らかになった。

表2:海外ビジネスにおけるデジタル技術の活用対象国・地域(全体、上位5カ国・地域)

EC (n=569)(複数回答、%)
順位 国・地域 回答率
1 中国 52.7
2 米国 29.9
3 台湾 23.7
4 香港 19.7
5 シンガポール 15.6
IoT (n=182)(複数回答、%)
順位 国・地域 回答率
1 中国 34.6
2 米国 27.5
3 タイ 26.4
4 西欧 15.9
5 ベトナム 13.2
ロボット(n=143)(複数回答、%)
順位 国・地域 回答率
1 中国 42.7
2 タイ 24.5
3 米国 21.7
4 ベトナム 16.1
5 インドネシア 14.7
ビッグデータ(n=120)(複数回答、%)
順位 国・地域 回答率
1 中国 33.3
2 米国 23.3
3 タイ 21.7
4 シンガポール 16.7
5 インドネシア 14.2
AI (n=104)(複数回答、%)
順位 国・地域 回答率
1 中国 34.6
2 タイ 23.1
3 米国 22.1
4 シンガポール 16.3
5 香港 14.4
5 ベトナム 14.4
3Dプリンター(n=71)(複数回答、%)
順位 国・地域 回答率
1 中国 31.0
2 米国 23.9
3 タイ 16.9
4 ベトナム 14.1
5 インドネシア 12.7
クラウド・ファンディング(n=55)(複数回答、%)
順位 国・地域 回答率
1 中国 34.5
2 タイ 23.6
3 米国 23.6
4 シンガポール 16.4
5 ベトナム 14.5
出所:
2017年度「日本企業の海外事業展開に関するアンケート調査」(ジェトロ)

ECを除く残り六つの技術の活用対象国・地域を見ると、いずれの技術も2位と3位が米国かタイのいずれかとなった。本年度の調査結果によると、中国、米国、タイはそれぞれ日本企業の輸出先1位、3位、4位、同海外進出先1位、3位、2位となっている。その他の技術の活用対象国・地域をみても、技術によって順位に変動はあるものの、いずれも北東アジアや東南アジアの回答比率が高く、すでに日本企業が多く進出している地域が上位に入っている。

ECの海外向け販売は中小企業にメリット大

先述のとおり、海外ビジネスでのデジタル技術活用は、ECの回答比率が17.8%(569社)で最多となった。これらの企業にECを利用した販売メリットについて尋ねたところ、「売り上げの増加」(75.4%)、「従来より幅広い顧客層をターゲットにできる」(65.0%)、「より多くの国・地域での販売が可能」(62.2%)の順に回答が多かった(図3)。

企業規模別にみると、中小企業の回答比率が大企業を上回る項目(図3赤枠内)が五つみられ、中小企業のECに対する期待の高さがうかがえた。まず「売り上げの増加」や「より多くの国・地域での販売が可能」という販売に直接かかわる2項目では中小企業の回答率が大企業をそれぞれ10%、20%ポイント以上上回った。昨今、先進国、途上国を問わず中小企業の国際競争力の強化が課題として認識され、ECはそれを促すビジネス手法として注目を集めている。今回の調査では、大企業に比べて人的・資金的リソースの少ない中小企業が、EC利用による売り上げの増加や販売先拡大を大きなメリットとして認識していることが明らかになった。

図3:ECを利用した販売メリット(全体、企業規模別)
売り上げの増加は 全体 75.4%、大企業 67.0%、中小企業 77.5% 従来より幅広い顧客層をターゲットにできるは 全体 65.0%、大企業 69.6%、中小企業 63.9% より多くの国・地域での販売が可能は 全体 62.2%、大企業45.2%、中小企業66.5% 消費者へのアプローチの多様化は 全体:49.6%、大企業 48.7%、中小企業 49.8% 自社認知度の向上は 全体 34.8%、大企業 26.1%、中小企業 37.0% 顧客ニーズを直接聞くことができるは 全体 31.3%、大企業 20.0%、中小企業 34.1% 詳細な顧客データの入手は 全体 26.5%、大企業 27.0%、中小企業 26.4% 従来より低価格で直接販売が可能は 全体 21.6%、大企業 23.5%、中小企業 21.1% その他は 全体 2.3%、大企業 4.3%、中小企業 1.8% 無回答は 全体 0.9%、大企業 1.7%、中小企業 0.7%
注:
母数は、海外ビジネスで電子商取引(EC)を「活用中」または「活用を検討中」と回答した企業。
出所:
2017年度「日本企業の海外事業展開に関するアンケート調査」(ジェトロ)

また、「自社認知度の向上」と「直接顧客ニーズを聞くことができる」の2項目でも中小企業の回答が大企業を10%ポイント以上上回った。ウェブ上で店舗を構え、その店舗へのアクセスが増えれば、その分だけ自社の製品・サービスの露出度は高くなりブランド力強化につながる。消費者をウェブ上の店舗へ導くオンライン広告も充実してきた。ウェブサイトの訪問履歴や検索ワードに基づいた広告戦略に加え、ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)を通じた宣伝も可能だ。以前に比べてより安価に海外消費者・顧客向けに自社をアピールできるようになったことは、特に中小企業にとってメリットとして認識されているようだ。また、顧客ニーズに関する情報収集は企業のさらなる競争力強化に向けて重要な要素である。中間業者を通さずに消費者や顧客への直接販売が増加すると、自社の製品・サービスに対して直接フィードバックを得るきっかけになる。顧客ニーズの蓄積は、将来的に新たな製品やサービスの開発につながる可能性もあり、企業の競争力強化に好影響をもたらすだろう。

物流・決済の課題解決策は

2016年度の前回調査では、ECを活用した海外向け販売の課題として物流と決済が多く挙げられた。このため、本年度の調査ではこれら物流と決済の課題解決策について尋ねた。物流課題の解決策としては、「追跡可能な配送サービスの利用」(41.1%)、「受注から配送までを代行企業・ECサイトに委託」(33.7%)、「販売先国・地域の配送業者と連携」(33.4%)の回答比率が3割を超えた(図4)。「追跡可能な配送サービスの利用」については、企業規模による差が小さく、13の業種で最多の回答となるなど多くの業種で回答率が高かった。一方で、「受注から配送までを代行企業・ECサイトに委託」が最多となった業種は「化学」、「繊維・織物/アパレル」、「医薬品・化粧品」、「電気機械」の4業種、「販売先国・地域の配送業者と連携」が最多となったのは「運輸」、「小売」、「通信・情報・ソフトウェア」の3業種であった。

図4:海外向けEC販売の物流課題解決策(全体、企業規模別)
追跡可能な配送サービスの利用は 全体 41.1%、大企業 42.6%、中小企業 40.7% 受注から配送までを代行企業・ECサイトに委託は 全体 33.7%、大企業 38.3%、中小企業 32.6% 販売先国・地域の配送業者と連携は 全体 33.4%、大企業38.3%、中小企業32.2% 在庫や受注の管理システムの導入は 全体:27.8%、大企業 42.6%、中小企業 24.0% 受注前に輸出地税関を通過し、配送時間を短縮は 全体 13.2%、大企業 13.9%、中小企業 13.0% 発注者の都合のみによる返品を認めないは 全体 10.5%、大企業 4.3%、中小企業 12.1% 特別な対策はしていないは 全体 14.6%、大企業 10.4%、中小企業 15.6% その他は 全体 2.5%、大企業 1.7%、中小企業 2.6% 無回答は 全体 7.9%、大企業 10.4%、中小企業 7.3%
注:
母数は、海外ビジネスで電子商取引(EC)を「活用中」または「活用を検討中」と回答した企業。
出所:
2017年度「日本企業の海外事業展開に関するアンケート調査」(ジェトロ)

企業規模により最も大きな差があったのは「在庫や受注の管理システムの導入」であった。中小企業の回答率が24.0%にとどまったのに対し、大企業は42.6%と10%ポイント以上の差が開いた。42.6%という大企業の回答率は「追跡可能な配送サービスの利用」と並んで最も多い。この企業規模による差は、EC販売の際に利用するチャンネルの数や拠点に起因すると考えられる。2016年度の調査結果によると、大企業が海外向けEC販売の際に利用する基盤(プラットフォーム)は「他社の海外ECサイト」、「自社ECサイト」の順に多く、中小企業とは逆の並びとなった。特に複数の他社ECサイトを利用する場合、これらの異なるサイトからの発注を一元的に管理する必要が生じる。また、国内外の複数拠点でECを活用する際にも在庫情報の管理が重要となる。大企業の「在庫や受注の管理システムの導入」の回答率が高い背景には、これらの要因が考えられる。

次に、決済における課題解決策をみると、全体で回答比率が3割を超えたのは「決済を代行企業・ECサイトに委託」(34.1%)のみだった(図5)。同回答を企業規模別にみると、大企業(39.1%)の回答が中小企業(32.8%)をやや上回った。他方、中小企業の回答が大企業を大幅に上回ったのは「デジタル決済に自社で対応」であった(大企業:17.4%、中小企業:31.1%)。先述のとおり2016年度の調査結果によると、中小企業が海外向けEC販売の際に利用する基盤は「自社ECサイト」が最多だった。他社の海外ECサイトへの出店は手数料などの費用に加え、他言語での出店準備など間接コストも少なくない。このため人的・資金的リソースが限られる中小企業では、自社ECサイトの重要性が高くなる。自社サイトで購入しようとする消費者の取りこぼしが少なくなるよう、デジタル決済に積極的に対応する中小企業が多いものと推測される。

図5:海外向けEC販売の決済課題解決策(全体、企業規模別)
決済を代行企業・ECサイトに委託は 全体 34.1%、大企業 39.1%、中小企業 32.8% クレジットカードの不正利用対策の強化は 全体 29.7%、大企業 27.8%、中小企業 30.2% 前払いやデポジット(預り金)システムの採用は 全体 28.3%、大企業27.0%、中小企業28.6% デジタル決済(アリペイ、ペイパルなど)に自社で対応は 全体:28.3%、大企業 17.4%、中小企業 31.1% (越境販売の際に)現地通貨建て決済に対応は 全体 13.2%、大企業 16.5%、中小企業 12.3% 代金引換払いに対応は 全体 12.3%、大企業 13.0%、中小企業 12.1% 特別な対策はしていないは 全体 17.2%、大企業 18.3%、中小企業 17.0% その他は 全体 2.5%、大企業 4.3%、中小企業 2.0% 無回答は 全体 8.3%、大企業 12.2%、中小企業 7.3%
注:
母数は、海外ビジネスで電子商取引(EC)を「活用中」または「活用を検討中」と回答した企業。
出所:
2017年度「日本企業の海外事業展開に関するアンケート調査」(ジェトロ)

注1:
本調査は、海外ビジネスに関心の高いジェトロのサービス利用日本企業9,981社を対象に、2017年11月から2018年1月にかけて実施。3,195社から回答を得た(有効回答率32.0%、回答企業の81.1%が中小企業)。プレスリリース・概要報告書も参考にされたい。なお、過去の調査の報告書もダウンロード可能。
注2:
本調査ではデジタル技術を、「新しいデジタル技術や同技術を利用したビジネス手法」と定義した。各技術の定義は 報告書p.109PDFファイル(3.7MB) を参照
執筆者紹介
ジェトロ海外調査部国際経済課
長﨑 勇太(ながさき ゆうた)
2016年、ジェトロ入構。同年4月より現職。

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