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特集:日本企業の海外事業展開を読む中長期的には幹部層での外国人材活用が増加の見通し

2018年4月24日

ジェトロが実施した2017年度「日本企業の海外事業展開に関するアンケート調査」(以下、本調査)によれば、日本企業の国内拠点における外国人材活用は現時点で実務担当者が中心だが、今後中長期的にはより上位の幹部人材に対するニーズも高まる見通しである。他方、海外拠点における現地人材の幹部登用は部課長級が中心となっており、業種別では自動車業界が他に先行している。

国内拠点での外国人材活用は実務担当者が中心

本調査(注1)で国内の本社や工場における外国人社員の雇用状況を尋ねたところ、外国人材を雇用する企業は回答企業総数(3,195社)の45.4%となり、前年(46.0%)と同水準を維持した。企業規模別では大企業(604社)の72.7%が外国人社員を雇用する一方、中小企業(2,591社)は39.1%にとどまった。業種別では製造業(1,748社)の47.8%に対し、非製造業(1,447社)が42.6%と製造業における雇用比率がやや高かった。

外国人社員を雇用する企業においては、「一般事務職」に外国人材がいると答えた企業が全体の50.3%と最も多く、次いで「一般工職」(40.0%)、「エンジニア」(24.1%)が続いた(表1)。その他の職種では、「事務系(営業など)の部課長級」(16.4%)、「研究開発職」(13.1%)が1割を超えたが、「技術系(生産など)の部課長級」(6.3%)、「取締役(社外取締役を含む)」(6.2%)、「代表取締役」(3.4%)は1割未満にとどまった。このように日本企業の国内拠点における外国人材活用は現時点で一般事務職や一般工職、エンジニアといった現場に近い実務担当者が中心となっている。また、外国人社員の雇用状況を業種別にみると、エンジニアに外国人材がいる企業の割合は通信・情報・ソフトウェア(82.7%)、建設(67.7%)で突出して高いほか、研究開発職は化学(40.4%)、自動車/自動車部品/その他輸送機器(34.7%)、情報通信機器/電子部品・デバイス(34.2%)で全体平均を大きく上回り業種による違いが明らかになった。

表1:国内拠点における外国人社員の雇用状況(全体、業種別)(複数回答、%)(-は値なし)
業種 社数 代表取締役が外国人 取締役(社外取締役を含む)に外国人がいる 事務系(営業など)の部課長級に外国人がいる 技術系(生産など)の部課長級に外国人がいる 研究開発職に外国人がいる エンジニア(専門技術者)に外国人がいる 一般工職に外国人がいる 一般事務職に外国人がいる
全体 1,451 3.4 6.2 16.4 6.3 13.1 24.1 40.0 50.3
階層レベル2の項目 製造業 835 1.2 5.6 15.4 6.8 18.4 24.7 53.8 46.9
階層レベル3の項目飲食料品 140 0.7 2.9 9.3 1.4 10.7 1.4 67.1 31.4
階層レベル3の項目繊維・織物/アパレル 38 - - 7.9 10.5 7.9 7.9 47.4 55.3
木材・木製品/家具・建材/紙・パルプ 22 - - 13.6 - 4.5 9.1 68.2 36.4
階層レベル3の項目化学 52 - 11.5 23.1 11.5 40.4 32.7 26.9 55.8
階層レベル3の項目医療品・化粧品 41 2.4 12.2 26.8 7.3 22.0 7.3 26.8 58.5
階層レベル3の項目石油・石炭製品/プラスチック製品/ゴム製品 45 - 2.2 11.1 4.4 4.4 13.3 66.7 55.6
階層レベル3の項目窯業・土石 13 - - 7.7 7.7 7.7 15.4 69.2 38.5
階層レベル3の項目鉄鋼/非鉄金属/金属製品 95 - 2.1 13.7 7.4 16.8 33.7 62.1 34.7
階層レベル3の項目一般機械 98 1.0 3.1 17.3 9.2 17.3 35.7 55.1 46.9
階層レベル3の項目電気機械 49 - 2.0 22.4 8.2 22.4 49.0 36.7 49.0
階層レベル3の項目情報通信機械器具/電子部品・デバイス 38 5.3 10.5 18.4 10.5 34.2 39.5 44.7 71.1
階層レベル3の項目自動車/自動車部品/その他輸送機器 72 1.4 11.1 18.1 11.1 34.7 45.8 66.7 54.2
階層レベル3の項目精密機器 35 2.9 11.4 17.1 5.7 22.9 22.9 40.0 51.4
階層レベル3の項目その他の製造業 97 3.1 9.3 14.4 5.2 12.4 24.7 49.5 50.5
階層レベル2の項目 非製造業 616 6.5 7.0 17.7 5.5 5.8 23.4 21.4 54.9
階層レベル3の項目商社・卸売 267 9.0 8.2 24.3 4.1 2.6 8.6 19.1 62.5
階層レベル3の項目小売 44 4.5 2.3 25.0 4.5 2.3 6.8 27.3 47.7
階層レベル3の項目建設 65 1.5 3.1 1.5 1.5 9.2 67.7 29.2 21.5
階層レベル3の項目運輸 32 9.4 12.5 18.8 9.4 3.1 9.4 9.4 75.0
階層レベル3の項目金融・保険 29 - 3.4 10.3 3.4 - - - 93.1
階層レベル3の項目通信・情報・ソフトウェア 52 3.8 3.8 3.8 9.6 23.1 82.7 7.7 42.3
階層レベル3の項目専門サービス 35 11.4 8.6 20.0 11.4 8.6 25.7 5.7 45.7
階層レベル3の項目その他の非製造業 92 4.3 8.7 15.2 7.6 6.5 20.7 44.6 51.1
注1:
母数は本調査で「外国人を雇用している」と回答した企業。
注2:
太字は回答率が20%超の業種。
出所:
「2017年度日本企業の海外事業展開に関するアンケート調査」(ジェトロ)

海外拠点の現地人材登用は自動車業界が先行

また、本調査で海外拠点(代理店を除く)を有すると回答した企業(1,501社)のうち、同拠点で現地人材の幹部登用(注2)を行っている企業の割合は67.8%に及んだ。特に大企業(491社)における同割合は82.3%と中小企業(1,010社)の60.8%を大きく上回り登用が進んでいる。今後、現地人材登用を検討する企業(6.9%)とあわせると、全体の74.7%が登用に前向きな姿勢を示しており、経営の現地化に対する日本企業の意欲は高い。

海外拠点で現地人材を幹部登用する企業においては、「事務系(営業など)の部課長級」に登用する割合が全体の79.0%と最も高く、次いで「技術系(生産など)の部課長級」(49.7%)、「取締役(社外取締役を含む)」(40.3%)、「代表取締役」(28.5%)、「研究開発職」(21.0%)と続いた(表2)。同結果が示すように、日本企業による現地人材登用は、中間管理職に相当する部課長級が中心となっており、これに次いで経営層への登用が多くなっている。また、現地人材の登用状況を業種別にみると、自動車/自動車部品/その他輸送機器で「取締役(社外取締役を含む)」への登用比率が59.1%と他の業種を大きく上回ったほか、「研究開発職」への登用も47.0%と突出して高い。事務系や技術系の部課長級でも全体平均を上回る。海外売上高比率の高い同業種(注3)は、現地人材登用においても他業種に先行している実態が明らかになった。

表2:海外拠点における現地人材登用状況(全体、業種別)(複数回答、%)(-は値なし)
業種 社数 代表取締役が現地人材 取締役(社外取締役を含む)に現地人材がいる 事務系( 営業など) の部課長級に現地人材がいる 技術系( 生産など) の部課長級に現地人材がいる 研究開発職に現地人材がいる
全体 1,018 28.5 40.3 79.0 49.7 21.0
階層レベル2の項目 製造業 605 30.6 43.5 82.0 62.3 27.9
階層レベル3の項目飲食料品 51 37.3 45.1 66.7 52.9 31.4
階層レベル3の項目繊維・織物/アパレル 29 20.7 27.6 79.3 44.8 27.6
階層レベル3の項目木材・木製品/家具・建材/紙・パルプ 12 16.7 33.3 100.0 66.7 0.0
階層レベル3の項目化学 55 36.4 36.4 76.4 56.4 36.4
階層レベル3の項目医療品・化粧品 20 15.0 30.0 95.0 45.0 25.0
階層レベル3の項目石油・石炭製品/プラスチック製品/ゴム製品 38 28.9 36.8 84.2 57.9 18.4
階層レベル3の項目窯業・土石 9 11.1 44.4 77.8 44.4 11.1
階層レベル3の項目鉄鋼/非鉄金属/金属製品 70 27.1 47.1 81.4 68.6 20.0
階層レベル3の項目一般機械 73 23.3 49.3 82.2 64.4 20.5
階層レベル3の項目電気機械 39 38.5 48.7 74.4 59.0 25.6
階層レベル3の項目情報通信機械器具/電子部品・デバイス 38 34.2 39.5 86.8 65.8 31.6
階層レベル3の項目自動車/自動車部品/その他輸送機器 66 30.3 59.1 93.9 83.3 47.0
階層レベル3の項目精密機器 31 45.2 32.3 83.9 67.7 29.0
その他の製造業 74 33.8 43.2 81.1 59.5 28.4
階層レベル2の項目非製造業 413 25.4 35.6 74.6 31.2 10.9
階層レベル3の項目商社・卸売 206 23.3 35.0 75.7 24.3 7.8
階層レベル3の項目小売 24 20.8 16.7 70.8 33.3 12.5
階層レベル3の項目建設 46 28.3 39.1 67.4 71.7 8.7
階層レベル3の項目運輸 33 21.2 48.5 81.8 15.2 6.1
階層レベル3の項目金融・保険 10 40.0 40.0 100.0 10.0 10.0
階層レベル3の項目通信・情報・ソフトウェア 25 20.0 28.0 56.0 36.0 32.0
階層レベル3の項目専門サービス 23 34.8 43.5 69.6 30.4 17.4
階層レベル3の項目その他の非製造業 46 32.6 34.8 80.4 34.8 15.2
注1:
母数は海外拠点で現地人材を幹部登用している企業。
注2:
太字は回答率が40%以上の業種。
出所:
「2017年度日本企業の海外事業展開に関するアンケート調査」(ジェトロ)

中長期的には幹部層での外国人材活用が増加の見通し

既に見たように日本企業の国内拠点における外国人材活用は現時点で一般事務職や一般工職など実務担当者が中心だが、今後中長期的(5~10年程度)には、より上位の幹部層の人材ニーズも高まる見通しである。中長期的に外国人材活用の必要性が現在より増すと見込まれる職種を尋ねたところ、組織の中核を担う幹部層では「事務系(営業など)の部課長級」が29.4%で最も多く、「研究開発職」(18.8%)、「技術系(生産など)の部課長級」(16.4%)、「取締役(社外取締役を含む)」(9.6%)と続いた(表3)。一方、実務を担う「一般事務職」、「一般工職」の比率はともに3割台となった。前述した現時点における雇用状況は、「一般事務職」、「一般工職」の比率がそれぞれ50.3%、40.0%に上るのに対し、幹部層では最大の「事務系(営業など)の部課長」でも16.4%にとどまっており、今後中長期的には幹部層での外国人材活用が現状より進む見通しとなっている。特に大企業では約4割(37.4%)が中長期的に「事務系(営業など)の部課長級」で外国人材の必要性が増す見込みと回答、「研究開発職」(29.3%)、「技術系(生産など)の部課長級」(24.9%)でも2割超が必要性の高まりを指摘している。

表3:現時点における外国人材の雇用状況および中長期的に外国人材ニーズの高い職種(国内拠点)

現時点における外国人材の雇用状況(複数回答、%)
職種 全体(n=1,451) 大企業(n=439) 中小企業(n=1,012)
代表取締役 3.4 1.4 4.3
取締役(社外取締役を含む) 6.2 7.5 5.6
事務系(営業など)の部課長級 16.4 20.5 14.6
技術系(生産など)の部課長級 6.3 8.4 5.3
研究開発職 13.1 23.5 8.6
エンジニア(専門技術者) 24.1 36.9 18.6
一般工職 40.0 32.3 43.4
一般事務職 50.3 71.3 41.2
中長期的に外国人材ニーズの高い職種(複数回答、%)
職種 全体(n=1,795) 大企業(n=393) 中小企業(n=1,402)
代表取締役 2.5 2.0 2.6
取締役(社外取締役を含む) 9.6 16.5 7.7
事務系(営業など)の部課長級 29.4 37.4 27.1
技術系(生産など)の部課長級 16.4 24.9 14.1
研究開発職 18.8 29.3 15.9
エンジニア(専門技術者) 34.6 43.8 32.0
一般工職 39.6 30.5 42.2
一般事務職 36.3 52.2 31.9
注1:
現時点における外国人材の雇用状況の母数は、本調査で「外国人を雇用している」企業。
注2:
中長期的に外国人材ニーズの高い職種の母数は、何らかの職種で中長期的に外国人材活用の必要性が現在よりも増すと回答した企業。
出所:
「2017年度日本企業の海外事業展開に関するアンケート調査」(ジェトロ)

他方、海外拠点で今後、中長期的に現地人材登用ニーズが高まると見込まれる職種については、「事務系(営業など)の部課長級」と回答した企業が最多の67.8%となった。同割合は大企業で81.9%に及ぶ一方、中小企業は61.8%にとどまった。「取締役(社外取締役を含む)」(大企業52.0%、中小企業29.6%)、「技術系(生産など)の部課長級」(大企業55.4%、中小企業39.3%)への登用においても、大企業と中小企業の回答率の差が大きかった。また、現地人材登用のニーズが中長期的に高まると見込まれる職種を回答企業の海外拠点別にみると、ASEAN6と中国では「事務系(営業など)の部課長級」が最も多く、次いで「技術系(生産など)の部課長級」の順となった(表4)。一方、米国においては最多の「事務系(営業など)の部課長級」に次いで「取締役(社外取締役を含む)」が多くなり、アジアと米国で違いがみられた。特に大企業においては、米国拠点で現地人材を取締役に登用するニーズが高まると回答した企業の割合が過半の58.6%に達した。

表4:中長期的に現地人材登用ニーズの高い職種(全体、企業規模別)

ASEAN6拠点(複数回答、%)
職種 全体 (n=644) 大企業(n=219) 中小企業(n=425)
代表取締役 16.6 16.0 16.9
取締役(社外取締役を含む) 32.8 45.7 26.1
事務系( 営業など) の部課長級 67.2 79.0 61.2
技術系( 生産など) の部課長級 49.5 57.1 45.6
研究開発職 22.0 29.2 18.4
中国拠点(複数回答、%)
職種 全体 (n=532) 大企業(n=218) 中小企業(n=314)
代表取締役 18.4 20.6 16.9
取締役(社外取締役を含む) 31.8 39.9 26.1
事務系( 営業など) の部課長級 66.0 78.0 57.6
技術系( 生産など) の部課長級 42.3 50.0 36.9
研究開発職 21.2 24.8 18.8
米国拠点(複数回答、%)
職種 全体(n=247) 大企業(n=111) 中小企業(n=136)
代表取締役 21.5 27.0 16.9
取締役(社外取締役を含む) 42.5 58.6 29.4
事務系( 営業など) の部課長級 71.7 78.4 66.2
技術系( 生産など) の部課長級 36.0 47.7 26.5
研究開発職 24.7 35.1 16.2
注1:
母数は海外拠点に当該国・地域を挙げた企業のうち、何らかの職種で中長期的に現地人材登用の必要性が増すと回答した企業。
注2:
ASEAN6は、シンガポール、タイ、マレーシア、インドネシア、フィリピン、ベトナムの6カ国の合計。
出所:
2017年度「日本企業の海外事業展開に関するアンケート調査」(ジェトロ)

外国人材活用に対する期待は徐々に収益面へシフトか

国内拠点で外国人社員を雇用している、もしくは今後採用を検討する企業においては、外国人材活用のメリットとして、「販路の拡大」(35.8%)や「対外交渉力の向上」(35.7%)を挙げる企業が多かった。企業規模別にみると、大企業は「対外交渉力の向上」が42.5%と最も高い一方、中小企業は「販路の拡大」が37.6%で最多となった。大企業においては、「経営の現地化への布石」の回答も30.9%と中小企業(18.2%)を大きく上回り期待が高い。外国人材活用のメリットに関し、過去の推移をみると、上記の販路拡大と対外交渉力向上の回答率が前回(2015年)調査からともに低下した一方、「財務的効果(売上、業績等の向上)」は2014年の13.5%から、2015年15.3%、2017年17.9%と増加傾向にあり、日本企業の外国人材活用への期待が販路や交渉力といった営業ツールからより実利的な収益面へと次第に移行しつつあるとみられる。


注1:
本調査は、海外ビジネスに関心の高いジェトロのサービス利用日本企業9,981社を対象に、2017年11月から2018年1月にかけて実施。3,195社から回答を得た(有効回答率32.0%、回答企業の81.1%が中小企業)。プレスリリース・概要報告書も参考にされたい。なお、過去の調査の報告書もダウンロード可能である。
注2:
幹部には代表取締役、取締役(社外取締役を含む)、事務系(営業など)の部課長級、技術系(生産など)の部課長級、研究開発職を含む。
注3:
「2017年版世界貿易投資報告」(ジェトロ)によると、所在地別セグメント情報を開示している43社の決算資料から算出した輸送機械メーカーの海外売上高比率(2016年度)は61.7%にのぼり、機械・電気製品(42.0%)、素材・同加工品(43.6%)を大きく上回る。
執筆者紹介
ジェトロ海外調査部国際経済課長
米山 洋(よねやま ひろし)
1997年、ジェトロ入構。ジェトロ北海道、ジェトロ・マニラ事務所(調査担当)、海外調査部国際経済課 課長代理などを経て、2017年4月より現職。共著『南進する中国とASEANへの影響』、『ASEAN経済共同体』、『FTAガイドブック2014』、『分業するアジア』(ジェトロ)など。

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